2013年05月09日
下北沢Ｘ新聞(2316)〜記憶から読み解く戦争史〜
（一）
あの戦争は何だったのか？。私は興味深く思ってこれを追い続けている。が、この頃思うことは、この歴史の中心は、ある意味で一つの方向で意義づけられていると思う。資料的な意味での戦争は、ある種オーソライズされていて、それが真実だとされている。
特には特攻物に関してはそうである。一つのポールポジションで物語化されているようにこの頃では思うようになった。従来の価値付け以外のものが出てきたときに、私たちはその価値付けをうまくできない。自分自身がそうである。あれはあれだと思い込んでいる場合が多い。
私自身、特攻を意図して調べたわけではない。たまたま調べていたら、これに行き会った。調べていくうちに突撃したしともいるが、突撃しなかった人も多くいる。後者は、世を忍んで生きて来た。逝った人に申し訳ないという思いからである。
戦争のドラマの通例は、ドラマを生きた人にスポットを当てて作る。特攻などはその典型的な例だろう。人間の心は英雄を好む思いが潜んでいる。それで彼等を主人公とした映画や書籍は多く出される。しかし、戦争に参加ひとたちのほとんどは非英雄である。泥のように、糞のように、ゴミのように死んでしまった。
取材したり、調べたりすると市民が遭遇した戦争に行き当たる。ちょっとした些細なことに深い興味を覚える。昨日だった。電話で取材をした。
「戦後、放置された飛行機から車輪を外してそれをリヤカーに改造して使っていました。私も引いてみたことがあるのですが。これが重いのですよ」
こういう話には深い興味が湧く。
（二）
私たちは、土地土地でどんなことがあったのか。市民から聞き出しては、それを掘り起こしている。市民の記憶にこそ真実が眠っている。長年行ってきた。
私たちの運動は、地方にも広がり始めた。先だって埼玉県ひきがわ町の松原征男さんから「有史芳」第一号が送られてきた。我等の活動に刺激を受けて、いよいよ具体的な活動が始まった。戦争を追い続けているゆえに、この関連の記事があるとつい読んでしまう。
「有史芳」には「気球の紙張り」が載っていた。栗原才治さんからの聞き書きである。
比企郡西部で生産された障子紙は、小川和紙として戦前より売り出されていた。大東亜戦争の資材不足の折、軍は風船爆弾作りに丈夫な障子紙に目をつけたと思う。玉川でも、地元の人を集め、気球紙の張り合わせを始めたものだと思います。
風船爆弾は、「ふ号兵器」という秘匿名称で呼ばれていた。まず和紙とコンニャク糊で気球を作り、これに水素を詰め、大気高層のジェット気流に乗せてアメリカ本土を攻撃しようとする兵器である。
この爆弾は、各地で作られていたようで、この間松本に取材に行ったときに、穂高でも作っていたと聞いた。
（三）
風船爆弾は、なんとなくアナログ的でつい笑ってしまう。最も興味深いのは土地の文化と結び付いている点である。「有史芳」は述べる。
気球紙作りに必要な、和紙の原料楮を、「かず」と読んで、この辺りでも崖や空き地に自然に生えていたし、和紙張りの胡粉に使っていた蒟蒻も作っていた。蒟蒻は当時、養蚕が盛んで桑の木の下に多くの人が植えていた。働き者はお蚕と一緒に蒟蒻芋作りもやっていた。気球張りは女性が多かったが力仕事もあって男手も必要なので正木さんの工場では方々が働いていた。なんと言っても特産の和紙が近くにあったための仕事でした。
埼玉県小川和紙が風船爆弾に使われていた。気候や地形の関係から気球づくり欠かせない和紙と蒟蒻が獲れた。そのことから作られた。
記録によると、「生産個数はおよそ1万発。このうち9300発が放球された。アメリカ合衆国で確認されたのは361発である」と。被害は僅少である。風任せの兵器というところがのどかでもある。
昨今の戦争は、遠くを飛んでいる自国兵器は、アメリカの砂漠でコントロールできる。RQ-1 プレデターである。カラシニコフ銃を持ったアフガン兵士は山岳に身を潜めて戦う。が、一方は、アメリカの砂漠のエアコンの効いた司令部でこれを動かす。人間と機械の戦争だ。が、この開きには大きな矛盾がある。人と人との戦いでは融和というのはありうることだ。が、機械とは折り合わない。風船爆弾はまだましかとも思う。
私たちは、土地土地でどんなことがあったのか。市民から聞き出しては、それを掘り起こしている。市民の記憶にこそ真実が眠っている。長年行ってきた。
私たちの運動は、地方にも広がり始めた。先だって埼玉県ひきがわ町の松原征男さんから「有史芳」第一号が送られてきた。我等の活動に刺激を受けて、いよいよ具体的な活動が始まった。戦争を追い続けているゆえに、この関連の記事があるとつい読んでしまう。
「有史芳」には「気球の紙張り」が載っていた。栗原才治さんからの聞き書きである。
比企郡西部で生産された障子紙は、小川和紙として戦前より売り出されていた。大東亜戦争の資材不足の折、軍は風船爆弾作りに丈夫な障子紙に目をつけたと思う。玉川でも、地元の人を集め、気球紙の張り合わせを始めたものだと思います。
風船爆弾は、「ふ号兵器」という秘匿名称で呼ばれていた。まず和紙とコンニャク糊で気球を作り、これに水素を詰め、大気高層のジェット気流に乗せてアメリカ本土を攻撃しようとする兵器である。
この爆弾は、各地で作られていたようで、この間松本に取材に行ったときに、穂高でも作っていたと聞いた。
（三）
風船爆弾は、なんとなくアナログ的でつい笑ってしまう。最も興味深いのは土地の文化と結び付いている点である。「有史芳」は述べる。
気球紙作りに必要な、和紙の原料楮を、「かず」と読んで、この辺りでも崖や空き地に自然に生えていたし、和紙張りの胡粉に使っていた蒟蒻も作っていた。蒟蒻は当時、養蚕が盛んで桑の木の下に多くの人が植えていた。働き者はお蚕と一緒に蒟蒻芋作りもやっていた。気球張りは女性が多かったが力仕事もあって男手も必要なので正木さんの工場では方々が働いていた。なんと言っても特産の和紙が近くにあったための仕事でした。
埼玉県小川和紙が風船爆弾に使われていた。気候や地形の関係から気球づくり欠かせない和紙と蒟蒻が獲れた。そのことから作られた。
記録によると、「生産個数はおよそ1万発。このうち9300発が放球された。アメリカ合衆国で確認されたのは361発である」と。被害は僅少である。風任せの兵器というところがのどかでもある。
昨今の戦争は、遠くを飛んでいる自国兵器は、アメリカの砂漠でコントロールできる。RQ-1 プレデターである。カラシニコフ銃を持ったアフガン兵士は山岳に身を潜めて戦う。が、一方は、アメリカの砂漠のエアコンの効いた司令部でこれを動かす。人間と機械の戦争だ。が、この開きには大きな矛盾がある。人と人との戦いでは融和というのはありうることだ。が、機械とは折り合わない。風船爆弾はまだましかとも思う。
