保持通話
CONNECTED
評価:
100点
絶対に切れない──
この通話が最後の望み

【監督】ベニー・チャン
【原案】ラリー・コーエン
【脚本】アラン・ユエン/ベニー・チャン
【音楽】ニコラ・エレラ
【出演】ルイス・クー/バービー・スー/ニック・チョン/リウ・イエ
【製作国】香港/中国(2008)
【日本公開日】2009/08/01
【鑑賞劇場】新宿武蔵野館
ロボット設計士のグレイスは、6歳の娘を女手一つで育てているシングルマザー。ある日、娘を学校へ送り届けた帰り道、見知らぬ男たちに拉致され、倉庫の中に監禁されてしまう。彼女は破壊された電話機を修理して外部への連絡を試みる。そして、苦労の末にとうとう誰かの携帯電話に繋がる。その電話を受けたのはシングルファーザーの経理マン、アボン。気弱で不器用な彼は仕事も家庭も上手くいかず崖っぷち状態。留学でしばらく離れ離れとなってしまう息子を見送るため空港へと向かっていた。そんな時、突然掛かってきた怪しげなSOSの電話。最初はいたずらかと警戒するも、グレイスの必死の訴えにようやく事の重大さを認識するアボンだったが…。(allcinema ONLINE)
『セルラー』

話題になったら、ハリウッドがリメイク権を買い取る。もはや、いちいち驚く事もなくなる程に昨今それは定着した(それ=製作開始を意味するわけでは無いしね)。けれど、その逆をやるのは珍しい。数年前に香港で生まれた『インファナル・アフェア』がハリウッドに渡り、『ディパーテッド』となったけど、今回はハリウッド産の『セルラー』を
香港がリメイクすることになったのだ。この流れは今まで数少ないだけに、非常に面白みを感じていた。ハリウッドの脚色が入ると、大衆化して良くも悪くもマイルドなることが多いけれど、このパターンは結果を想像しにくかったからね。
そして、その結果は大当り。リメイクという後出しジャンケン的ポジションを最大限に利用して、とことんオリジナルの短所を改訂していった。
そりゃもうバカ丁寧な程に。
まず勢いで見せてしまっていた最初の電話の修理を、監禁される女の職業を天才ロボット設計士に変更したことにより、それに説得力を与えていた。オリジナルは生物担当の教師で、それが活かされるのは脱出時に男と揉み合って、結果殺してしまうところだったんだけど、これがどんな映画かを考えれば、
そのどちらに説得力が必要であったかは言うに及ばず。他には、普通の警察署なのに電波が切れそうになる展開はあっさり捨ててしまっているし、ケータイ電話が混線してしまう飛び道具臭かった展開も無し。主人公に力を貸す警官の上司が、実は犯人の一味であることも、ギリギリまで隠すようになっていた。オリジナルではアッサリとバラして、特に隠そうとはしていなかったけど、これにより意外性のある展開が更に加味されることになった。
そして脚色された点が大きいのは、主人公の男の設定。シングルファーザー、つまり子供がいるってことにより、見ず知らずの人間からの助けの声を信じることに、これまた説得力を加えている。でもここに関しては、
オリジナルと一長一短だけどね。映画としては、有り得ない設定である方が面白いんだから、まるで接点が無いような若者だったオリジナルの方が、越えなければいけない壁が高いため、コンセプト的には面白い。ただ、そこから生まれるドラマとしては
本作の方が圧倒的に濃密。本筋の救出劇と絡ませつつ、大いに盛り上げる。時にはその設定が、見ず知らずの女か子供を選ぶのかの二者択一を迫り、タイムサスペンスとしても働く大活躍。やはりこれは監禁される女に設定を近付けた賜物。
あと、序盤の舞台にラストにまた戻ってくるというオリジナルの展開も大きく改変。オリジナルでは、そうしつつもお世辞にも上手くそれを活かした展開であったとは言えなかったからね(序盤に登場したキャラクターがもっと絡むのかと思っていた)。本作では、正確にはそういう展開ではないんだけど、最初からゴール地点が空港だと提示されているため、印象としてはさほどオリジナルと変わらなかったりする。本作では各キャラクターを最後に集合させ、ちゃんと効果的に絡ませて活躍させた(前述の上司のネタバレをここにもってきたのは英断だよ)。
ただ、観始めは心配もあった。ここまで丁寧に脚色することがね。
それはオリジナルの強引さが、それはそれで良かったから。短所があってもごまかしが効いていたし、それすらも楽しめていたからね。だから丁寧に脚色してしまい、バカっぽさが薄まってしまったら、ごまかしが効かなくなると危惧したわけ。
しかしそれはアクションシーンが始まった途端に消え去った。香港の高低差のある地形を活かし、
とんでもないカーチェイスが繰り広げられるのだ!文字通り、車はブッ飛んだアクションをするし、香港らしい「俳優の命?何それ美味しいの?」的なスタントも登場する。最近のカーチェイス映画と言ったら、
『ジェイソン・ボーンシリーズ』が挙げられるだろうけど、個人的にはそんなの目じゃなかった。他にも、ちょこちょこと俳優を酷使するアクションが登場するからね。まさにバカとしか言いようがない迫力に開いた口が塞がらなかった。
これこそ本作の最大の魅力。
マジなのかバカなのか分からない絶妙なサジ加減が最高(笑)このいかにも香港らしいごった煮感よ。おかげで一挙両得な状態が揃ってしまった。巧いところに落ちつけたよなぁ。
これまでオリジナルを貶めるような書き方をしてしまっているけど、声を大にして言いたいのは、
それだって充分面白かったってことね。その上で、ここまで改良し、独自性を打ち出したことに、大いに賛辞の拍手を送りたい。リメイクはどうしても二番煎じであるから、出来が良くても一定以上の評価はしにくいけど、本作に関しては別にしてしまっていいだろう。よくぞ、ここまで。
ハリウッド映画のリメイクは権利的にも制約的にも、おいそれと出来るようなものではないだろうけど、
こういう企画は流行って欲しい。乱発されるリメイクに、世間は辟易している今だけど、これなら大歓迎だろう!
ちなみに日本も本作と同じようにアメリカ産の映画のリメイクが控えているんだよ。そう、『サイドウェイ』を『サイドウェイズ』としてね。企画としては同様でも、香港と日本の志しの差がハッキリと出るから楽しみだね!醜態晒すよ!