仮に、大将棋と異なる「普通唱導集大将棋」なるものが存在したとする。
<普通唱導集大将棋(仮定図(1))>
この場合に、二中歴大将棋→(仮)普通唱導集大将棋→大将棋(初期改良)→中将棋→大将棋(後期改良)の改良過程を、以下のように説明できる。
(1)二中歴大将棋→(仮)普通唱導集大将棋
13間盤を15間盤に拡大した上で、新規に駒を追加・作成することにより、市松模様に駒を配置する改良がなされた。
(2)(仮)普通唱導集大将棋→大将棋(初期改良)
市松模様の配置から、さらに、自陣2列目、中央間に既存の駒を移動し、又は、新規の駒を追加・作成することにより、表面の充実を図った。なお、裏面については、酔象の駒を王将の前に配置するための言い訳として、酔象、鳳凰、獅子のみ、特殊な「成り」を設定した。(水無瀬神宮蔵「象戯図」)
(3)大将棋(初期改良)→中将棋
大将棋(15間盤)と小将棋(9間盤)の中間種を作成するという意図の下、偶数盤(12間盤)の中将棋が作られた。
大将棋と比較して、盤のサイズが小さくなったことから、一見、簡略版にもみえるが、偶数盤の採用、裏面の「成り」の精緻な体系の構築・新規駒の作成等、作者の相当な野心が伺え、単なる「大将棋の簡略版」の作成を目指していないのは、明らかである。
(4)中将棋→大将棋(後期改良)
中将棋にて構築された「成り」の体系が、大将棋にフィード・バックされたものである。(象棋六種之図式)
(つづく)