論題は「倉橋惣三の玩具観が問いかけるもの~子どもの遊びと生活の関係性を中心に~」です。戦前・戦後に活躍した幼児教育研究者・倉橋惣三の玩具関連著作を検討しつつ、玩具福祉研究の現状と課題、展望を試論しました。
個人的なことになりますが、2008年度に1年間の育児休暇をもらい、復職した2009年度は所属学科の設置申請書を作成する必要性から、改めて保育史や幼児教育史の勉強をしておりました。その成果は、①大正期における託児所の「副業」(家庭改良と隣保改善)の実態解明(『龍谷大學論集』第476号、2010年、pp.64-88)、②倉橋惣三の雑誌『慈善』および『社會事業』掲載論考と児童保護論との関連性分析(『龍谷大學論集』第478号、2011年、pp.81-109)、③生江孝之の保育事業論の検討(日本保育学会編『保育学研究』第49巻第2号、2011年、pp.6-18)、④神戸における生江孝之の保育事業の検討(日本地域福祉学会編『日本の地域福祉』第25巻、近刊)です。
これらの研究途上で、おもちゃプロジェクトが始動した関係上、倉橋惣三の玩具論も少し読み進めておりました。なかでも以下の一節は鮮烈でした。
「遊びあつての玩具である。極端にいへば、遊びの中へ取り入れた時に玩具なので、遊びの中へ取り入れられなければ玩具ではない。つまり、玩具とは遊びから生まれるものである。そこで玩具のことを考へる前に、子どもの遊びといふことが、先づ充分考へられなければならない」(倉橋惣三『玩具教育篇』雄山閣、1935年=岡田正章監修『大正・昭和保育文献集 第8巻』日本らいぶらり、1978年、p.185より引用)
玩具福祉学会には貴重な諸研究が蓄積されていますが、玩具ありきの研究や議論が多く、違和感を感じており、この度それを整理し、まとめました。また、倉橋の玩具観と、近年における子どもの貧困論とを重ね合わせ、社会的養護の各種施設における子どもの遊びや玩具の実態解明など研究課題を整理しています。個人的には、社会福祉学や保育学の諸研究がカバーしきれていない隙間にある重要な問題であると考えています。今後も細々とではありますが、研究を継続したいと思います。