2022年06月22日

下北沢X物語(4511)―中田芳子:「90歳 YouTuber初ライブ!」―

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(一)特攻因縁の果てのない旅、昨日、習志野市まで行った、「90歳 YouTuber初ライブ!」と銘打たれたコンサート観るためだ、その人は中田芳子さんだ。彼女は湾生である、十四歳の女学生だったときに第204戦隊の特攻隊員たちと出会った。これが彼女の運命を変えるきっかけとなった。可愛らしい女子学生として彼等のマスコット的存在となった。が、彼等の多くは特攻隊員として出撃し亡くなった。戦後彼女は日本に引き揚げてくる、特攻隊員との繋がりは深く、彼女は特攻に行くはずだった中田輝雄軍曹と結婚する。その主人は深い苦悩を背負っていた、特攻隊員に選ばれたが最後は外された。負い目が終生彼を苦しめた。それを彼女は傍らで見守ってきた。苦難の人生だった。ところが彼女は挑戦の人だ、誰も手にかけなかった「逆さ歌」を身につけ第一人者となった、コンサートには大勢が詰めかけた。埋もれるほどに花束を受け取り、にこやかであった。第204戦隊の隊員が魅力として感じた愛らしさが、90歳の今にも生きていると思った。

 会場最寄り駅は京成大久保駅、かつての軍都だった、この習志野市大久保地区は、騎兵第一旅団の本拠地があった。旅団長の一人は秋山好古で、商店街には彼の顕彰碑が建っていた。両脇に多くのラーメン屋が建つ通りをまっすぐに行くと、日本大学生産学部があった、ここは騎兵第14連隊跡で、騎兵第13連隊跡には東邦大学が建っている。町の通りは若い学生ばかりだった。

 千葉県まで出かけることは滅多にない、が、前から行って見たいと思うところがあった。旧印旛陸軍飛行場である、中田さんのご主人は、ここにあった逓信省航空局 航空機乗員養成所出身である。僚友の塚田方也軍曹ともにここで育った。

 1945年7月19日台湾花蓮港から四機が沖縄に出撃した。このときに塚田軍曹は出撃した。ともに出撃するはずだった中田軍曹は外された。二人はこの印旛の同期生だった。赤トンボに乗って腕を磨いた、彼等に取っては忘れ難い場所だった。前々からその旧跡を見てみたいと思っていた。が、調べてみると会場と旧跡と離れていた。



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(二)
 私は、この一日に作品を仕上げて脱稿していた。『台湾出撃沖縄特攻−陸軍八塊飛行場』である。主に八塊飛行場から出撃した特攻隊を扱っている。

 第204戦隊の本拠地は、花蓮港飛行場である。この隊は、二度に亘って特攻出撃をしている。1945年5月20日と7月19日である。先発隊は八塊から出撃した。隊長は栗原義雄少尉だ。この彼の甥御さんが鈴木豊さんで、私は彼から中田芳子さんを紹介してもらっていた。彼も会場に来ているかもしれないと思ったが見かけなかった。
 ところが、夜になってメールをもらった。

 6月21日、習志野市市民会館で中田芳子さんの90歳の初めてのコンサートに娘と私が招待され、会いました。数日前にぎっくり腰になって、不自由そうでしたがとても90歳とは思えないコンサートでした。ユーチュ−ブで見ていたままの人でした。

 彼も参加していたと知った。行き違いである。

 中田芳子さんは、「逆さ歌」の達人だ。と言ってもこの歌の意味はよく分からなかった。どういうことか、まず意味不明な歌を弾き語りで歌う、それを録音して後の方から再生すると、完成した楽曲が聞こえてくる、これを「逆さ歌」という、彼女は自分を「リバース・シンガー」と呼んでいる。レパートリーは数十曲に及ぶという、目標は百歳まで百曲と言う。

 確かに不思議感はある、呪文のような歌をうたって、それを再生すると聞き慣れた音楽が聞こえてくる。

(三)
 人間、どう生きるかという問題を抱えている、やはり大事なことは「する」ことである。「逆さ歌」をうたうには楽譜が必要だ、これは間違いなく頭脳の体操になる。彼女が長生きしているのは脳を酷使しているからだろう。

 歳は取っているが、愛嬌はある、彼女は特攻隊員たちにもてた、今も残っている愛らしさが彼等を惹きつけたのだろう。終わって花束贈呈があったが何人も何人も贈呈者が出て来た。

 ご主人は特攻で苦しんだ、彼女もまたその彼を見守ってきた。苦しく辛い生活だったが、遺された人生を彼女は充実して生きている。

(四)
 「台湾出撃沖縄特攻−八塊陸軍飛行場」、これにまとめた第204戦隊関係は、彼女から取材してまとめた。その関連箇所の目次を紹介しておこう。

 ああ、飛行第二〇四戦隊
1、苦闘特攻第二○四戦隊
2、花蓮港飛行場
3、湾生中田芳子さん
4、中田輝雄軍曹のこと
5、忘れ難きあの一枚の写真
6、織田少尉の遺書
7、二次特攻再編成
8、中田輝雄軍曹の辞世




rail777 at 18:30│Comments(0)││学術&芸術 | 都市文化

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