2012年08月

2012年08月22日

ロンドン五輪バドミントン競技の試合方法

ロンドン五輪のバドミントンの女子ダブルスで4組が失格となった。グループリーグの最終戦で決勝トーナメントの対戦相手を調整するためわざと負けようとして無気力試合を行ったからだ。

この問題について、システム上の問題として考えて見る。


 五輪のバドミントン競技は、男女シングルス・男女ダブルス・混合ダブルスの5種目が行われる。前回までトーナメント方式で行われていたが、今回はグループリーグ方式を採用した。参加16組を4組ずつ4つのグループに分けリーグ戦を行い、各グル―プの上位2組ずつの計8組が決勝トーナメントに進出する。グループリーグの1位は、決勝トーナメントの1回戦で他のグループの2位と戦う。このやり方はサッカーやフットサルでよく行われるのと同じやり方だ。


 以前新潟県のフットサル大会でみたように、一つのグループリーグから複数のチームが決勝トーナメントに進め、グループリーグの成績により決勝トーナメントで対戦する相手が自動的に決定する方法では、負けた方が有利と考えるケースが発生するのは避けられない。(平成22・3・15「グループリーグと決勝トーナメント」参照)


 通常は1位になれば決勝トーナメントの1回戦で他のグループの2位と戦えるので有利のはずであるが、番狂わせが起こったりして2位の方が強敵となる場合があり、相性の問題もある。


 新潟県のフットサル大会の例だと、決勝トーナメントの1回戦ではなく2回戦(準決勝)で当たる可能性の高いチームとの対決を避けようとしたようだ。


 それ以外に、2位になれば同じ場所で次の試合を戦うことができるのに1位になれば遠隔地に移動しなければならなかったり、2位になれば次の試合まで間隔が空くのに1位になるとすぐ戦わなければならないケースもある。


 試合の開催場所や日程については2位が有利となるケースは避けられると思うが、集客の期待できる開催国の試合などを収容人員の多いスタジアムで行いたい等の理由により調整されないこともありうる。


 2位の方が1位より有利だと考えられる状況をまったく作らないようにするのは至難の業だ。


 以上の問題の多くは団体競技と共通であるが、バドミントンのような個人競技は、それに加えて1つの国から複数の組が出場していることによる問題もある。同じ国同士が決勝まで当たらないようにする、あるいは、逆に早くあたるようにする(そうすれば、1組は必ず勝ち進むことができる)といった思惑も発生する。団体球技はメンバーを落とすことが可能(メンバーを落としても出場した選手が全力でプレーすれば、非難されることはない)だが、個人競技は不可能だ。


 今回バドミントンでこのようなやり方を行うと聞いたとき、1試合だけで大会を去ることなく最低でも3試合行うことができるのでよい方法だと思ったが、最悪の結果になってしまったわけだ。

 

負けた方が有利となるケースが発生するのを避けるためには、①リーグ戦を行わずすべてトーナメントにする、②1つのグループリーグを勝ち抜けるのは1チームだけにする、③決勝トーナメントの対戦相手をリーグの成績で自動的に決定するのではなく改めて抽選により決定するといった方法が考えられる。

 
 しかし、三つのやり方とも別の問題がある。


  ①のトーナメントは、
1試合だけで大会を去らなければならないチームがあり、番狂わせやくじ運の悪さにより強豪チームが早い段階で敗退してしまうケースが多くなる。

 
  ②のグループリーグ勝ち抜けを1チームだけとするのは、1試合だけで大会を去るチームはなくなるが、番狂わせやくじ運の悪さにより強豪チームが早い段階で敗退してしまうケースが多くなるのは①と同様で、また、1位の可能性がなくなった段階で敗退が決まってしまうので消化試合が増える。

 
  ③の決勝トーナメントの対戦相手を抽選で決めるのは、
1位のチームを他の組の2位とぶつけるのは通常は1位の方が有利となるので公平なやり方で、一部の例外のために否定するのは疑問である。決勝トーナメントの1回戦で1位同士がぶつかることもあり、くじの運不運が発生してしまう。グループリーグは1位でも2位でもよくなり重要度の低い試合が増えることになる。1回戦で1位同士・2位同士の対決を避けるようにして抽選を行っても、どうしてもあたりたくない相手が2位になっていれば負けた方が有利と考えるチームが出ることは避けられない。

 

グループリーグで1位より2位の方が有利と考えるケースをなくすためには、ソフトボールで行っているページシステムを採用すればよいのではないだろうか。この方法ならグループリーグ1位の方が2位より有利となる。

 

グループリーグ1位の4組と2位の4組の計8組が参加し、以下の方法で決勝トーナメントを行う。

    グループの1位同士が戦う

    各グループの2位同士が戦い、敗者(2組)は敗退となる

    ①の敗者と②の勝者が戦い、敗者(2組)は敗退となる

    ①の勝者同士が戦う

    ③の勝者同士が戦い、敗者は敗退となる

    ④の敗者と⑤の勝者が戦い、敗者は銅メダルとなる

    ④の勝者と⑥の勝者が戦い、勝者が金メダル、敗者が銀メダルを獲得する

 

この方法だと、グループリーグ1位のメダル獲得の可能性は金21.9%・銀21.9%・銅18.7%・メダルなし37.5%となるのに対し、グループリーグ2位の方は金3.1%・銀3.1%・銅6.3%・メダルなし87.5%となり、1位と2位でメダル獲得の可能性は大きく異なる。


 ページシステムを採用すれば、グループリーグ1位より2位を狙う者はまずいないだろう。ただ、試合数が増えるので、日程上の問題が起こる可能性がある。

 

ページシステムを評価する人は少ないようであるが、グループリーグの結果が決勝トーナメントに反映する非常によい方法だと思う。

 



quiquiruko352 at 09:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0) スポーツ全般 

2012年08月08日

五輪に関する意見

五輪に関してよく聞かれる次のような意見について考える。

 

    各競技ごとに世界選手権(ワールドカップ等他の名称で行われている大会を含む)が行われていれば、五輪はいらない。

    サッカーやテニスなど他に大きな大会が行われている競技は、五輪に必要ない。

 

(1)もし五輪がなくなったら

五輪は20以上の競技が行われる。その中にはメジャーな競技もあればマイナーな競技もある。もし五輪のようなたくさんの競技がいっしょに行われる大会がなくなり、各競技ごとに単独で行う世界選手権だけになったら、マイナー競技は今以上に無視されるようになるだろう。

 

スポーツの人気は非常に偏っている。人気のない競技は、テレビ放送されることもスポーツニュースで取り上げられることも少ない。プロ化が可能なのは人気がある競技だけだが、日本でプロ化したのは野球・サッカー・相撲・ボクシング・ゴルフ等限られた競技だけだ。競技の種類は異なっているが、プロ化できるのが一部の競技だけなのはどの国でも同様だ。

 

五輪の権威は高い。五輪で行われるというだけでマイナー競技も大きく取り扱われる。五輪のとき以外ほとんど無視される競技は多い。スポーツ文化の面からみれば、たくさんの競技が行われ、プレーするのも見るのも選択肢が多いほうがよい。たくさんの競技が行われていれば、自分にあった競技を見つけられる可能性が高くなる。

 

特に女子は、五輪がなくなると衰退する競技が多いだろう。五輪は男女平等が基本になっている。男子しか行われていなかった競技は女子も行われるようになり、競技内の種目数も女子の方が少なかったのが男女同数に近付いている。それは男女平等の思想によって行われていることだ。

 

しかし、五輪以外の場所では市場原理に貫かれている。各競技は人気の有無により厳しい競争にさらされている。人気のある競技は繁栄し人気のない競技は衰退している。それは同一競技内の男女間であっても同様だ。男子は繁栄しプロ化に成功し多額の報酬を得ている選手がいるのに、女子は人気がなくプロ化できずアマチュアに留まっている競技もある。女子でプロ化に成功した競技は男子に比べて格段に少ない。これは日本だけではなく世界的にそうだ。

 

朝日新聞の社説(24.7.15)「メダル至上主義でなく」に次のような文章があった。「金メダル至上主義で心配なのは、ゆがんだ選択と集中が進むことだ。世界で競技人口が少ない種目の方が頂点に近づけるという発想で、日本国内でも愛好者が少ない競技に国費を注ぎ込む。そのために広く人気があるのにメダルに縁遠い競技が打ち切られるとしたら、本末転倒だ」

 

この意見は妥当であるが、重要なのはバランスだ。メダルが取れるからと言ってマイナー競技がメジャー競技以上の扱いを受けるのも賛成できないが、メジャーな競技に人気が過度に集中しマイナーな競技が切り捨てられるのも賛成できない。

 

多くの競技は世界選手権より五輪のほうが注目度が高い。五輪がなくなったらその分世界選手権が繁栄するようになるのはごく一部で、多くの競技が衰退するだろう。特に女子は大半の競技がそうなるだろう。そして、限られた一部の競技に人気が集中するようになるだろう。

 

(2)サッカーやテニスなどの人気競技が五輪から外れたら

五輪が存続するにしても、サッカーやテニスなどの人気競技を五輪から外したらどうなるだろうか。

 

そうなると、五輪に残るのはマイナー競技だけになる。五輪自体が衰退する可能性が高い。メジャー競技があるから五輪の権威が高められ、五輪に加わっているマイナー競技がその恩恵を受けることができるのではないか。

 

かつて五輪は開催地に立候補する都市が減少し危機を迎えていたが、プロ化と商業主義化によってよみがえった。プロ選手を容認してメジャー競技の一流選手が参加することにより繁栄を取り戻したことを考えると、五輪にメジャー競技が必要だ。

 

五輪の弊害があることは間違いないが、五輪があることによるプラス面も考慮すべきだ。



quiquiruko352 at 08:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0) スポーツ全般