※12月18日11:50一部加筆、13:50さらに修正・加筆


 雑誌のグラビアをネットで無断転載することについてつぶやいたところ、本当にたくさんのリツイートをいただきました。本来なら、本誌の紹介などをRTしてもらえたほうが嬉しいんですが・・・・・・(苦笑)。とはいえ、せっかく声優ファンの方にたくさんの賛同をいただいたので、声優誌の編集長として、改めて著作権(厳密に言うと、権利意識)についてザックリと感じていることをまとめてみました。そもそもこのブログは「ラジオに関すること限定」のものなのですが、今回だけは別。ご了承ください。

 まったく気にされていない方も多いでしょうが、本当に根深い問題だと思います。なぜかというと、今回のつぶやきにRTした人の、少なくとも「2~3割」以上は明らかに著作権のことがわかっておらず、明確に侵害しているからです。

※注
この記事アップ後、権利関係に詳しい方に何件かありがたいご指摘をいただいております。権利については考え方が幅広く、ちょっと調べたぐらいでは全体像を掴むことは難しいです。僕自身、自分の仕事に関わる部分の、ほんの一部を数冊の本とネット上の知識で補完しているにすぎません。かなりザックリとした説明になっているので、実際はもっと複雑であることを念頭に置いていただけたらと思います。
 

■そもそも今回は何が起きた?

 今回、憤りを感じて思わずツイートしてしまった事態についてまず説明したいと思います。

 それを発見したのは、『声優ラジオの時間ユニゾン』発売日の深夜のことでした。「とある記事のグラビア全て」がTwitter上にアップされていたのです。驚いたことに、「声優ラジオの時間」という言葉も含めてアップされていたので、早い段階で発見し、即座にそのアカウントに削除するように警告。すぐに先方が気づき、削除してもらいました。たぶんグラビアを転載すること自体が問題だという認識がなかった方だったのだと思います。

 その方が画像BOTにもリプライを飛ばし、紐付けされていましたが、画像BOTもRTしているだけだったので、元のつぶやきが削除された時点で、RTも消えています。

これまで『声優ラジオの時間』が受けた被害

 過去にも、Tumblrである記事のグラビア全てが転載されていたことがありました。これもTwitterでそれをアップしている人がいて発覚。これに関しては、版元として正統な手続きを取って削除依頼を出し、数日後に削除されました。

 『声優ラジオの時間』の表紙画像をTwitterのアイコンにしている人もいました。なりすましと判断される可能性もあるだけに、直接警告し、アイコンを変更してもらいました。

 直接行動を取ったのは上記の3件だけですが、憤りや怒りを感じたことは多々あります。例えば、発売直後に本誌を購入した人に対し、Twitter上で鍵もかけず、「写真どんなのあった? 見せて」とお願い。それを受けて、アッサリとスキャンした画像をアップし、「ありがとう」「どういたしまして」とやりとりをしていたのを見たことがあるのです。この「他人のために善意としてアップした」というシチュエーションがクセモノ。本来の悪質性を覆い隠してしまうんですよね。

 その他、明らかに『声優ラジオの時間』から転載した写真をTwitterのプロフィール画像、ヘッダー画像にしている例は無数にあります。これまで5冊しか出していないムックでそうなのですから、月刊の声優誌、アニメ誌の被害は甚大でしょうね。

公式アカウント運営者として、どのぐらい注意しているのか?

 「偉そうなことを言ってるけど、お前はどのぐらい意識してるんだよ?」とツッコミを入れてくる人がいるかもしれません。そうではなくても、「このぐらいで問題ない」と思い込んでいる場合もあると思うので、例として、僕が普段考えている権利意識についてお話ししたいと思います。

 最初に言っておきたいのは、僕の意識も「不完全」だということ。もっと専門的に権利について学んでいる方からすると、「甘い」「お前も違反している」という声があると思いますし、自分自身も「これで大丈夫なのだろうか?」と不安を感じています。それを前提にして読んでみてください。

 公式アカウントで本誌の表紙画像は毎回アップしていますが、それ以外の記事に関してはまったくと言っていいほど上げたことがありません。なぜならそのたびに、写っているタレントさん側の許可が必要だと認識しているからです。他媒体の公式アカウントで誌面の一部をアップしていることがありますが、その際にはちゃんと許可取りをしているのではないかと考えられます。

 よく雑誌の公式アカウントなどで取材時のオフショットを掲載していることがありますが、それらは勝手に撮影してアップしているわけではなく、対象の許可を取り、画像確認を経てアップされているのが一般的だと思います。

 実際の誌面作りで言うと、90年代の女性声優ブームを検証した『声優Premium』では、当時の専門誌の表紙やCDのジャケットを掲載していますが、全て出版社やレコード会社、並びに声優さんサイドの許可を取っています。取れなかったものは掲載しませんでしたし、場合によっては使用料がかかる場合もあります。

 よく「グレーゾーン」という言葉が使われますが、個人的にグレーゾーンだと考えているのは、「スマホで自分の作った雑誌の表紙を撮影し、それを公式アカウントでアップしていいものなのか?」ということです。

 突きつめて考えると、そのたびに表紙に載っているタレントさんの許可を取らなければならないと思いますし、出版社の法務などに毎回報告しなければならないんじゃないかと思うんです。あくまでも「阿吽の呼吸」や「業界の慣例」という意味で許されているだけなんですね。

 反対にタレントさんが「この本に自分のグラビアが載っています」と表紙をSNSなどでアップする場合も、突きつめていけば、出版社の確認を得る必要があるんじゃないかと。これも問題視されることはまずないですが。

 自分の携わった別の雑誌、いただいた本などの表紙をスマホで撮影してアップする場合もあります。表紙というのは言わば本の顔なので、出版業界的にそれをアップすることを否定する、という状況はまず考えられませんが、これも「暗黙の了解」みたいなもので、本質的に突きつめると、グレーゾーンだと思います。それこそ、一部の芸能事務所ではこれだけで大問題になりますからね。

 あと、取材したイベント、招待されたライブのポスターなども許可を取って掲載している場合もありますが、「業界の慣例」でサラッとやってしまっている時も。明確に繋がりのある相手だからこそやっていることで、この手のことは先方から「ありがとうございます」「アップしてください」と言われる時もあるのですが、この辺の意識は怖いところです。「メディアの人間はよくて、一般の人間はダメなのか?」と言われたら、何も言い返せませんから。ここは改めて意識しなければならないなと思います。

 あとは、よくカレーの画像をアップしていますが、これも事前にいろいろと調べて、「料理自体に著作権はない」という前提を理解した上で掲載しています。

 ちなみに、文章という部分で言えば、ラジオでパーソナリティが語った言葉をそのまま使う場合は、「」付けにするよう心がけています。ネットニュースの本文から引用する際も「」にしています。こうして、引用している部分を明らかにしているわけです。この「引用」というのは著作権の初歩の初歩なので、気になる方は調べてみてください。

 文章面で言えば、取材秘話などをどこまで書いていいのかなんて話もあります。自分の中では明確な基準はありますが、 その線引きを具体的に話せと言われたら表現が難しいんですよね。メディアに関わっていると、いろんな場で権利意識が問われ、自分でも自分に問いかけている感覚があります。

■声優・アニメ関連でよくあるパターンが○か×か。

(1)Twitterで勝手に画像を上げちゃいけないのはわかってます。でも、アイコンやヘッダーならOKですよね?

 ×です。つぶやきであろうと、アイコンであろうと同じです。たぶん3~5割ぐらいの人がアウトなのでは? トリミングしたり、一部修正したりしても「×」です。写真のみならず、イラスト、漫画、広告なども基本的にはダメです。

(2)公式サイトやブログに画像が上がっているんだから、これをスクショしたり、画像保存してアップするのは問題ないはず。

 ×です。これらも全て権利侵害の範疇となります。

(3)画像はNGですけど、動画からスクショするのは問題なし!

 ×です。声優ラジオでよく見かけますが、全て権利の侵害です。公式アカウントが権利関係をクリアしてやるのはOKですが、だからと言って、一般リスナーがやるのは×です。

(4)好きな声優さんがTwitterにアップしている写真がかわいい。よし、これを保存して、自分のアカウントでもアップしよう。

 ×です。もしそれを広めたい場合は公式からのリツイートで対応しましょう。リツイートは権利的に問題ありません。

(5)Amazonで今度買う声優雑誌の表紙がアップされている! この本、売れてほしいんだよなあ。よし、これをスクショしてつぶやこう!

 ×です。Amazonの画像をアップしたい場合は、URLで紐付けしましょう。Amazonに上がっている画像自体は著作権をクリアしています。

■雑誌編集長として考えたシビアな現状

 この手の無断転載でよく言われる言い訳として、「宣伝になるからいいんだ」という話がありますが、これは本末転倒です。宣伝する側は出版社や事務所であり、一般のファンが独自の判断でする「宣伝」は、もはや「宣伝」ではなく「妨害」です。例えば、雑誌側なり、タレントさんなりが「この画像は転載自由なのでドンドン利用してください。宣伝になるので」と明言されていればOKですが、そうではない限りは全てNGです。

 なぜそこまで無断転載を気にするのか。著作権云々もありますが、それ以上に売り上げの低下に繋がるからです。写真を目当てで買う方がいる以上、ネット上で手に入ったら、それで満足する人が少なからずいます。

 シビアな話、そういう読者が1000人ほどいたら、休刊・廃刊を余儀なくされる雑誌が多々あります(もちろん声優誌でもそうです)。極端に言えば、数人の読者が全てのグラビアをネット上に拡散したら、雑誌は立ちゆかなくなってしまうのです(まあ、その前に、それをした人が捕まると思いますが)。

 雑誌が廃刊になれば、自分が応援しているタレントさんが出る媒体が少なくなり、直接的な収入減に繋がります。例えば、声優雑誌が1つなくなれば、宣伝する場が減るわけですから、CDの売り上げにも、アニメの視聴率にも少なからず影響を与えますよね? それがジャンルの衰退にも繋がり、連鎖することで、場合によってはジャンル自体がなくなってしまう可能性すら出てくるんです。今はシビアな時代ですから、「好きで応援する」=「明確な数字になる形を取る」必要があるのかもしれません。

■権利意識は時代に沿って変化している

 雑誌作りの現場にいて感じるのは、権利意識の変化です。年齢の高いライターさんには「ネット上にある画像は勝手に使っていいんでしょ?」なんて感覚の人もいますし、テレビ関係者のブログで、テレビ映像をスマホで撮ってブログに上げているのを見たことがあります。明らかに権利を侵害しているであろう写真をアップしたつぶやきを漫画家さんがRTしたり、明らかに権利を侵害している情報サイトに、タレントさんが「取り上げていただいてありがとうございます」なんて感謝している例に遭遇したこともあります。メディアに関わっている人でもそういうことがあるのが現状です。

 ただ、年々厳しくなってきているんですよね。例えば、数年前まで「お宝画像掲載」なんて言ってテレビや映画からキャプチャーした写真を載せたような雑誌がコンビニに並んでいたと思うんですが、現状は激減しています。そんなこと、真っ当な出版社がやることではないんです。

 やりたい放題だったネットニュース内でも、無断転用・無断転載の意識が高まり、サイト閉鎖や会社倒産に繋がるケースも出てきました。なので、一般ユーザーも改めて自分の権利意識に疑問を持つタイミングが来ているのだと思います。

■最後に~自己防衛のためにも権利意識を持つべし~

 知らない方も多いと思いますが、Twitterでは権利者がすぐに報告できるシステムが出来上がっています。誰が削除を依頼したのか相手に伝わってしまうシステムなので、そこで問題点もあるのですが、やろうと思えば、出版社や事務所が動けば、即座に画像を削除できる状況にあります。

 それこそアカウント凍結となることもありえますし、今のネット社会の流れを考えると、「この人、違法に画像をアップしてたことがあるのか。それなら就職試験に落とそう」なんていうように経歴に傷ができる可能性まであります。まあ、あまりにも多く、いくら削除してもいたちごっこなので、なかなか行動に移すことはないでしょうが、あまりにも悪質だと裁判沙汰になることもあります。

 ここまでは他人の権利を侵害する危険について書いてきましたが、今の時代、逆に一般人でも侵害されることも増えています。Twitterのつぶやきやブログを丸々転載されたり、自分の書いたイラストやSNSで撮影した写真を無断で使用され、大きな問題になることも多々あります。

 たぶんあなたの好きなタレントさんがTwitterを開けた時、自分の写真をアイコンにしている知らないアカウントを見て、嫌な気分になっていることでしょう。嬉しいなんて思うはずがありません。当たり前の話で、逆の立場になって考えてください。自分の写真を勝手にアイコンにしているアカウントがあったら、絶対に怒って抗議するだろうし、凄く怖いじゃないですか。なりすましの可能性も、そう周りに誤解させる可能性もあります。これは仮定の話じゃなく、本当にそうやって転載されることが今の時代は実際にあるわけなんです。

 これだけ権利関係を取り巻く状況が変化している以上、特に10代・20代の人はいわゆる「ネットリテラシー」を学んでいく必要があると思います。それは愛する対象の権利を侵害しないためでもあるし、自己防衛をするためでもあります。今後、社会に出て働いていくためには必須だと思いますね。

 著作権に関して言うと、あくまでも親告罪ですから、権利者が動かない限り、罰せられる可能性は低いです。だからといって、開き直って侵害するのではなく、ちゃんと一線を守って、問題ない形で応援してもらえたらと思います。

 と、ここまでいろいろと書いてきましたが・・・・・・本質的には少しの権利侵害も、大きな侵害も、ダメなことには違いないんですけれど、逆に言うと、今の時代、権利をまったく侵害しないことは現実的に不可能なことではあるんです。メディアだって、タレントだって、それは当てはまります。僕自身、清廉潔白とは言えませんし、周りの明らかに権利を侵害している人を注意しているかと言ったら、スルーしているのが現状です。また、実際の権利元が「表紙やジャケットぐらいだったら問題ない。ガンガンアップしてくれたらいいのに。権利って面倒だな」と思っている場合もあるでしょう。

 厳しく管理するなら、SNSの大半のアカウント、動画サイトにアップされている映像の大部分がアウトなわけで、突きつめて考え始めたらキリが無いんですよね。それこそ街中で写真を撮ることすら躊躇するようになってしまいます。そこまでがんじがらめになる必要はないかもしれませんが、行き過ぎたら、人を傷つけたり、利益を奪ってしまうこともありえるので、心の中にそういう意識を持ち、常にアップデートしていくことが大事なんじゃないでしょうか。

 最後に、ここで書いたことは、あくまで僕個人が何となく理解してきた内容をかいつまんでザックリと紹介しただけで、抜け落ちや事実誤認があると思います。「お前もこの時、権利を侵害してんじゃないか!」という話もあるでしょうし、また業界やジャンルによってもその意識や慣例に差があります。例えば、僕が関わっているプロレスで言えば、「動画はダメだけど、写真撮影はOK。SNSでドンドン上げてください」なんて状況ですからね。

 著作権に肖像権、パブリシティー権、プライバシー権、CDには原盤権なんてものまでありますが、正直、細かい部分まで僕は理解できていません。「不勉強な!」と失笑されるかもしれませんが、こんな僕でも意識が高いぐらいなのが現状でもありまして・・・・・・。カメラマンにもデザイナーにも権利は発生しますし、何を持って引用なのか、画像の引用とは、ネット上の権利侵害の定義とは・・・・・・なんて調べていくと、もはや泥沼。明確な線引きがあるわけではなく、わけがわからなくなります(苦笑)。危機意識がある方は、専門書などを読むのをオススメします。


※ちなみに数年前この本を読んだらとてもわかりやすかったです。この表紙画像もAmazonからのリンクなので、権利的にOKです。