ありきたりな出会い。一夜だけのワンナイトラブ。知人に頼まれ場末のバーで臨時のチーフを引き受ける事に。路地裏の小さな店、五十代過ぎの女性が1人っきりの、カウンターのみの店。ある夜の事、ママの知り合いでもある20代の女性が、お手伝いがてら飲みに来てくれました。もう1人の後輩の女性を連れて。
知人の女性は僕も知り合いで互いに久々だと挨拶がてら飲み続けている。良くしゃべる知人女性が横で一緒に来た後輩女性は静かに話しを聞き入っていると言うより、初めてなので少し話しの間に入り難い様子。けれど少しづつ飲み始めるうちに酔ったのか、こちらを見詰めている。
その内に閉店時間になり、何故か彼女は私の手を握りしめ離さない。聞き取れ無い位の小さな声で、彼女の家に誘われました。一目惚れしてしまったのと一言。彼女は過去に離別していて自宅には小さな子が1人寝てました。縁と言うのが本当に有るんだと感じました。
その日から私は彼女の家で同棲する事に成りました。当時の私は仕事も辞め、彼女がラウンジで働き、その間に私が子供の面倒を見て、彼女が仕事で酔って帰ってくると毎夜飲みに出掛ける日々。もちろん金銭は総て彼女持ちです。そんなに良くしてくれる彼女の居ぬ間に悪い事ばかりを繰り返す私に、とうとう愛想が尽きたのか別れる事に成りました。
その後も互いに忘れられ無いのか、また付き合う事に。落ち着いたら一緒に成ろうとプロポーズするものの、相変わらず働かない処か、悪い道に突き進んで行ってしまいました。心から愛しているのに、どう接して良いのか解らない子供のようなものでした。あれだけ尽くしてくれた彼女に、もう一度会いたい。そして有り難う。苦労ばかり掛けて、ごめんなさいと言いたいと思い続け、未だに偶然逢える事を期待しています。
一度失ってしまったものは覆水盆に帰らずです。悔いの無いように今は精一杯生きて行こうと誓いました。けれど未だに未婚のままです。この先も新たな恋愛が始まる事も無いかと思います。