●前田考歩・後藤洋平共著『予定通り進まないプロジェクトの進め方』を一日半で読了。プロジェクトマネジメントの実用的な指南書としてこれ以上のものは望めそうもない。(というか今まで本屋で立ち読みしたそれっぽい本はすべて何が書いてあるかわからなくて1分で挫折した。)状況は変化するから獲得目標も勝利条件も状況につれて変化する。だから変化をきちんと言葉で記述して定期的に見直し、次の局面に対する打ち手を柔軟に変える。このために「プロジェクト譜」略して「プ譜」というものが提唱されている。将棋の棋譜のように、一定のルールに則ってプロジェクトを記録することができる。採譜された過去のプロジェクトを参照してシミュレーションすることで経験値を積むこともできる。

●たとえば私は寺の住職をしている。この寺は私が死んだら即座に廃寺の危機に直面する。しかし少ないとはいえ檀家の方がいるし、できれば後世に残したい。そこで寺の後継者をみつけることが最終ゴールの、やや息の長いプロジェクトがスタートする。いきなりゴールに到達することはできないので、そのための「中間目的」をいくつか設定する。この場合、布教伝道に励んで地域に篤信の方を増やすというのが王道かもしれない。経済的基盤を確立するのももちろんこの中間目的たりうる。しかしこの二つを達成するのは甘くない。そこで軌道修正して、食うに困っていない富裕層のリタイア組に入寺してもらうという中間目的を設定し、かれらへ向けて仏教思想の魅力やこの中途半端な田舎に暮らすことの意義を発信するのが最終ゴールのための現実的な施策だと判断するに至った、とすれば、軌道修正前と修正後ではやることが全然違う。

●しかしまあ、この例は登場人物が少なすぎる(ほぼ一人)のでプロジェクトでは関係者間の合意形成と状況認識・目的の共有がキモだという重要なポイントが言い尽くせていない。ただこういうものもプロジェクトだという実例にはなっている。新規事業の立ち上げやシステム開発だけがプロジェクトではない。現在の状態と望んでいる状態が一致していないなら、それを一致させるためのアクションの総体がプロジェクトだ。歴史そのものがプロジェクトだし、ルーティンワークでない仕事のすべてはプロジェクトだ。

●ちなみに著者(の一人?)は押井塾出身だそうだ。

(金川信亮)