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続・今でもしぶとく聴いてます

2010年04月

9 4月

ルチア・ポップのガブリエル ハイドン・天地創造/ドラティ盤

・ハイドン オラトリオ「天地創造」 アンタル=ドラティ 指揮 ロイヤルPO、ブライトン・フェスティバル合唱団 他

 ルチア・ポップ:ガブリエル(ソプラノ)、ヴェルナー・ホルヴェーグ:ウリエル(テノール)、ラファエル:クルト・モル(バス)、イブ:ヘレナ・デーゼ(ソプラノ)、アダム:ベンジャミン・ラクソン(バス)(1976年録音 DEC)                                          

                                  

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  2月、3月と金曜日はバッハの受難曲を連続して取り上げてきましたので、4月は天地創造にします。月曜はブルックナー、水曜はクレンペラー、金曜は宗教曲、日曜はのだめカンタービレに登場する曲、という4つの分類に振り分け、隔週で2つずつ交互に取り上げ、火・木・土は発作的に思いつけば投稿しようくらいに考えていましたが、なし崩しで毎日更新してきました。

 ハイドンのオラトリオ天地創造は、彼の最晩年の作品で104番までの交響曲を作曲した後に手掛けた作品です。イギリス旅行中に、ヘンデルが作曲するはずだった旧約聖書とミルトンの失楽園からの台本を、帰国後にドイツ語訳してもらい作曲したものです。典礼用の曲ではなく、ヘンデルのオラトリオ同様演奏会向けの作品ですが、冒頭からしばらくは創世記の、天地創造の描写に作曲されています。第1曲は「混沌」の描写のオーケストラ曲、第2曲は「光の創造」の独唱、合唱で、その辺りは聴きどころの一つです。「光あれ」という静かな合唱に続き、「すると光があった」の” Licht ”という語句の大合唱は効果的です。初演時にハイドンがその個所で、天を指して「あそこからだ!」と叫び興奮し過ぎて退席したと伝えられています。

 この曲は、奈良市でアマチュアの合唱団の公演で聴いたことがあり、混沌のところ等は初演時のハイドン程ではありませんが感動的でした。曲は光に続き地や水、生物が生み出されて行き、人間も登場し、まだ旧約聖書の陰惨な事件が出るまでの段階で終わっているので、爽やかに、清々しくフィナーレを迎えます。合唱曲の内の一曲は、日本のプロテスタントの合同教会でも「はてしも知られぬ~」で始まる讃美歌として使われていたことがあるようで、かなり有名な曲です(会員ではないので詳しくは分かりません)。

 ルチア・ポップが参加しているので買ったCDですが、指揮者のドラティはハイドンの交響曲全集を完成させていて、ハイドン演奏には念が入っています。オーケストラの響きも重厚さよりも、弾むような美しさが際立ち、生まれたばかりの世界という台本の設定に似つかわしい演奏に感じられます。ルチア・ポップは、天地創造のクーベリック、バーンスタイン等の録音にも参加していますが、テンポや録音等の面でもこのドラティ盤が一番魅力的な歌唱を聴けるのではないかと思います。

~~~~~WANTED~~~コッホ盤・天地創造・旧録音~~~~~

 ヘルムート・コッホ指揮 ベルリン放送交響楽団(東ベルリン)の天地創造は、何となくこの曲の定盤になっていました。そのコッホの天地創造ではなく、旧録音の方を、昔引越しを機にCDを大量処分した時に手放してしまい、今頃になってやっぱり聴きたいと思い出しています。テノールがシュライアーではなく、 ゲルハルト・ウンガーが歌っている1960年頃の録音です。さだまさしの歌に血液型で「夜中に稲荷寿司がどうしても食べたくなる」症状が出てきますが、廃盤と分かってなおさら聴きたくなってきます(別に深刻に思っているわけでは当然ありません)。テオ・アダムの声も若く張りがあります。

 (写真は、背が低い遅咲きの桜で有名な御室仁和寺の近くの庭樹。渋滞を避けて、電車で外回り中に見つけました。御室桜はまだ三分咲きと門の所に掲示がありました。お昼に仁和寺に寄るつもりがまだ三分咲きであてが外れました。御室桜は、鬼平犯科帳のエンディングや剣客商売のオープニング等にも登場していました。)

3 4月

実に復刻! Easter on Mount Athos(アトス山の復活祭)

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 世界遺産のひとつ、ギリシャにありますアトス山の修道院群で録音されました「アトス山の復活祭」というアルバムが1970年代末頃に国内でも出ていました。ドイツのアルヒーフから3枚完結シリーズで出ていたようですが、一枚だけ持っていました。アトス山の修道院は、東方正教会の修道院で、ローマカトリックの修道院とは異なり小規模な庵のよなものが多数集まっていて、録音当時は電気も無く、ほとんど中世のような生活だったようです。

 このアルバムは、クセノフォントス修道院で1978年3月25日の聖土曜日の夜(LPで全3枚、CDで全2枚の中には他に土曜の朝、日曜の朝夕の典礼も収められている)に文字通り実況録音されたものです。歌われる聖歌は、西欧のグレゴリオ聖歌とは全く異なり、単純ながら力強い響きです。日本にも神田ニコライ堂があるように、東方正教会があり、自治教会・日本正教会として活動しています。普段はどういう聖歌が使われているのか分かりませんが、このアルバムの歌は多くの日本人にとっても、全く非日常の響きに感じられるだろうと思います。                

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 復活徹夜祭の録音の中で、鐘の音と、シマンドラという打楽器が非常に効果的で、復活と言う神秘を象徴的に現しています。シマンドラは、薄い木材と金属片で出来た打楽器で、静寂を破るように鐘が打ち鳴らされるのに続き、断続的に振り鳴らされて、死と命の戦いの勝利を象徴しています。バッハの復活祭オラトリオは、空になった墓の場面を舞台としていたはずで、厳密には「復活後の」オラトリオになり、改めてこの単純な響きが見事にキリストの復活を表現していることに驚かされます。 

 このアルバムは、最初は3枚シリーズだということを知らず、後に3枚組LPが、CD2枚に完全復刻されていることが分かりました。輸入盤しか無く、15年程経ち、ようやく入手できました。アルヒーフからは、「聖地のクリスマス音楽」「グレゴリオ聖歌 その伝統の地を訪ねて」という類似シリーズがあり、これも復刻されています。このアトス山の復活祭だけはあるいは国内盤ではCD化されていなかったのかもしれません。韓国では完全版が出ていたようです。

 東方正教会の典礼は現代の日本でも長時間に及び、徹夜祭と称するなら本当に深夜、日付をまたいで行っていると聞きました。また、司祭の「ハリストス復活」という言葉に、信者が「実に復活」と答えるのが定着しているということです。

2 4月

聖金曜日に  ビクトリアの聖週間のレスポンソリウム集 

 トマス・ルイス・デ・ビクトリア作曲  「聖週間のレスポンソリウム集」 ブルーノ・ターナー、プロ・カンティオーネ・アンティクワ  (1978年録音 DHM)

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 ビクトリア(1548~1611年)は、司祭でもあり、ルネサンス末期スペイン最大の作曲家で、ローマ滞在期間中にパレストリーナにも学んだであろうと言われています。研究者には「パレストリーナを、広々として明るいイタリアの大聖堂とするならば、ビクトリアは厳粛な、深々と闇に包まれたスペインのそれだ」と、評されています。作曲した曲はほぼ全部教会音楽で、他に代表作として「6声のレクイエム」を含む「死者のための聖務曲集」があります。

 この聖週間のためのレスポンソリウム集は、エレミアの哀歌等とともに「聖週間のための聖務曲集(全37曲)」に含まれている18曲です。聖週間は、復活祭の日曜日の一週間前の日曜からの七日間を指し、特に木、金、土の三日は聖なる過越しの三日と称して重要な典礼が行われます。レスポンソリウムは、応唱、答唱とも訳せ、起源は4、5世紀まで遡れる楽曲で、元々は旧約聖書の詩編を朗誦する形式で、交互に先唱に対して応答するものでした。以後それが発展して、必ずしも詩篇に限られなくなりました。ビクトリアのこのレスポンソリウム集は、木、金、土曜の各三日毎に6曲ずつ割り当てられています。

 演奏者のプロ・カンティオーネ・アンティクワは、中世・ルネサンス期の音楽を専門にします合唱団で、男性だけで構成されています。音楽学者のブルーノ・ターナーを指揮に迎えて活動しています。この録音では通常より人数を減らし、6名で演奏しています。4声で書かれている作品(一部2、3声になる)なので、独唱者のアンサンブルといった形です。また、一曲のレスポンソリウムの歌詞の構造を「主部A」「主部B」「要約V」に分類しますと、「ABVB AB」と、実際の典礼と同じように主部ABを反復して歌い、通常のレコード録音やコンサートの時のように反復するABをカットしないという凝ったことをしています( ライナーノーツの解説による )。

 実際に聴いていますと「深々と闇に包まれたスペインの聖堂」という比喩に納得させられます(スペインもイタリアも行ったことはありませんが、深々と闇に包まれた、という件は成程と思います)。上記のヴィクトリアの代表作の「死者のための聖務曲集」のCDに、スペインのモンセラート修道院聖歌隊及び児童合唱隊による録音があります。これはプロの声楽アンサンブルではなく文字通り修道院の聖歌隊が歌っているもので、人数も多く響きも異なります。個人的には聖週間のレスポンソリウムもそのモンセラート修道院聖歌隊等で聴いてみたいところですが、この6名の声楽アンサンブルであるプロ・カンティオーネ・アンティクワの歌唱も歌詞、和訳を見ながら聴きますと、歌詞の内容が味わえて素晴らしいと思えます。先日の、ドイツのシュッツより古い時代の曲ですが、より精緻で奥行きを感じさせる曲になっています。清らかで内省的なこのレスポンソリウム集は、特に聖金曜日にふさわしい響きだと思えます。

1 4月

聖木曜日に アバド新盤/ペルコレージのサルヴェ・レジーナ

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 ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルコレージ作曲 「サルヴェ・レジーナ」ハ短調  クラウディオ・アバド指揮 モーツアルト管弦楽団、ユリア・クライター:ソプラノ (2007年録音Ar)

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 今年はイタリアの作曲家ペルコレージ(1710~1736年)の生誕300年にあたります。26歳の若さで亡くなりましたペルコレージの作品は30数曲程度とされています。宗教曲スターバト・マーテル、オペラ「奥様女中」は特に有名ですが、この最晩年の宗教曲「サルヴェ・レジーナ ハ短調」も傑作の一つです。ペルコレージは死後に急速に名声が高まり、他人の作品まで彼の作曲とされたりして、モーツアルト並みの天才とも評されたそうです。イタリア人の巨匠クラウディオ・アバドが生誕300年に合わせてペルコレージの作品を連続録音していますが、その第一回目に当たるのがこのCDで、併せて収録されていますスターバト・マーテルの方がメインのような扱いです。アバドはペルコレージに思い入れが強いらしく、25年以上前にロンドンSOともスターバト・マーテルを録音しています。サルヴェ・レジーナは、グレゴリオ聖歌にもあり、聖務日課の最後に歌われる4つのアンティフォナの一つとして有名な歌詞です。この聖歌は日本語による典礼が当たり前になりました現代の日本のカトリック教会でも何かの折に歌われる程です。また、日本語の典礼聖歌にもあります。元はラテン語ですが、日本語訳は以下の通りです。

  元后、あわれみの母、われらのいのち、喜び、希望。

  旅路からあなたに叫ぶエバの子、

  なげきながら、泣きながらも涙の谷にあなたを慕う。

  われらのためにとりなすかた、あわれみの目をわれらに注ぎ、

  とうといあなたの子イエズスを、旅路の果てに示してください。

  おお、いつくしみ、恵みあふれる 喜びのおとめマリア

 ペルコレージ作曲のサルヴェ・レジーナは、ソプラノ独唱、弦楽合奏、通奏低音のための曲で、5曲から構成されています。演奏時間は15分程度の短い曲ながら、非常に美しく祈りのような曲です。J.S.バッハの重厚で力強い曲とは対照的です。本日は聖木曜で、最後の晩餐を記念する「主の晩餐の夕べ」とも呼ばれる典礼が行われます。四旬節中のミサはグロリアが歌われない習慣ですが、聖木曜だけは歌われ、その間に鐘が鳴らされ、重苦しい雰囲気の四旬節にあって例外的に明るい空気です。このサルヴェ・レジナはどこか、そんな聖木曜日にふさわしい響きだと感じられます。

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