2009年05月24日

『愛のむきだし』

映画「愛のむきだし」公式サイト

園子温 - Wikipedia

監督・脚本・原案:園子温

出演:西島隆弘 、満島ひかり 、安藤サクラ 、渡部篤郎 、渡辺真起子

2008年/日本/237分

おはなし Yahoo!映画

敬虔(けいけん)なクリスチャンの家庭に育ったユウ(西島隆弘)は、ある出来事を境に神父の父(渡部篤郎)に懺悔を強要され始める。父の期待に応えようと、懺悔のために毎日罪作りに励むうちに罪作りはエスカレートし、いつしかユウは女性ばかり狙う盗撮魔となっていた。そんなある日、運命の女ヨーコ(満島ひかり)と出会い、生まれて初めて恋に落ちるが……。

*******

2008年のフィルメックスで「アニエスベー・アワード」を受賞し2009年のベルリン映画祭で、
「カリガリ賞」「国際批評家連盟賞」のふたつの賞を受賞して前評判もいいみたいだったので
かなり気になっていた『愛のむきだし』を初日の夜の回に見に行きました。
久々に映画館に行ったというか、『愛のむきだし』を見るために久々に映画館に行ったという
のが正しい所でしょう。

『愛のむきだし』の監督である園子温は個人的にちょっと懐かしさを感じる共に特別な人物である。
高校生の頃、私は東京でどんな映画が上映されているのか知る為に今では東京に行かない限り
買わないぴあをよく買って読んでいて、ぴあフィルムフェスティバルのページはくまなく読んでいた。
今ではほとんど忘れてしまったが、唯一、記憶に残っているのは園子温である。
ぴあフィルムフェスティバルで紹介される彼に独特の個性を感じつつもその映画自体は見ることが
出来ない為、想像は膨らむばかり。特に覚えているのは『自転車吐息』という映画で文章を読む
限りこの映画の全体像を把握することは高校生の私には困難であったが「ヘンな映画だな~」と
いう印象だけは記憶に残っている。

その後、『自転車吐息』を見たと思うのだがあれほど気になっていたくせに記憶にはあまり残っていない。
そして大学に入ってナム・ジュン・パイク嫌いの友人が『部屋 THE ROOM』を絶賛にしていて見に行った。
どちらかというとゆっくりとした白黒映画でなかなか面白い映画ではあったが絶賛をするほどでは
なかった記憶しかない。そこから私は園子温から遠ざかってしまった。『部屋 THE ROOM』のせいでは
なく他に好きな映画があったからだろうとは思うものの遠ざかっていた正確な原因は自分でも
よくわからない。

彼がどのような映画を撮っていたのはざっくりとは知っていたけど園子温監督作を鑑賞するのは
『愛のむきだし』が15年ぶりになってしまった。
本当は上映時間が4時間近くあるということで二の足を踏んでいたので
スルーする可能性もあったのだが、この映画だけは見なければという思いがなぜかあり これまた
久々の途中休憩の入る映画を見たわけです。
そして久々の園子温監督作との再会で私は10年以上彼の作品を見なかったことを後悔することになった
のだ。それは『愛のむきだし』という映画が4時間近い映画でありながらも飽きることなく見れ、
そして素晴らしくも面白い映画であったからだ。
いろんな素材やジャンルをぶち込んだまま物語に無理があったり、トーンが変わってもそんなことは
お構いなしに4時間近く緊張感を維持しながらもパワフルに疾走し続ける映画ってそうそうあるもの
ではないですよ。
そして私だけかもしれないけどなんか妙な懐かしさを感じました。古さを感じつつも新しさを感じるし、
新しさを感じつつも古さも感じてしまったり・・・。いい意味でふざけた映画ですよ。
またそれをエンターテイメントにしてしまうというのもスゴイ。

この映画の前に予告編で『ジャーマン+雨』の横浜聡子監督の新作『ウルトラミラクルラブストーリー』
があったんだけど、『愛のむきだし』は『ウルトラミラクル“エンターテイメント”ラブストーリー』
だな~と一人見ながら思っていました。「ヘンタイ」もいれてもいいでしょうね。
(どうでもいいんだけどね。『ウルトラミラクルラブストーリー』を期待しているので題名だけだしてみました。)
『愛のむきだし』においてエンターテイメントであるということは非常に重要なことだと思うのです。
どうしても深刻になりがちなテーマじゃないですか。そこら辺の感覚は園子温という映画監督の
センスでもあるんでしょう。宗教と家族とエロと愛をエンターテイメントで包み込んじゃうんだから
なかなかのものですよ。(それだけじゃないんだけどね)

俳優陣もまたスゴイというかイイ!
ユウ役の西島隆弘のキレのよさや、ヨーコ役の満島ひかりの迫力もいいし
(長セリフの場面の緊張感は素晴らしい)
渡部篤郎の優しいのか恐いのかわからない危うさも魅力的だし、いきなり登場してこれから起こるただ事
じゃなさを危うさと共に演じきったカオリ役の渡辺真起子さんも素晴らしい。

でも私が一番惹かれたのはコイケ役の安藤サクラです。
どちらかというと美人と言う女優さんではないのですが、出てくるたびにムカつくんだけど妙なエロティシズム
を感じていつの間にかムカつきながらも彼女の登場を待っている自分がいました。
脱力感と大胆さとそして残酷さの隙間に垣間見れるよくわからない魅力に妙に惹かれてしまうんです。
脱力感のあるあの動きはなんなんだろう・・・。謎な女優さんですな。

ひさびさの園子温監督作でしたが4時間近くの映画であっても飽きることなく見れ期待以上の仕上がりに
驚きと共に嬉しさというか満足感があってとても貴重な時間を過ごせました。
現時点では今年の邦画ではベスト1と言っても過言ではないです。この映画を上回る映画が出てくることに
期待しつつも それは無理なんじゃないかと思ったりしています。
いつものように言葉足らずが多い文章になりましたが、DVDなんか待たずに237分という上映時間を恐れずに
映画館で鑑賞することをオススメする1本でございます。
DVDで237分の方がキツイと思いますしね。


rabiovsky at 16:09│Comments(8)TrackBack(9)日本の映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 丞相   2009年05月24日 23:32
ついにご覧になりましたね。私も、現時点の日本映画では、
『愛のむきだし』がベストになっています。
この作品を超えそうなのは、ペ・ドゥナ主演の『空気人形』
しかなさそうですね。
とはいえ、これからの麻生久美子の主演作品も、なかなか
作品だと思いますよ。
とくに『ウルトラミラクルラブストーリー』の横浜聡子監督は、
『ジャーマン+雨』が強烈な自主映画だっただけに、
この劇場デビュー作が楽しみです。

そうして『愛のむきだし』なのですが、私も安藤サクラの演じる
コイケに惹かれてしまいました。
コイケがユウを新興宗教に引き込むのは、キム・ギドクの
『悪い男』に近いものがあるとすら思います。
園子温は「日本のキム・ギドク」とも言われているそうなのですが、
こういう風に、モテない男子/女子が、思いあまって無茶を
やらかす全盛期のキム・ギドク作品から、
そういう風に言われているのかもしれませんね。

それにしても、今年は「ヘンタイ映画」が流行なのでしょうか。
『空気人形』や『ウルトラミラクルラブストーリー』も、
かなりのヘンタイ映画のような気がします。
雑誌『ユリイカ』のイーストウッド特集でも、ハスミンが対談で、
イーストウッド御大のことを散々ヘンタイ呼ばわりしていましたよ。
2. Posted by りぃだぁ   2009年05月24日 23:49
お久し振りです。いつもブログでのコメントありがとうございます。りぃだぁです。こちらでは初めてコメントさせていただきます。
「愛のむきだし」面白かったですね。いろんな意味で興奮した映画でした。
確かにコイケ役の女優さん、妙に気になる存在感がありましたね。他の作品も観たくなります。
この映画、当初6時間近くあったものを編集して4時間弱にしたらしいのですが、DVDでもし編集する前の6時間バージョンが出ようものならこれは購入せねば!と思わせてくれます。もう1度「愛のむきだし」に浸りたい・・・。
3. Posted by rabiovsky   2009年05月25日 23:13
>>丞相さん

見てしまいましたよ〜。この映画は好評みたいだったから気には
なっていたんだけど、なにせ上映時間が4時間弱ですから二の足を
踏んでいたのですが丞相さんの記事で激賞していたので行く気になれました(笑)
これから公開されるであろう『空気人形』や『ウルトラミラクル〜』は
この映画を超えられるかどうかはわからないけど、普通に期待している
映画です。どちらかというと新人で女性の監督なので『ウルトラミラクル〜』
を期待しております。麻生久美子が主演ですよね。『インスタント沼』もそうか〜
監督ももちろんですが主演女優がツボなふたりなので邦画に浸れる年になりそうです。
そういえば才能ある女性の監督が増えているのが気になりつつも嬉しいことですね。

園子温が「日本のキム・ギドク」というのは初めて聞いたのですが安藤サクラの
ただならぬ存在を見るとなんとなくわからないこともないです。
キム・ギドクの最近作ではなく、あの怒りに満ちた中期あたりの映画を圧縮したような
感じがしました。
映画のテイストそれ自体はそれほど似てはいないのですが思いあまって無茶を
やらかす所からいろんなことが巻き起こる感じが似ているのかもしれません。
上映時間と饒舌さはちょっと違いますけどね(笑)
上映時間4時間弱のキム・ギドク作品は見てみたいです(笑)

イーストウッド特集、読んで覚えてないな〜(笑)
Tシャツの件は覚えているんですけどね。
でも昔からハスミンは褒め言葉として「ヘンタイ」をよく使っているように思いますよ。
ああ言って煙に巻くのがお好きな方ですから(笑)個人的には嫌いじゃないんだけどね。
今年の邦画は「ヘンタイ」がキーワードなのかもしれませんよ(笑)
4. Posted by rabiovsky   2009年05月25日 23:22
>>りぃだぁさん

やっと書き込みされましたね(笑)
こちらもよろしくお願いします。
それにしても、りぃだぁさんがこの映画を見るとは思ってなかったので
ちょっとばかり驚きましたよ。
ほんといろんな意味で興奮する映画でしたね。
上映時間237分と感じさせない怒涛の237分!
最後まで飽きさせずに見せきるとはなんともスゴイ映画でしたね。
コイケ役の女優さんに妙にはまってしまったのですが、彼女は
奥田映二のお子さんでございますよ。全然気がつかなかったけど。

6時間バージョンがあったんだ〜 いくらなんでも6時間はキツイよ(笑)
DVDで収録されてたら貴重だけど なかなか見れないと思うな〜
映画館でなら翌日に体調の変化を覚悟して見てみたいけどね(笑)
5. Posted by にこ   2010年03月11日 23:17
まだ半分しか見てないけど、TB予約させて下さい。
満島ひかりがすごいなあ。
安藤サクラはまだあまり目立ってないけど、楽しみ。
レンタルのDVDは2枚組で、
1枚目はサソリとヨーコがキスして、
連絡先を渡すとこまで。
6. Posted by rabiovsky   2010年03月12日 00:55
>>にこさん

お久しぶりです!
もちろんTB予約OKですよ!
DVDでは2枚組みなのですか。
長い映画なのでゆっくりご鑑賞ください。
ここから映画は加速していきますよ〜!
7. Posted by にこ   2010年04月10日 16:07
やっと最後まで見ました。
後半は安藤サクラが目立ちまくりですね。
もう一度見てセリフをメモしたいんだけど、
疲れたなあ。
8. Posted by rabiovsky   2010年04月11日 13:22
>>にこさん

おおっ!最後まで見ちゃいましたね。
うん、安藤サクラの見どころは後半のほうですね。
私はそれで嵌ってしまったのです(笑)

>疲れたなあ。
お察しします(笑)長い映画ですからね。
もうすぐGWですから ゆっくりやっていきましょう(笑)
アップされたら 遊びに行きますね!

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