2016年02月22日

下北沢X物語(2980)〜辺境新境「仙川の町」の文化を巡る〜

P1050833(一)千歳村にせよ下仙川村にせよ、都市西端の静かな村だった。ところがここに近代の鉄道が敷設される、当地に住んだ徳富蘆花は「東京が大分攻め寄せて来た。東京を西に距さる唯三里、東京に依って生活する村だ」(『みみずのたはこと』と述べる。京王線の開通によって都市文化が押し寄せてきて村は激変していく。
 
 蘆花は一帯に広がる自然を愛おしんで当地に越して来た。ところがこれもどんどん倒されていく、「武蔵野の特色なる雑木山を無惨無惨拓かるゝのは、儂にとっては肉を削そがるゝ思おもいだが、生活がさすわざだ、詮方は無い」と。

 京王線が敷設されたのは大正2年(1913)だ、それから103年経った。この仙川駅を昨日訪れた。「仙川の文化を訪ねる」という街歩きに参加するためだ。

 明大前駅で電車を待っていると快速がやってきた。仙川は停まるのか?その不安をよそに電車はきっちりと停まった。
「この駅、乗降客が5000人も増えているんですよ」
 今回の街歩きの案内人は仙川地図研究所の和田文雄さんだ。北沢川文化遺産保存の会とのコラボでの開催だ。その和田さん、仙川が人気の街になっているという。商店街を歩いてみると確かに活気がある。
「落ちぶれていく下北沢とは違うね」
 一人がそんな感想を洩らしていた。
 
 街に大学があることが大きな要因らしい。桐朋学園大学があり、白百合女子大学がある。そのイメージがよい、楽器を携えた音楽志望の者やお嬢さんである。

「この仙川駅は、調布市、三鷹市、世田谷区、狛江市、四つの行政区域の住民が利用しているんですよ。『03』エリアと『042』エリア、品川ナンバーと多摩ナンバーの教会になっています」
 和田文雄さんが説明をする。なるほど、辺境であり、境界の街だ、色んな人が混ざって構成されているのかもしれない。
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(二)
 最初に訪れたのはキユポートだ。研究開発機能とオフィス機能を合わせもった施設だとのこと。かつてのマヨネーズ仙川工場だ。なぜこの工場がここにあるのだろう前から不思議に思っていた。

「ここは戦時中は、アルミニューム工場でした。航空機部品を製造していました。近くの桐朋学園の女学生も、ここに勤労動員されていました」
 和田さんの説明には納得した。戦後になって食糧事情が改善され、マヨネーズ需要が高まり、ここに工場を建てたようだ。

 このキユーポートのある場所は道や地形からしても興味深いところだ。古道滝坂道と甲州街道が行き会う場である。いわゆる国分寺崖線の上である。人も車も電車もこの急坂を越えるのに苦労したところだ。
「電車が動かなくなってみんなで押したという話もあります」
「荷馬車押しの人夫がいたといいます」
 崖線を越えるのは大変だった。

 この崖線の一角に下仙川高射砲陣地があった。今は痕跡はほとんど残っていない。唯一弾薬庫と思われるものが今も残っている。

「この下仙川隊の行方を追っているのですけどよく分かりません。駒沢隊と調布第一隊は富山伏木港の防衛任務に就くために移動しています。この下仙川隊も記録では、青森港に移動していることになっています。もう一つ、ここにレーダーがありました。ところがこては置いていったとあります」
 電波標定機としてここには「祁拭廚設置されていた。ところが、これについては、「祁燭論臉遒忙鎮屐廚箸△襦

 千歳高射砲隊も直江津に行ったことになっている。下仙川は青森へ、しかし前者も後者も確実に現地に行ったのかそこは分かっていない。謎である。

(三)
 高射砲陣地のある国分寺崖線の上からは眺望、展望がよく利く。西に高いマンションが見える。国領である。このそばにB29が墜落した。この機の一トン爆弾が京王線の地下化工事のときに見つかった。これを撤去するために全線の運転やめたことがあった。

 このときに調布の244戦隊の飛燕の体当たりによってこの機は墜落した。これが大きな話題となった。自身も国領に墜ちたB29のことは現地取材していた。
「後ろから乗っかるようにして体当たりをしていっった」
 実際の目撃者からこの話を聞いていて信じていた。

 この頃になってこれが違っているのではないかと思ってきた。調布飛行場の東、国分寺崖線の上に高射砲調布第一隊があった。ここは艦載機に襲われて犠牲者を出している。戦友が慰霊碑も建て記録を残している。
 これによると国領墜落のB29は調布第一が落としたらしい。
「あれは、そうだったみたいなんですよ。本当は調布第一が落としたんですけどね、航空隊の方から手柄を譲ってくれとせがまれてそうしたと。今日持ってきた本に書いてあります…」
 今回代田橋から参加された人が言っていた。
(上、仙川駅前での記念撮影。25名+犬一匹。撮影米澤邦頼。下、和田文雄さん)



rail777 at 20:00│Comments(0)││学術&芸術 | 都市文化

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