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邦画を中心に心理・精神の観点、社会的背景などから心情を読み解く主観的分析レビューです

movie: そして父になる

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どうにもならないことというのは存在する
何に替えても替えられないものは経過した時間なんだなと

経過によって形成される愛情
経過によって告白される罪
経過によって培われる絆

物語の中で問題提起されることが多すぎて
時折広角に映される景色のシーンが来る度振り返る

主人公の持つ過去の経験と記憶
物語が進むにつれて解されていく感情がとても伝わった
「そして父になる」という文字通りのラストシーン

とても印象深い台詞をひとつだけ
「この人工的な雑木林は蝉が自然に孵化するまでに15年かかった」
「長いですね」
「長いですか?」
林を比喩として人工的に自然なものが完成されるまでの時間を扱う台詞

家族との在り方だけでなく経過する時間の重さを非常に感じた作品でした
劇場公開中です、ぜひ映画館で

 

movie: ふがいない僕は空を見た

ふがいない僕は空を見た [DVD]
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相も変わらずタナダユキ監督作品は現実感を与えるのが上手い
虚構の中で流れる軸とは別に滑りこませる様に現実問題が漂う
根深く厳しい現実をそこに紛れ込ませる

全員が弱さを持っていて痛々しい
生き辛いを超えてどうしようもない
不甲斐なさすぎる現状を打破する希望もない


不幸がじわじわと表現されて行く中で
”自分の人生を自分で選んでいるか”と投げかける

情事に溺れる主婦も高校生も
友人を陥れるクラスメイトも
育児放棄した母親も父親も
幼児愛好者の先輩も
嫁いびりの姑も
どうにもならないようなひとも生きてる

他人が抱えている問題が大きければ安堵を生む
心理的作用として現状を当人が乗り越えるための希望
それ程長嘆息が漏れそうな作品であった


 

movie: つやのよる

つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語 [DVD]
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家族を捨て愛する女と再婚するが彼女の心ここにあらず 
 「ようやくゆっくりできた」と安堵する先には亡骸

当の本人、艶は既婚でありながらも
欲情を繰り返し感情の赴くままに生きる
 
再婚を繰り返し
インターネットで男を漁り
近所の若い男をストーキングし
語られる悪態が物語る人物像

しかし病床に横たわる姿のみ描写され
その姿は儚げで乳房についた歯型がどうしようもなく
狂おしい愛情の印となって彼女の全てを語っていた

愛するという欲求と欲情の関係性が現実離れしすぎている
人間関係は全てが複雑に絡まり合っている

旦那を浮気の末自殺で亡くした妻 
旦那と従兄弟と浮気相手との内情に発狂寸前の正妻
破錠した両親の愛情を理解すべく哲学専攻の教授と浮気する娘 
元恋人にけしかけられるまで自分に子供がいることすら知らなかった若い男
自社の社長と浮気しながら顧客とも関係を持つ女性社員

書ききれないほど背負い込んだ登場人物たち
ここには正しき愛情の姿はない
それぞれの想いがすべて一方通行で苦しい

逆にそこまでも遂げられない想いをそれぞれ抱えながら
相手を想い続ける潔さというものを感じた

自己犠牲が過ぎる無様で情けない
だがひとつ、裏切らないことは
それぞれがたった一人を愛しているという事実に過ぎない事
 

movie: 箱入り息子の恋

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恋を知らないコンプレックスだらけの彼は
盲目の彼女と初めての恋に落ちる

「知らない人に”気持ち悪い”と言われたり
学歴や務めている会社でひとを判断するようなひとは
目に見える事でしかひとを判断していない
だけど彼女は違う」 

臆病で人との関わりを持たなかった彼が
彼女の父親と向き合うシーンの台詞である
障害者として娘を扱う父親に一喝する勇ましい姿

繊細な感情表現が堪え切れず言葉にならない
主人公の不器用な感情が露頭して苦悩する様

そして物語は初の性衝動に駆られ意外過ぎる展開へ 

冷静に俯瞰して観ると、晩婚化、障害者と健常者の在り方、
子離れできない親の難しさなど問題提起するシーンを多々盛り込んでいる

そして主人公の名前、天雫健太郎の名に合わせてか
雨の演出が多く起用されている
雨に纏わるアイテムも重要なキーワードになっている
散りばめられた細かな演出を集める如く

愛を伝えること、大切な人がいるということ
信じるべきこと、懸命になるということ
不器用で純粋ってかっこいい

冷たい雨の降る梅雨時だからこそ温かな心に触れたいそんな映画でした
ただ今絶賛公開中

movie: I'M FLASH!

I'M FLASH! [DVD]
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豊田利晃監督・脚本作品
立て続けに豊田監督作品を無意識に取り上げている
監督の作品には暗示的に疑問を投げかける作品が多い気がする
書き留めたいほどの衝動がいつも残る、してやられたりだ

人生は驚くほど短い
それは一瞬の輝きほど儚い

個人の自由を謳歌していても規範の中で生かされていること
死が無に値することを既に悟っている
そして刹那的な人生を振り返る瞬間が死であることを

比較的少ない台詞
昼間の南国の自然風景、夜景の交差
教団関係者の白い衣装

死を恐れることを否定し輪廻される救済論を説く教団

下品な暴言を吐き続ける横暴な姉
状況回避を含め性を放棄する兄
所属欲求、信仰欲求を利用する母
銃弾に倒れ髑髏杯となって鎮座する父

自らの歪んだ家族像を背景に信者である妹を自殺で失った姉との関わりを持って
救済論の否定が教祖役の心情で描かれる

劇中ではビジネスとしての宗教論も展開される
「人生の鍵っていうのは自分の中にあるんだよ
誰もその鍵を使おうとしないんだよ
誰かがその鍵を開けて光が差し込んでくれるのを望んでいる
だから宗教ってやつは儲かる」
「みんな何かに縋りたい 縋がれる場所があるっていることは決して悪いことじゃない
人には集まりたいっていう欲望がある それがお祭りであれ、宴会であれ、宗教であれ
人を助けるというのはそういうこと」


とても印象深い台詞があった
「死は人を情報化し、生きている者が都合よく死者人生を解釈する、嘘を交えて」

自己の死と他者の死
様々な死を軽視する場面、否定する場面と台詞
死との向き合いを感動的な範疇に留めず
現実離れした虚構の中で本質に気づかせようとする


ーー

いつも豊田監督の作品は集大成を見せる場面が設定されており
起承転結がわかりやすい、選曲と音響効果の強弱がはっきりしている
重いテーマを投げかける割に清々しいエンディングを見せる
そういったところも豊田監督作品の個性だと思う

「いつだって希望という幻は滅びることはない 光の様に一瞬の閃光のように」
 

movie: Monsters Club

モンスターズクラブ [DVD]
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カリフォルニア大学の数学の教鞭をとる助教授だったが世俗を捨て、
米国の爆弾魔ユナボマーと呼ばれるようになった実話にインスパイアされた作品

産業革命が絶対悪だと自然への回帰を謳った様にその思想が反映された物語だった
豊田利晃監督が現日本に置いて類似する点を見出した為引用したとのこと

登場人物は少なく、主役の心情背景に焦点を当てた展開
山小屋での暗闇という環境が自己との対話を促す
幻想の様に劣等感を抱きながら死別した兄弟の亡霊が目下を彷徨う
犯罪に置換し声明とした使命とは何か

過激な表現ではあるが死と同等の重きに
現代社会システムの責務があるのではないかと
錯覚を覚えるような問題が提起された作品だった

最後に引用される、宮沢賢治「告別」を聞きながら
必然的に向き合わざる得ない箇所に着地させられる引力があった

 

movie: 桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)
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全員が主役の様に思春期の複雑な心情がとても豊かに表現されていた
詳細なカット割り、時間軸の移動、他者目線などの誘導、
多種多様性により誰もが感じる感情移入を作り上げていた

学校生活のヒエラルキーに置いて存在すべき役柄が想像通りに配置されていた 

観てきた映画の中では物語に置いて重要性のない役柄の心情には注力されない事が多い
この物語はその「学校」と「思春期」の多様性だけでなく
其々を尊重するという意味合いが含まれているように感じた
誰しもが主役であり、悩みを抱えており、とても難しい
デリケートな感情が繊細に表現されていた

乱闘シーンで確立したキャラクター性の際立った感情がまさに乱闘状態で圧巻だった

1度観了した後すぐに見直すほど見応えある映画は初めてでした

 

movie: 家族、貸します

家族、貸します~ファミリー・コンプレックス~ [DVD]
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パッケージのデザインがどうにもコメディを連想させていたが
実力派俳優が出揃うヒューマンドラマだった

その名の通り、家族や友人、その他をレンタルできるサービスの話
レンタル家族の必要性を解き、家族という関係性について再思考する

印象的なシーンがあった、離婚した父親に会いたがる子供を
レンタルした父親に会わせ、もう二度と父親に会いたがらないようにする下り
新しい家族の子供を演じていた子役の台詞
「しょうがないよ、これは人間を諦めるレッスンなんだから」

人間関係に諦めるという真実を織り交ぜその悟りを子役に演じさせる
その役どころの出来の良さに違和感を覚えた

結局のところ、レンタル家族の様に中核となる関係性の修復、接触には
こういった他者の介入が必要になってくると考えられる

簡単に「諦める」ことを学び、向き合うことから逃れる
そしてその関係性は向きあう労力と比例しないほど
現代において重要視すべき関係性ではないことなのではないかと感じた

何を持って和解とすべきかは価値観の問題だが
いくつかの家族を扱うあまり劇中で目立って
家庭不和の原因が根本的に解決がなされていないことが目立った
そして一方的な感情において亀裂が生じていることだった


本編最後の台詞は以下のようなものだった
「家族はあるものではなくつくるものですから」 

果たしてどう言った意味を含む「つくる」ものであるか
新しい家族をつくるのか、今まである家族をつくり直すのか
いずれにせよ、自然に成り立つものではないという示唆であるのではなかろうか

movie: 空中庭園

空中庭園 通常版 [DVD]
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家族ってなんだろう
理想と思い込みと現実が描く錯乱した家族像

秘密を持たないルールは秘密を作り
思い出は記憶の中で作り替えられていく

浅はかな表面だけの家族像は遊戯に近く誰もがそれを演じている
美しく備えられたそれだけが繋がりを築く物だとするならばそれは虚構であると

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