日照り続きで苦しんだ八月がようやく終わり
押し寄せて来ている台風の為に
本降りの雨が降った
大地が潤い
川に流れる水が戻った
夜になると秋の虫達の鳴き声が
涼しい風と共に窓から入り込んで来る

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そんな夜に
久し振りに本を開いた
新聞で知り図書館予約した一冊の本が
私の番となった
長い居眠り磐音シリーズを読み終えた燃え尽き症候群とでも言うか
あれから四冊の本を
ページも開かないままに返却している
読む時間が無いとも言えるが
読む気にならなかったのが本音

久々に「読んでみるか」と開いた佐伯泰英先生の新作の「新酒番船」
「空也十番勝負」を年齢の為と途中完結としてしまったのに
新作とは
何やら納得出来ないところもあるが…


丹波篠山に代々続く丹波杜氏の家に産まれた海次は
四代目の父「長五郎」の次男坊
当然 五代目には嫡男の「山太郎」と決まっていた

杜氏である長五郎は毎年冬に灘五郷に百日稼ぎと呼ばれる酒造りの出稼ぎに出ている
この冬
長五郎は海次にこの百日稼ぎに出る事を許し
嫡男山太郎と共に灘五郷に出た

十八歳の海次は迷っていた
稼業の酒造りの蔵人として兄の補助として生きるのか…
去年初めて「新酒番船」の勇壮な船出の光景を見て
海の仕事に惹かれていた
新酒番船とは
灘五郷から江戸までその年の新酒を運ぶ船の事だ
新酒は
酒蔵ごとに仕立てられた船が
江戸品川までその到着を競う競争をするのだ

海次は幼馴染の小雪と言う娘を
長五郎が嫁にしたいと言う話に了承した経緯がある
蔵人見習である半人前の職人より
ゆくゆくは跡目を継ぐ立場の長五郎の方が
小雪を幸せにしてくれると…
百日稼ぎが終わり篠山へ戻ると
二人の祝言が執り行われる事が決まっていた

新酒を運ぶ廻船問屋鹽屋の新造船三井丸が
沖合に停泊した
海次は新酒を船に積む作業を3日間一人でこなし
いざ出港と言う時に
海次の姿が消えた


新酒番船の役目は
ただ単に新酒を江戸まで運ぶだけではなかった
西宮浦から十五隻の船が一斉に出帆するが
品川までの到着が一番の船には
「惣一番」と呼ばれる称号が与えられ
その年の売り上げがかなりの高額となるのだ

消えた海次は三井丸の船底に潜んでいた
海次は酒造りを捨て
故郷篠山に戻らない覚悟を決め
船乗りとしての道を選んだのだ
そこには小雪を義姉と呼ぶ事への戸惑いもあった

さて密航が見付かり海次の運命やいかに


まぁ江戸までの航海の全てが
まさかの出来過ぎの感はあるものの
小説ならではの展開で
ハッピーエンドとなるのだから
読んでいても気分は良い

夏の終わりの夜の読書日を
久々に楽しんだ