■充実した“生” 身近で実感

 介護保険の在宅サービスの利用に必要なケアプラン(居宅サービス計画)を、自分で立てる試みが広がりつつある。「不要なサービスを減らすことができた」「精神的に元気になれた」「人生の最後まで自分の予定は自分で立てたい」-。高い専門性が求められるケアマネジャーと異なり、自分のプランなら気軽につくれる。「負担感は意外に軽い」という声もある。(牛田久美)

 東京都町田市の元自治体職員、中村達雄さん(61)は父親=当時(88)のケアプランを立てた。

 父親は認知症の治療を受けていた。症状がだんだん進み、なじみの理髪店から帰宅できなくなったりしたため、介護保険の訪問介護を頼もうとした。ところが、多忙なケアマネジャーと半年近くも連絡が取れず、「自分で頼む方が早い」と感じたのが自己作成のきっかけだった。

 両親が暮らす市の介護保険課に相談し、書類をもらった。サービスを提供してくれる事業所名などを記入し、前月末までに提出する。他人の来宅を嫌がる母親も、息子の中村さんの話なら聞いてくれた。

 「父自身はプランどころか、保険の仕組みも分からなかったと思う。それでも父に寄り添って一緒に過ごした最後の日々は、幼いころに親と持っていた親密な関係を取り戻すことができたひと時でした」

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 3月末、都内で開かれた『ケアプランを自分でたてるということ』(筒井書房)の出版記念フォーラムでは、自己作成の体験者がそれぞれの“得たもの”を口々に語った。

 50歳のときに脳梗塞(こうそく)で倒れた主婦、高木洋子さん(61)=多摩市=は「何もできない人間になってしまったと落ち込んだが、自分でプランを立て始めてどんどん元気になれた。やりたいことを実現するために何が必要なのかプロセスを考えるうち、リハビリの目的なども分かり、前向きに取り組めるようになった」

 府中市の主婦、島村八重子さん(55)は義母が90歳で亡くなるまで7年間作成した。

 義母が自分なりの暮らしの中で、何ができて、何を不安と感じているのかを一緒に考えた。互いに干渉しない二世帯住宅で掃除や調理はヘルパーに助けてもらい、味付けは義母がする。散歩は歩行器をレンタル。人との交流は、介護保険のサービスではなく玄関にベンチを置いた。義母は40年間暮らした地で井戸端会議を楽しんでいたという。

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 「事業所と直接やりとりができて、もどかしさがなくなった」「ショートステイの予約がスムーズ」「急なデイ利用も即応できる」などさまざまな長所がある自己作成。ただ、自己作成できること自体、あまり知られていない。島村さんは「いったん知った人の関心は非常に高い」と語り、全国マイケアプラン・ネットワークを組織して体験者の情報と理念の共有を目指す。

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 ■老いを考える良い機会

 介護保険導入から満10年がたつ。最近は、サービスの利用に慣れた人たちが自己作成に切り替えるケースが多いという。事業所所属のケアマネジャーだとその事業所提供のサービスに限られるが、自己作成なら複数の事業所のサービスを組み合わせることもできる。

 今回、体験者へのインタビューで『ケアプランを自分でたてるということ』をまとめた著者、橋本典之さん(29)は「ぼくらの世代は『お年寄りに優しくしよう』という言葉に象徴されるように、老いを他者のものとして教わってきた。ケアプランを家族で考えることは、だれもが迎える老いを、他者ではなく自分に内在するものとして考える良い機会。友人と『自分でつくりたいね』と話している」という。

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 ■大事なのは内容

 ≪関西福祉大学大学院の小國英夫教授の話≫

 「自分で立てる『マイケアプラン』は単に手続きの方法論ではありません。大事なのはその内容です。手続きは『自己作成』でも、自分の希望や考え方が十分に反映されていなければマイケアプランではありません。反対に、ケアマネジャーたちに情報提供や手続きをしてもらった場合でも、自分の希望や考え方が十分に反映されていれば、立派なマイケアプランです。

 プランの作成とは、自分の暮らし方や生き方、家族や近隣の人々との関係やあり方をしっかり考え、介護保険サービスを含む各種の社会資源を自分たちの暮らしに取り入れること。つまり、介護のアウトソーシング(外部化)ではなく、全くその逆です。

 育児の本質が親子関係にあるのと同様に、介護の本質も人間関係にあります。介護はその意味で、決してヘルパーと利用者の関係に収斂(しゅうれん)できるようなものではありません。自分がどのように生きてきて、老いをどう迎えたいと考えるのか。自分でケアプランを考えるということは、自分が大切にしたいことは何かを考えて実践するうえで、非常に重要な方法の一つです」

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