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続・今でもしぶとく聴いてます

13 8月

モンテヴェルディの聖母晩課 ライニッシェ・カントライ

1708z13bモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

ヘルマン・マックス 指揮
ライニッシェ・カントライ
S1:ヨハンナ・コスロフスキ
S1:マルティナ・リンス
A1:カイ・ウェッセル
A2:アルノ・タベルトショファー
T1,2:ウィルフリード・ジョッヘンス
T1:マルクス・ブルストシャー
T3:ラインハルト・ディンゲル=シュルテン
Bs1:ハンス=ゲオルグ・ウィンマー
Bs2:ステファン・シュレッケンベルガー

~通奏低音
ガンバ:ヒルデガルト・パール
ヴィオローネ:ロバート・サガッサー
テオルボ(chitarrone):リー・サンタナ
オルガン:リーン・ヴォスクイレン

(1990年11月5-9日 ドルマーゲン,クロスター・クネヒトシュテデンのバジリカ 録音 EMI)

1708z13a 8月14日は聖コルベの記念日、翌15日は聖母被昇天の大祝日、コルベ師は聖母への崇敬、信仰が強く深かったのでこの二日は特に聖母マリアに縁のある日と言えます。そういうこともあって過去記事で今時分に聖母マリアに関わる楽曲を選んでいました。今年はモンテヴェルディのメモリアル年なので聖母晩課のちょっと古い録音を取り出しました。といってもこのCDは最近まで存在を知らなかったもので、「名曲名盤500(レコード芸術編)」の最新版にリストアップされているのを見て始めてヘルマン・マックスがこの作品を録音していたのを知りました。

 マックスがテレマンのスペシャリストだとしてもその録音を聴いたことがなく、かろうじてバッハのCDしか聴いていませんでした。これは海外のEMIの廉価シリーズ、バロックスペシャルという企画に入っていたものでした。CD1枚だけに収録しているこの録音は、よく見ればこの演奏者がこういう作品を、という珍しさだけででなく、演奏内容もちょっと珍しいものでした。

 器楽アンサンブルが通奏低音だけという簡素なもので、そのため通常は冒頭から聴こえてくる金管楽器が入っていない編成です。これは作品自体が貴族の城館のサロン等の広い場所から修道院の聖堂、小さな館といった様々な場所で演奏できるように、編成、規模に幅を持たせてある(従ってマニフィカートは7声部と6声部の二種備えている)、という性質に対応したものです。6声部のマニフィカートを採用する場合はオルガン伴奏だけということもあるので、この録音はそこまで極小編成ではないわけですが、よく聴かれる演奏とは趣が違っています。

 それ以外にもこの演奏、録音には色々考証、特徴があるはずですが解説の日本語訳はないので詳細は分かりません。聴いた印象はかなりゆったりしたテンポで(それでCD1枚に収まっているからカットか何かの工夫があるのか)、そのため小編成の割に明るくあたたかい空気があふれています。単に聖務日課の晩課らしいというだけでない独特の祈りの音楽という印象です。なお、この作品固有の演奏、録音上の分類は、モンテヴェルディが1610年出版の曲集に入れた楽曲以外のグレゴリオ聖歌等は挿入せず、マニフィカトは1種だけ(どのマニフィカトか明示はない)、四声部のミサも収録していません。
31 7月

シュッツのシンフォニア・サクレ 第1集  ラーデマン

170731zaシュッツ シンフォニア・サクレ 第1集 SWV.257-276

ハンス=クリストフ・ラーデマン 指揮

ドロテー・ミールズ(ソプラノ)
イザベル・ヤンチェク(ソプラノ)
ダヴィド・エーラー(アルト)
ゲオルク・ポプルッツ(テノール)
トビアス・マトガー(テノール)
フェリックス・シュヴァントケ(バス)

器楽アンサンブル
~ヴァイオリン
マルグレート・バウムガルトル
カリーナ・ミュラー
~コルネット
フリーデリケ・オットー
ジュリア・フリッツ
~リコーダー:ジュリア・フリッツ
~トロンボーン:セバスティアン・クラウゼ
~ドゥルシアン(古楽ファゴット):ジェニファー・ハリス
~テオルボ:アンドレアス・アレンド
~ヴィオローネ:マティアス・ミュラー
オルガン:ルトガー・レミー、他
 
(2016年6月12-16日 ドイツ,ポルディッツ,聖ニコライ教会 録音 Carus)

170731zb 昨夜NHK・eテレの日曜美術館を何気なく見たらBGMにバッハのマタイ受難曲が流れていました。青木繁の回なので特にマタイと関係なさそうですが福音史家の歌唱を聴いているとシュッツの受難曲を思い出しました。大バッハよりも百年早く生まれたハインリヒ・シュッツ(Heinrich Schütz 1585年,ユリウス暦:10月8日/グレゴリオ暦10月18日 ケストリッツ - 1672年11月6日 ドレスデン)の代表作は受難曲やガイストリッシェ・コーアムジーク等、ドイツ語歌詞の作品を思い出します。しかし長命だったシュッツの初期作品はラテン語の詩篇に作曲したものが多数ありました。1629年に出版された「シンフォニア・サクレ第1集(Symphoniae sacrae I) SWV 257-276」もその一つでした。

 この曲集は小編成のアンサンブルで演奏される20曲の教会コンチェルトで構成されています。ドイツ風の簡素なポリフォニーとイタリアのコンチェルト形式が融合した作風で、何の予備知識もなく初めて聴いたらシュッツではなくイタリアの作曲家による作品かと思うかもしれません。声楽だけで演奏することが多いカンツィオネス・サクレとは違って、このCDでは各声部が1、2名と器楽の組み合わせで演奏しています。過去の録音には少年合唱団らによる録音もあり、ラーデマンらによるこの編成で聴くとイタリア色がより濃く?なっている気がします。似た内容(ラテン語の詩篇が多い)、構成の作品集「クライネ・ガイストリッヒェ・コンチェルト」の方がより自由で溌溂とした作風のような気がします。

 シュッツは1607年からマールブルクで法律と同時にオルガン演奏と作曲の勉強も始め、卒業後には方伯モーリッツの奨学金を得て、1609年にイタリアに赴き、ヴェネツィアの聖マルコ寺院のオルガニストであるジョヴァンニ・ガブリエリの弟子になりました。そしてガブリエリの臨終の際して指輪の遺贈を受けています(シュッツが「師匠」と呼んだのは生涯でガブリエリただ一人であったとか)。1612年にガブリエリは1亡くなり、翌1613年にはドイツに帰り、方伯モーリッツのはからいでカッセルの第2オルガニストに就任し、1615年にはザクセン選帝候の宮廷に移って、ドレスデン宮廷楽団の楽長相当のポストに就きました。それから1628年には再度ヴェネツィアを訪れてクラウディオ・モンテヴェルディに師事しました。この作品集が出版されたのはその直後にあたり、イタリアでの修行とカッセルとドレスデンでの活動の成果が反映されているということです。

 シュッツの作品集は受難曲やいくつかを除いて内容がよく分かるタイトルじゃなく、日本語で書かれた解説が少ないのが残念です。ガイストリッシェとかコンチェルトというのも歌詞や演奏の編成を見れば察せられるとしても、このシンフォニア・サクレになるとヴェネチア楽派の交唱的な何重かの合唱作品、実態と離れたものを想像しがちです。
9 7月

シャルパンティエのテ・デウム セント ジェイムズ・シンガーズ

170709aマルカントワーヌ・シャルパンティエ テ・デウム H.146

アイヴァー・ボルトン 指揮 
セント ジェイムズ・バロック プレイヤーズ (古楽器使用) 
セント ジェイムズ・シンガーズ
ボナー, ペンドルバリー(S) 
ダヴィッドソン, デル ポゾ(C-T) 
クラークソン, グラント(Bs)
デイヴィース(T)

(1995年11月 ロンドン,セント・ジュード・オン・ザ・ヒル TELDEC)

 今日7月9日に月刊カトリック生活誌に自身の名を冠した「音楽サロン」という連載をされているペトロ 国本静三神父様が司祭叙階50周年を迎えられました。主日ミサの中で金祝のお祝いも行われました。ちょうど現在の聖堂が献堂されたのと同じ年であり、叙階式当日は激しい雷雨だったのが式が終わると晴天になったそうでした。月刊カトリック生活はその連載が続く限り購読するつもりなので、これからも活動が続けられますよう祈念します。

 ということで祝賀にふさわしい作品として、シャルパンティエのテ・デウムを選びました。ブルックナーやハイドンも曲を付けているテ・デウムは、カトリック教会だけでなく東方正教会やルター派にも伝わる賛歌の一つで、聖アンブロシウスの作詞と伝えられる古い聖歌です。長い詩の前半部分は次のような邦訳になります。

天主にまします御身をわれらたたえ、
主にまします御身を讃美し奉る。
永遠の御父よ、
全地は御身を拝みまつる。
すべての御使いら、
天つ御国の民、よろずの力ある者、
ケルビムも、セラフィムも、
絶間なく声高らかに御身がほぎ歌をうたいまつる。

170709b このCDは中古品で見つけたもので、演奏しているのがアイヴァー・ボルトンがザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席になる前の古楽アンサンブル時代の録音なので目にとまりました。実はボルトンが古楽アンサンブルを創設して活動していた当時は全然知らなかったので国内盤として出ていたのか分かりません。同じくシャルパンティエの聖母被昇天のミサとカップリングされています。作品の構成に従って11にトラック分けされ、冒頭は器楽だけの前奏曲です。これを聴いた時、CMかラジオかテレビ番組のテーマ曲、あるいは映画か何か、この作品と知らずに聴いていたはずだという記憶に残り方で、いろいろ思い返しましたが分かりませんでした。しかしブルックナーのテ・デウムのような人を寄せ付け難い威圧感とは違い、穏やかな華やかさで始まります。そして歌詞の最初、二つ目の楽曲はコーラスではなくバスの独唱で始まるのも何となくのどかです。


シャルパンティエ(1643年 - 1704年2月24日)
フランソワ・クープラン(1668年11月10日 - 1733年9月11日)
ラモー(1683年9月25日 - 1764年9月12日)

 シャルパンティエ(Marc-Antoine Charpentier 1643年 - 1704年2月24日)はフランスのバロック期の作曲家ですが、フランソワ・クープランやジャン・フィリップ・ラモーと世代は同じなのかと考えるとそこまでは記憶にありません。実際はシャルパンティエが一番年長でラモーより四十年くらい年長でした。バッハやヘンデルよりもずっと年長ということになります。
25 6月

バッハのマタイ受難曲 H.マックス、ライニッシェ・カントライ

170625J.S.バッハ マタイ受難曲 BWV.244

ルマン・マックス 指揮
ライニッシェ・カントライ
ダス・クライネ・コンツェルト

福音書記者:クリストフ・プレガルディエン(T)
キリスト:クラウス・メルテンス(Bs)
アリア:モニカ・フリマー(S)
第8曲アリア:ヴェロニカ・ヴィンター(S)
アリア:レーナ・スザンネ・ノーリン(A)
アリア:ヴィルフリート・ヨッヘンス(T)
アリア:ハンス=ゲオルク・ヴィンマー(Bs)

(1995年2月20-26日 ケルン・ドイツ放送 CAPRICCIO)

170625b 聖霊降臨、キリストの聖体も済んだ今時分は受難曲の旬からは外れますが思い出したように聴きたくなることがあります。これはヘルマン・マックスが率いるコーラス、ライニッシェ・カントライらによるバッハの四大作の録音の一つです。オーケストラは古楽器アンサンブルでソリストもプレガルディエンやメルテンスら、他の古楽系団体との共演でお馴染みの歌手が参加しています。ヘルマン・マックスについてはプロフィールがネット上でも詳しいものが見当たらず、合唱指揮者、テレマンのスペシャリストということくらいしか出てきません。しかし、このマタイ受難曲は素晴らしい演奏であり、個人のHP等で紹介されているのを時々見かけます。

170625a 聴いていて冒頭の合唱が流れるような速目のテンポであり、コーラスが小編成ながらポール・マクリーシュの録音のような鋭角的な印象は無くて、通奏低音にチェンバロを使わずオルガンとガンヴァくらいなので、リリングや聖トーマス教会らの演奏の延長のような感触でもあると思いました。それにエヴァンゲリストのプレガルディエンがいつになく緊迫感がありこの歌唱が全体の印象に大きく影響しています。また穏やかなメルテンスのキリストがちょっと対照的なので、この二人の歌唱だけでも福音書の世界がよみがえってきます。

 それにこの録音で際立つのがコーラスの見事さで、ヘレヴェッヘやコープマンの録音とも違う独特な美しさです。破裂音が突き刺さるようなきつい発声と違って、リリングのゲッヒンガー・カントライを小編成にして精緻にしたような印象です。合唱はソプラノ、アルト、テノール、バス各声部が4人ずつでこれが二組あります。ソプラノ・リピエーノは4名です。独唱の内でエヴァンジェリスト、キリストとアリア以外の登場人物はそれらコーラスのメンバーが担当しています(アキラ・タチカワという名がアルトに見つかった)。オーケストラも二組に分かれてそれぞれにオルガンが入っています。この編成からも初期稿を念頭に置いたものではなさそうです。

 器楽の演奏を聴くと古楽器なのは分かるものの強弱のアクセントをことさら強調する風でなくて、各楽器の音色も地味というかいかにも現代の楽器との違いが目立つという感じでもありません。ピッチや奏法、楽器の選択から来るものだと思いますが、ホグウッドのエンシェント室内管とちょっと似ている気がしました。全体的に、枝の主日や聖金曜日に似合う、血の通ったマタイ受難曲だと思いました。
24 6月

モンテヴェルディ「聖母晩課」 ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ

170624aモンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り 

ジュゼッペ・マレット 指揮
ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ
カンティカ・シンフォニア
ラ・ピファレージャ(器楽アンサンブル)

ロッサーナ・ベルティーニ(S)
フランチェスカ・カッシナーリ(S)
エレーナ・カルツァーニ(A)
ラファエーレ・ジョルダーニ(T)
ジュゼッペ・マレット(T)
ジャンルカ・フェッラリーニ(T)
マッシモ・ロンバルディ(T)
ダニエレ・カルノヴィチ(Bs)

ルカ・グリエルミ:オルガン
ジャンルカ・フェッラリーニ:オルガン
グイド・マグナーノ:レガール(鍵盤楽器)

(2016年9,10月 ラ・ピファレスカ イタリア,ピネローロ,サン・マウリツィオ教会 録音 Glossa classics)

170624b 今年はモンテヴェルディ(Claudio Giovanni Antonio Monteverdi 1567年 *5月15日洗礼 - 1643年11月29日)の生誕450年の年なので代表作の一つ、「聖母マリアの夕べの祈り」も新録音が出てきています。これは声楽アンサンブルの「ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ」とジュゼッペ・マレットが率いる声楽アンサンブル「カンティカ・シンフォニア」と器楽アンサンブルの「ラ・ピファレージャ」らによる共演です。マレットはコンチェルト・イタリアーノやラ・ヴェネクシアーナのメイン・メンバーとして活躍していて、その他も有名古楽アンサンブルからメンバーが参加した複雑な構成のようです。ということで男声のみとか修道院聖歌隊らによる演奏ではなく、プロの古楽演奏者の精鋭が集まったものです。

 聴いてみると比較的ゆったりしたテンポで朗々とした歌唱が印象的です。合唱、合奏の中からオルガンの音色がよく通って聴こえるのとの相乗効果か、聖務日課の音楽であることが強く印象付けられます。これに似たタイプとしてはロベルト・ジーニらの録音と似た印象です。逆に歯切れのよいガーディナーの再録音とかとは対照的な感触です。器楽の方も名手が集まっているのならもっと派手な演奏になりそうなところですが、終始祈りの音楽を志向しているようで最近では珍しいタイプかもしれません。

170624 この作品固有の演奏分類としては、グレゴリオ聖歌等のアンティフォナを加えずにモンテヴェルディが1610年に出版した曲集の楽曲だけを演奏しています。マニフィカートは7声部のものと6声部のものを二種類収録しているのが珍しい点ですが、4声部のミサは晩課とは違うので含んでいません。6声部のマニフィカトは当然歌詞は7声部と同じですが、オルガンと通奏低音だけという地味な編成なので「聖母晩課」の想定していた用途、演奏される場面が想像されて興味深いものです。つまり、7声部のマニフィカトは貴族の城館、広間等で演奏されることを念頭にし、簡素な6声部のマニフィカトは修道院の聖堂等を想定したとされ、マニフィカト以外の部分もそれに準ずる編成に出来るというわけです。

 通常はマニフィカトを7声部を採用しているのでそれ以前の部分も相応の楽器を加えた壮麗なスタイルになっています。この録音のように6声部のマニフィカトを聴けると後者、修道院等で演奏された場合を想像しやすくなると思います。モンテヴェルディの「聖母晩課」も謎、不明な点が少なからずあるので現代は研究、考証がどうなっているのだろうかと思います。

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