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続・今でもしぶとく聴いてます

13 9月

モンテヴェルディ 六声部のミサ オデカトン

1809z12aモンテヴェルディ 6声部のミサ「その時イエズスは(Missa in illo tempore)」

パオロ・ダ・コル
アンサンブル・オデカトン

(2011年9月 マントヴァ,サンタ・バルバラ元宮廷聖堂 録音 Ricercar

1809z12b 
イタリアの古楽・声楽アンサンブルのアンサンブル・オデカトン、探してみるとパレストリーナ、モンテヴェルディ、A.スカルラッティといった作曲家の作品を録音していました。スカルラッティの場合にはそれ程重要視されていなかった作品を取り上げていましたが、それ以外では代表作、著名作品を選んでいます。今回のモンテヴェルディの6声部のミサ、「イン・イッロ・テンポレ(その時イエズスは)」は、1610年に「聖母マリアの夕べの祈り(聖母晩課)と同じ作品集にまとめられて出版されています。モンテヴェルディがマントヴァの宮廷から転職をはかった際、自身の作品の集大成的な意味で出版したという位置付けで、現存するモンテヴェルディのミサ曲の中では一番古いものになるはずです。他の二曲の4声部のミサはベネチアのサン・マルコ聖堂の楽長時代の作品とされています。

 このCDではミサ通常文(キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイ)の間に3声部のモテット “ Salve Regina(元后、あわれみの母
) ” をはさみ、アニュス・デイの後に “ Regina caeli(天の元后 よろこびたまえ) ” と “ Cantate Domino canticum novum(主に向かって新しい歌をうたえ)” を収録しています。それから末尾にはニコラ・ゴンベルーの作品、このミサ曲の元になった同名のモテットを加えています。全部聖母に関わる作品で統一しているのは念がいっています。ただ、特に聖母の祝日のミサを構成しているわけではなく、昇階唱や奉献唱等は入っていません。

 先月に聴いた「4声部の無伴奏ミサ」の時にこのアンサンブルを強烈に印象付けられて、作品自体にも大いに注目することになりました。今回も同様で、同じ作品集に入っている聖母晩課に隠れがちな6声部のミサがこれほど立派なミサ曲だと意識したのは初めてです。それに一緒に収録された聖母のモテットが、器楽伴奏にリュートが加わっているのでオルガンと通奏低音だけのミサの楽曲が引き立って聴こえます。

 
この曲が出版された時は日本では大坂夏の陣の少し前になり、その後に禁教がどんどん本格化、組織化していくことになります。当時の日本人でモンテヴェルディのミサ曲を使ったミサにあずかった人はいるのか、実際にどんな風に歌われていたか大いに気になります。
15 8月

モンテヴェルディの聖母晩課 ヘレヴェッヘ再録音/2017年

1808z15aモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

フィリップ・ヘレヴェッヘ 指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(合唱、アンサンブル) 

ドロテー・ミールズ(S)
バルボラ・カバートコヴァー(S)
ベネディクト・ハイマス(T)
ウィリアム・ナイト(T)
レイナウト・ファン・メヘレン(T)
サムエル・ボーデン(T)
ペーター・コーイ(Bs)
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ(Bs)

(2017年8月12-14日 アシャーノ,聖フランシスコ教会 録音 Phi Cl)

 今日8月15日の朝、少し早めに伏見区内の外環状線からJR山科駅南で三条通(府道四ノ宮四塚線)に入るルートで通勤していると元旦なみにガラガラでした。やっぱりお盆の8月15日は
ほとんど休祝日並みに定着しています。お盆にはご先祖の霊が自宅(生前の実家か)へ帰ると言われながらこの期間に墓参しています。それからご先祖のおかげ、という風に前向きに感謝の念を口にしながら、逆に不遇にあっても「こんな境遇なのは先祖が下手うったから」という類の恨み言はほとんど表に出てこないのは一種の美徳かもしれません。さらに、近親者が亡くなった際には「天国の誰それ」と宗旨に関わりなく「天国」と口にしがちです。わざわざ煉獄とか黄泉、ましてや地獄とは言い難いというだけでなく、なんとなく共通の精神風土のようなものを感じます。

1808z15b 「聖母の被昇天」の8月15日は過去記事でモンテヴェルディ「聖母晩課」をはじめ、聖母に関わりのある作品を取り上げていました。このモンテヴェルディ「聖母晩課」は、ヘレヴェッヘが30年以上経てから再録音したもので、今回は声楽はほぼコレギウム・ヴォカーレ・ヘントのみで演奏しています。前回の1986年録音時には同じくヘレヴェッヘのアンサンブルであるシャペル・ロワイヤルとサックバットのアンサンブル、「トゥールーズ・サックブーティエ
」を加えていました。

 この作品を録音する場合のチェック・ポイントを確認すると、モンテヴェルディが1610年に出版した作品集に入った楽曲だけでなく、グレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入して演奏しています。マニフィカトは一種類だけで6声部のミサは当然省いています(そもそも聖務日課・晩課とは違うから)。それから声楽は混声、器楽は金管等み加えているので修道院の聖堂で少人数で演奏する形態ではなく、どちらかと言えば貴族の城館等を想定した規模のようです。

 旧録音から30年以上経って旧録音から根本的にとまではいかなくても、大幅に変わったかどうか分かりません。聴いていて時々思ったのは、より後年に作曲された作品を演奏する時のスタイルのようなものを感じられ、古楽独自の演奏スタイルをより前面に出すという風ではない印象です。逆にというのか、歌詞、晩課の音楽という点を強調しているようでおおらかな祈りの音楽を感じさせます。
9 8月

A.スカルラッティ「死者のためのミサ」 オデカトン

1808z09aA.スカルラッティ 「死者のためのミサ曲」~四声と通奏低音のための

パオロ・ダ・コル 指揮
アンサンブル・オデカトン

ヴァイオリン:アイナス・チェン
       ヘートヴィヒ・ラファイナー
バッソ・ディ・ヴィオリーノ:マルク・ファンスヘーヴヴェイク
アーチリュート:ジャンジャコモ・ビナルディ
室内オルガン:リウヴェ・ダミハン

(2015年12月5-8日 ルッカ,オラトリオ・デリ・アンジェリ・クストーディ教会 録音 Arcana)

 今朝、通勤時に車内のラジオをつけたところ、いつものクラシック・カフェ(月曜は「きらクラ」)ではなくて、長崎原爆の日の特別番組「祈りの音色」が始まるところでした。長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産が先月に世界文化遺産に登録されたことを受けてか、過去の禁教、原爆投下だけでなく一番崩れから四番崩れについても言及した珍しい内容でした。8月9日当日は聖母被昇天をひかえていたので午前中に教会へ「ゆるしの秘跡」を受けるために集まり、行列が出来ていたという話もあり、大いに驚きました。国家総動員体制の末期、いよいよおかしくなっている時期に昼間も教会が開いて出入りできたこと、食料の配給じゃなくて「ゆるしの秘跡」のために行列ができるとは。

 前回に続いてアンサンブル・オデカトンによるイタリアの教会音楽です。作品以前にこの声楽アンサンブルの歌唱は素晴らしくて、特にモンテヴェルディの四声部のミサ曲は格別でした。今回のスカルラッティも歌唱だけでなく、会場、音質(残響の具合)ともに目のさめるような鮮烈さです。パレストリーナの時代から50年以上後の作品だけあって大分動的になってきています。作曲者の解説の中にはA.スカルラッティの教会音楽は重要ではないと書いてあるものもありましたが、このCDで聴く限りは十二分に魅力的な音楽だと思いました。過去記事(パレストリーナ「教皇マルチェリスのミサ」)にはアンサンブル・オデカトンについて男声アンサンブルと書いていたのに今頃気が付き、付属冊子の写真を見たらソプラノという表記だけでなく女声歌手らしき人物も写っています。

1808z09b A.スカルラッティ(Alessandro Scarlatti 1660年5月2日 - 1725年10月24日)の「死者のためのミサ曲」は、いつ頃、どこで作曲されたか確定されていない作品となっています。作曲者自体は鍵盤楽器の作品で有名な息子のドメニコ・スカルラッティの方が有名になり、忘れられたバロック期の作曲家になっていました。それでもオペラや交響曲を多数作曲し、オペラのナポリ派の開祖、始祖的な位置付けになっています。当時の聴衆にとっては19世紀人がヴェルディのレクイエムを聴いた時の衝撃に相当するのかと想像しましたが、続唱の「怒りの日」でもそこまで劇的でもありません。

 A.スカルラッティはシチリア島のパレルモに生まれ、そこで作曲としてスタートを切りました。当時のシチリアは「シチリアの晩鐘事件(ヴェルディのオペラにもある)」直後、スペイン領になっていました。その後1702年にスペイン継承戦争が起こり、スカルラッティはナポリを離れます。複雑な民族、王朝の変遷と戦乱を経たイタリア南部とシチリア島からこういう音楽生まれたのかと思うと感慨深いものがあります。
6 8月

モンテヴェルディ 四声部の無伴奏ミサ オデカトン

1808z07bモンテヴェルディ 四声部の無伴奏ミサ曲

パオロ・ダ・コル 指揮
オデカトン

(2017年6月24-27日 ベッルーノ,サン・ピエトロ 録音 Arcana)

 今日、八月六日は広島の原爆記念日でした。朝の通勤時にラジオで中継を少し聞いていました。それから典礼暦では「主の変容」の日でした。これは御受難の前にペトロらを前にイエズスの姿が変わり、白く輝き、モーセとエリヤらと語り合われたいう福音書の記事に基づきます。福音書の中でさえ特別に超常的な場面です。この祝日は元々東方教会で古くから祝われたもので、西方教会(この時点ではまだプロテスタント諸派は独立していない)でも15世紀半ばに正式に取り入れられたそうです。

1808z07a このミサ曲はモンテヴェルディ(Claudio Giovanni Antonio Monteverdi 1567年5月15日*洗礼 - 1643年11月29日)の没後、1650年に出版された作品集に含まれているもので、作曲者のベネツィア時代に作曲されました。アルバムのタイトルも「サン・マルコ聖堂のモンテヴェルディ: ヴェネツィア時代の宗教作品集
」と銘打たれています。モンテヴェルディの通作ミサとして残っているのは三つあり、他には1610年に「聖母晩課」と併せて出版された六声部のミサ、1640年にモンテヴェルディがヴェネツィアのサン・マルコ教会の楽長就任後の作品を集めた作品集「倫理的、宗教的な森」の中に含まれた四声部のミサがあります。

 そうした作曲時期等は置いておいても、この作品は単純にミサ曲として素晴らしいと思いました。特に後半、クレド以降が印象深くてかなり動的、揺さぶるような力強さで迫ります。過去記事で同じミサ曲を聴いたことがありましたが、その時のCD以上に感銘深い演奏、歌唱だと思いました。「無伴奏」と表記してありますが、声楽とオルガンで演奏しています。コーラスはソプラノが2名、カウンター・テナーが5名、テナーが4名、バリトンが1名、バスが3名の混声15名で歌っています。ミサ曲の他にも収録しているので四声のミサをそれだけの人数全員で歌っているかどうか分かりませんが、隙の無い緊密なアンサンブルで厚みもあって、珍しいタイプのコーラスだと思いました。ただ、オデカトンは(アンサンブル・オデ・カトン)見たことのある名前、パッケージ・デザインだと思ったらパレストリーナの「教皇マルチェリスのミサ」も録音していました。

 ルネサンス期のポリフォニー・ミサ曲やモテットの作者で有名どころはパレストリーナやジョスカン・デ・プレ、オケゲムやデュファイ、ビクトリア、ウィリアム・バードの名前が挙げられて、レコード、CDも定期的に新譜が登場します。それで、知らない作品を聴いたとして何となくパレストリーナだな、或いはバードの作品かな、くらいの気配、らしさは一応あると思います。しかし、モンテヴェルディのミサ曲の場合はどうかとなると全く自身はありません。聖母晩課なら断片的に記憶に残っているのでモンテヴェルディのそれだと分かったとしても、なぜそう気づくのか、「モンテヴェルディらしさ」はどうなっているのだろうと思います。出版年に隔たりがあるミサ曲を聴いている内にモンテヴェルディの匂いのようなものが浮かびあがってくるのだろうか(分からないかな)と思います。
16 7月

モンテヴェルディ 聖母晩課 ウィルソン、ラ・カペラ・ドゥカーレ

1807z16モンテヴェルディ 「聖母マリアの晩課」

ローランド・ウィルスン 指揮
ラ・カペラ・ドゥカーレ(古楽声楽集団)
ムジカ・フィアータ(古楽器使用)

モニカ・マウフ(S)
ドロテー・ミールズ(S)他
ハンス・イェルク・マンメル(T)他
シュテファン・シュレッケンベルガー、他(Bs)

(2010年10月22日 ケルン,聖三位一体教会 ライヴ録音 Pan Classics)

 7月16日は「カルメル山の聖母」の記念日でした。ということは世界中の修道院の中にはモンテヴェルディの「聖母晩課」を演奏したことがあったのかどうか。1610年に出版されたモンテヴェルディの曲集には同作品と六声部のミサ曲がおさめられていました。これはマントヴァの宮廷からローマ教皇庁への転職、息子の教皇庁神学校への入学を願ったモンテヴェルディが、自身の作曲技法の集大成的に作曲したものを出版したのではないかという見方もされています(歌劇「オルフェオ」のファンファーレが聖母晩課の冒頭に出て来るのは名刺代わりか)。その「聖母晩課」は日本のクラシック音楽フアンの間ではバッハのマタイ受難曲やロ短調ミサ程は有難がられていないようですが、海外では定期的に新譜が出続けていてそれらにまさるとも劣らないようです。

 これは英国出身のローランド・ウィルスンが結成した古楽アンサンブル、ムジカ・フィアータと声楽アンサンブルのラ・カペラ・ドゥカーレらを指揮した録音で、2010年に録音していたものが今年になって日本語解説付きで発売されました。ウィルスンはトランペットとツィンク(コルネット)を学んだ後ドイツへ渡り、1976年に
ムジカ・フィアータを結成しました。その後フリーダー・ベルニウスのプロジェクト、録音に参加していました。その後1992年に古楽の声楽作品にも対応できるようにラ・カペラ・ドゥカーレを結成しています。

 CDの解説によると楽隊1~4と通奏低音の五つのグループ分けて表記されてあり、1と2が声楽(
ラ・カペラ・ドゥカーレ)、3と4が器楽アンサンブルでした。こういう構成ならヴェネチア楽派のように聖堂の離れた場所に陣取った奏者が交唱するような壮麗なものになっているかと思ったら、実際に聴くとそうでもなくて、しめやかに歌われている趣なのでちょっと予想外でした(勝手に期待しただけ)。声楽の方は6名ずつの二群という構成で、そんなに大音量で朗々と響くといった風ではありません。器楽アンサンブルも一群が6名で、片方はトロンボーン等の管楽器だけという構成で、ツィンク(木管コルネット)が3人ということもあってか甲高くならず、晩課らしい落ち着きも感じられます。

 CDの構成は一枚のCDにモンテヴェルディが作曲した聖母晩課の楽曲だけを収録しています。だからグレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入したり、特定の聖母の祝祭日を念頭に置いて構成するということはしていません。また当然ミサ曲も収録していません。ただ、解説によると音程についての考察、移調の可能性の分析がなされています(専門的なので引用もしない)。
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