2007年09月16日

『迎春閣之風波』

THE FATE OF LEE KHAN
『迎春閣之風波』DVD

キン・フー(King Hu) のプロフィール - allcinema

「キン・フー武侠電影作法」:宇田川 幸洋、山田 宏一 (著)

監督:キン・フー

脚本:キン・フー 、ワン・チョン

出演:リー・リーホア 、アンジェラ・マオ 、シュー・フォン 、パイ・イン 、ロイ・チャオ 、ハン・インチェ

1973年/香港/106分

おはなし Yahoo!映画

元朝末期の1366年。圧政を強いる朝廷に対し、朱元璋をリーダーとする抵抗運動が広がりつつあった。だが朝廷に仕える河南省の権力者リーは、朱一派内の裏切者から抵抗運動の機密文書を手に入れる事になっていた。これが朝廷に渡れば朱元璋たちの目論見は水泡と帰す。文書の受渡し場所にほど近い宿“迎春閣”にはワン姐をはじめ、文書奪還を狙う勇士たちが集う。やがてリーと妹は“迎春閣”に到着。かくして文書をめぐって、リー一行とワン姐たちの戦いが始まるのだった……。

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キン・フーの『迎春閣之風波』がDVD化されるという情報はかなり前から入手していたので
これは買うしかないとAmazonさんに予約しておいたら律儀に発売日の8/9に送られてきました。
便利な時代になったものですね〜。『迎春閣之風波』は以前、ビデオで見たことがあるのですが
かなり前ということもあり細かいことはあまり覚えてないです。

それで見直してみたら、傑作『侠女』や『忠烈図』には及ばないもののそれなりにキン・フー
らしさもありなかなか面白い!
ラストの岩山でのアクションシーンを除けば80%近く迎春閣という宿屋という密室で諜報戦が
サスペンスフルに繰り広げられるのです。
ラストの岩山でのシーンは本当は作る予定にはなかったみたいですが東南アジアの配給業者からの
要請に追加されたそうです。そのような要請がなければほとんどが密室で繰り広げられる映画に
なっていたでしょう。私はその方が面白くなったと思います。ラストの岩屋までのシーンはあまり
面白いとは思わなかったからです。

ともかくその迎春閣という宿屋でのシーンは素晴らしい。特に空間の使い方が抜群だと思う。
奥行きだけでなく、1階と2階という上下と左右 この立体的な空間の処理を緻密にそして大胆に
できる人は世界でもそんなにはいないと思うし、成功していると思う。
静と動、アグレッシブさと落ち着き払った展開。それ故にラストの岩山でのシーンを追加したこと
が残念に思ってしまう。

『侠女』や『忠烈図』と比べると佳作という感じでなのだろう。それには反対しようとは思わない。
だけど所々にキン・フーらしさを散りばめることができるというのは彼の才能以外のなにものでも
ないでしょう。

この映画、1973年にゴールデン・ハーベスト社で製作されている。
同じゴールデン・ハーベスト社で映画を製作していたのがブルース・リーだ。
『ドラゴン危機一発』、『ドラゴン怒りの鉄拳』が1971年、そして73年に『ブルース・リー/死亡遊戯』
を中断して製作した「燃えよドラゴン」公開直前に謎の死を遂げてしまう。
ブルース・リーはキン・フーを尊敬していたと何かで聞いたことがある。記憶が間違っているかもしれ
ないが同時期にキン・フーは映画を作っていたことになるのだが、キン・フーの作品がブルース・リー
に影響を受けたような痕跡はあまり見られない。

キン・フーは何があっても我が道を行ったのである。
アクションにおいて決定的に違うところがある。それを極端に言ってしまうとキン・フーのアクションは
京劇をベースに作られているのに対してブルース・リーはリアルファイトが中心に作られている。

キン・フーは絶対にリアルファイトのアクションシーンは撮れないだろうし、ブルース・リーは京劇を
ベースにしたアクションシーンは初期の作品には微かに感じないこともないのだが後期の作品では跡形
もなくなくなっている。
それは『侠女』での素晴らしく有名な竹林での激闘を見ればわかるだろう。
竹林での激闘の動画があるのでリンクを貼っておきます。ご覧になりたい方はこちらをどうぞ。


このシーンが京劇をベースにしているかどうかはわからないけど、このようなシーンはブルース・リーには
作ることはできないだろうというのはわかっていただけると思う。

キン・フーは台湾で『侠女』を作った後に香港で『迎春閣之風波』を撮るわけだけどキン・フーのテイスト
が変わることはない。『迎春閣之風波』には『侠女』での素晴らしく有名な竹林での激闘のような派手さ
はないけれど映画に漂う緊迫感やサスペンスフルなシーンがちゃんと用意されている。
彼は『侠女』を作り『迎春閣之風波』と撮り『忠烈図』を作り上げる。
『侠女』と『忠烈図』の間に『迎春閣之風波』という映画が存在しているのには意味があるのかもしれない。


rabiovsky at 18:07│Comments(0)TrackBack(0)香港の映画 

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