2005年09月09日

 皆さんは、「新保守」という言葉を御存知だろうか?
 新保守というのは、かつて中曽根康弘元衆議院議員が内閣総理大臣に就任している前後あたりから聞かれる言葉である。当時は、国際化と都市住民の増大という問題から、旧来の保守政治とは一線を画した国際主義、都市指向を目指した保守政治をイメージしてつけられた。

 実際には、アメリカが発祥の言葉である。現在でもアメリカは共和党と民主党の2大政党であるが、当時民主党側の政策に行き詰まりを感じた当時の民主党関係者が、より共和党に近い政策をとりながら、とともに新しい政策によって現状の共和党との差別化をはかり、とともに共和党にも提言していった政策であった。

 アメリカでは、国際主義を主張する一方で、当時冷戦のほころびが見え始めている現状から、より強い大国アメリカを示す為にあらゆる手法を用いて権威を示す、いわゆる「強いアメリカ」の誇示である。当事、ベトナム戦争やイラン革命によってアメリカは指導力の失墜の危機に陥っていたことから、その指導力回復に必死だった側面もある。「ロンヤス」の関係で有名になった、中曽根総理のパートナー的役割を果たした当時のレーガン大統領もまさに「新保守(ネオ・コンサーバティブ、ネオコン)」の信奉者であった。

 後に、ソ連を「悪の帝国」と評して強い態度をとったレーガン大統領であったが、現在の北朝鮮やイランに関して強い態度を示しているブッシュ大統領はこの彼の政治手法に何らかの強い憧れを持ったのであろうか?

 そういえば、現在、現総理大臣の小泉氏と現ブッシュ大統領は関係が良好である。ブッシュ大統領のアフガンやイラクへの武力行使を強く支持したことも一つの要因である。しかし、一方で、あまりに強いアメリカが逆にテロのターゲットにされているようにも思える。イラクやイギリス等のテロもアメリカ支持勢力への挑戦ともとれる。

 かつてのクリントン政権が旧ユーゴ紛争に対して武力行使を行うには消極的であったし、また、対日関係より対中関係を重視していたのとは対照的であるが、彼も後にネオコンの意見を参考にしたという。

 一方で、かつての湾岸戦争において援助金のみを拠出したために、国際的な信用を失墜したと評した当時海部内閣時の自民党幹事長であった小沢一郎氏は、これを機に自衛隊の国際協力に関して検討することになった。後に自民党を離党後発表した「日本改造計画」にもそれが記載されている。しかし、現状のイラク紛争の派遣状況に関しては強い危惧を示している。

 また、かつて日本新党に所属した多くの議員も「新保守」的な考えを有している。その代表例は、前環境大臣で現在小林興起氏の「刺客」として選挙戦を争っている小池百合子氏である。また、細川政権後に渡辺美智雄氏を総理大臣にするため同調し自民党を離党し、新進党結成後の衆議院選挙でなぜか新進党を離党、自民党に復党した石破茂前官房長長官も「新保守」の信奉者である。

 かつて政治改革解散時以降に自民党を離党して新党に移籍もしくはその新党に当選した新人議員の多くは「新保守」的な政権に強い期待を示していたが、自社さ連立による野党転落の挫折によって、一部の議員は自民党に復入党することで「新保守」的な政治への移行を期待していた側面もある(皮肉なことに、渡辺氏総理?の時点で自民党を離党した多くの議員は自民党に戻っていった。戻らずに別の活躍をした元議員もいる。前三重県知事北川正恭氏である)。その議員の多くは新進党の小沢一郎氏への批判や公明党との融合に対する危惧であった。しかし、現状の小泉政権で彼等は公明党と選挙協力を行いながら、当時の小沢氏以上の権限で「刺客」政治を行っていることに関して彼等はどう言い訳するのだろうか?

 これらを考えると、最初は日米における「新保守」は一見似ているように思えるが、どうも違うのではないか?と思っていたが、そうではないように最近では感じるようになった。

 一つは「強い政治」への更なる移行でありこれは場合によっては暴走とも評される点である。イラクやアフガンへの派兵によって「反米」政府を倒し、そこに進駐して民主政治への移行を見定めた後に撤退させる(若干は残すものの)行動である。アフガンの問題はともかくして、イラクの問題に関しては、国益や利権の面から独仏露と対立した面があり、米英においても派兵に関して疑問な声が多い。

 二つ目は「貧富の格差とそれに対する対応」である。皮肉なことに日米において富裕層の繁栄の一方、中間層の没落の現状が平行して進行している。 

 三つ目は政治手法である。時には「軍事」に、時には「パフォーマンス」でかわすブッシュ大統領の手法と「郵政」問題や様々な「パフォーマンス」や「コメント」で乗り切る小泉首相はどことなく似ている。

 これらを見る限り、日米の新保守政権が似ているような印象を受けるが、そうでない面もある。

 かつての「ロンヤス」の時には一定のアジア外交も行ったり、アメリカに対してもある程度の意見を示していた面もあった。

 しかし、現在、冷戦構造が無くなって十数年ばかしになるが、そのような中で「唯一大国」として強い姿勢を示すアメリカに対しての関係は良好のようにも思えるが、常任理事国入り問題において日米で若干の温度差があるようにも思える。また、東アジア外交においても「親北政策」をとる韓国とは竹島問題で、中国とは領土問題や海域問題の他に国内問題をそらした感のある「反日デモ」によって、また靖国参拝問題に関する3者の温度差が原因で緊張関係にある。

 最近のこの「緊張関係」に関しては「どうも中韓にもかなり原因があるのではないか」という声が強い。私も同意見だ。しかし、だからといって原則を曲げてまでも自衛隊を派遣し、それとともにアメリカに外交の軸足を置き過ぎることが果たしてバランスある外交と言えるのか?という思いもある。

 最近では、韓国でも「親北」に対して激しい疑問を持つ若者が増え、「反親北」デモを起こしているが、鎮圧されている。一方、親北的なデモに関してはあまり強い態度を示していないのが今の韓国の現状とも言える。また、中国に関しては言論の自由が制約されている為、どうしても「反日」へのシフトをせざるを得ない面もあるが、一方で、あまり「反日」に進み過ぎて折角の自国の繁栄が台なしになる危険性を孕んでいることも容易に想像出来る。中国の多くの借金は日本からの借入金であり、また、中国には多くの日本企業が進出している。これらの撤退は中国そのものが経済的破たんを招くものであることは容易に想像出来よう。

 確かに「敵失」的な要因も有するアジア外交ではあるが、とは別に「強さ」故の「脆さ」を持つ「新保守」的な政治や外交の限界のようなものを感じつつある瞬間かもしれない。

(17:03)

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