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続・今でもしぶとく聴いてます

2013年04月

30 4月

鈴木雅明とBCJ他 モンテヴェルディ・聖母マリアの夕べの祈り

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モンテヴェルディ  
「聖母マリアの夕べの祈り」

鈴木雅明  指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン

コンチェルト・パラティーノ(コルネットとトロンボーン)

~独唱(,聖母晩課と七声部のマニフィカト)
鈴木美登里(S)
野々下由香里(S)
緋田芳江(S)
ゲルト・テュルク(T,A)
シュテフェン・バァン・ダイク(T)
谷口洋介(T)
ステファン・マクロード(Bs)
小笠原美敬(Bs)

(1999年12月12-19日 神戸松蔭女子学院大学チャペル 録音 BIS)

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 このアルバムはモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」というよりも、1610年に出版された曲集の作品を全部集めて録音したものです。聖母晩課は七声部と六声部の二種のマニフィカトを演奏し、六声部の“ Missa In illo tempore (ミサ曲イン・イッロ・テンポレ)”も収録しています。このように網羅的な企画だけでなく演奏の編成も念が入ってます。バッハ・コレギウム・ジャパンだけでなく、コルネットの濱田芳道らコンチェルト・パラティーノも共演しています(濱田自身が指揮したこの曲の録音が複数あり、2007年・東京のライヴ録音は過去に記事投稿していた)。そのため器楽の音色も華やかな録音になっています。

 「聖母マリアの夕べの祈り」は過去記事でも触れたように謎が多く、演奏スタイルの幅が広い作品です。基本的には七声部のマイフィカトを選択して多くの楽器を加えて演奏するパターン、六声部のマニフィカトを選んで声楽とオルガン(と通奏低音か)くらいの簡素な編成で演奏するパターンを選べます。前者は貴族の館等での演奏、後者は修道院での聖務日課の姿が当てはまります。この曲を演奏する場合はそのどちらの方向、スタイルにシフトするかで色々変わって来るはずです。鈴木・BCJの演奏は上記のように前者、華やかな演奏を志向しています。

 だから、これもこの曲のCDを取り上げた過去記事で触れましたが、モンテヴェルディが作曲した楽曲だけでなく、各詩篇歌の前にグレゴリオ聖歌のアンティフォナ等を挿入するかどうかという選択の問題もありました。このアルバムでは、アンティフォナは挿入せず、1610年出版の曲集の楽曲だけを連続しています。こういった点で、鈴木・BCJ盤の志向するところが分かります。なお、合唱は各パート3名又は2名の(アルト1、2が二人ずつ)、総勢23名で独唱者も参加しています。

 実際に聴いてみると、華やかではありますが、悪い意味の派手さは感じられず、不思議に清らかな響きが印象的です。このあたりは改革長老派の教会でオルガンを弾いてきた鈴木雅明氏の影響なのか、質素な修道院の大祝日での晩課を連想させられます。余談ながら、改革長老派はカルヴァン直系の教派なので、いろんな意味でカトリック教会とは遠い風土のため、あまり聖母マリアが前面に出ることは少ないはずです(この派の礼拝に参列したことがないのであくまで推定である)。

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 このアルバムは念入りなセッション録音なので、二回に分けて投稿しようと思います(分けたところで大したことは書けないが)。実際のところ六声部のミサ曲の方も魅力的な演奏です。BCJは今年二月にバッハの教会カンタータの演奏会企画が完結して話題になりました。録音の方でも、ブクステフーデやシュッツといったドイツの作曲家だけでなく、このようにさらに古いモンテヴェルディまで手がけていました。ある新聞記事によると、ある時鈴木氏はマネージメントの事務所に呼ばれて、「六千万円の負債がある、返済を約束する文書にサインをしなければ帰さない」と言われて青くなってサインしたことがあったそうです。それは何時のことか分かりませんが、このモンテヴェルディなども興行上は苦戦しそうではないかと思え、改めて苦労がしのばれます。

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6 4月

ハイドンのテレジア・ミサ ヴァイル、テルツ少年合唱団

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ハイドン ミサ曲 変ロ長調 Hob.XXII-12「テレジア・ミサ」

ブルーノ・ヴァイル 指揮
ターフェルムジーク・バロック管弦楽団

テルツ少年合唱団
(ゲルハルド・シュミットガーデン指揮)

アン・モノイオス(S)
モニカ・グロープ(MS)
ヴォルフガング・ビュンテン(T)
ハリー・ヴァン・デル・カンプ(B)

(1996年9月 バート・テルツ 録音 Sony Classical)

 季節、気候の影響なのかここ何週間かはブルックナーよりもマーラー、ベートーベンよりもハイドンが何となく慕わしい気分です。ブルーノ・ヴァイルはアメリカの音楽学者ロビンズ・ランドン(ハイドン研究で著名な権威者らしい)が監修した交響曲の録音企画がありました。当初は全曲録音を目指したようですが、疾風怒濤期の大半とパリ交響曲などを発売したところで中座し、そのうちにランドン氏が他界しました。最近は古楽器オケのカペラ・コロニエンシス( Cappella Coloniensis )を指揮したザロモンセットのアルバムが出ていました。

 これはブルーノ・ヴァイルターフェルムジーク・バロック管弦楽団テルツ少年合唱団らによるハイドン(1732-1809)の宗教音楽作品を集めた廉価箱の中の一枚です。かつては国内盤新譜で一枚ずつ出ていたものです。オラトリオの天地創造の他に下記のような曲が入っています。ヴァイルのCDは過去にシューベルトのミサ曲( 第1番第2番ドイツ・ミサ )、ベートーベンの田園交響曲を取り上げていました。

ミサ曲第9番 Hob.XXII-9「戦時のミサ(太鼓ミサ)」・1796年
ミサ曲第10番 Hob.XXII-10「オフィダの聖ベルナルドの讃美のミサ」・1796年
ミサ曲第11番 Hob.XXII-11「ネルソン・ミサ」・1798年
ミサ曲第12番 Hob.XXII-12「テレジア・ミサ」・1799年
ミサ曲第13番 Hob.XXII-13「天地創造ミサ」・1801年
ミサ曲第14番 Hob.XXII-14「ハルモニー・ミサ」・1802年
サルヴェ・レジナ ト短調 Hob.XXIIIb-2
モテット「天より来たりし祝福された恋人たちよ」 HobXXIIIa:G9
モテット「Insanae et vanae curae」 Hob.XXI:1 No.13c
敬うべき秘跡のモテット Hob.XXIIIc:5 a-d
テ・デウム ハ長調 Hob.XXIIIc-2

 今回のCDはテレジア・ミサとネルソン・ミサを一枚に収録したもので、新譜時もこの組合せのようでした。二曲とも明るい曲で演奏時間が三十分程度なので、実際にミサ聖祭の中で使えそうな感じです。ただ、グロリアだけが十分強と突出しています。演奏も、上記のランドン氏が「楽譜に忠実」なこと、「重々しさからの解放」に衝撃を受けたと解説で紹介されているように明晰で生きいきとしています。古楽器オケながら、あまり強弱のアクセントが強調されないのも特徴的です(田園交響曲もそうでした)。

 少年合唱を起用したのも効果的だと思います。最初に季節、気候のめぐりあわせでハイドンに好感と書いていましたが、まさしくその気分にピッタリでした。ヴァイルの指揮は交響曲の録音ならよりはっきりと分かるだろうと思います。

 ところで、監修の音楽学者ランドン氏はアメリカ生まれ、指揮のブルーノ・ヴァイルはドイツ生まれでウィーンのスワロフスキー門下、ターフェルムジーク・バロック管弦楽団はカナダのトロントを本拠地とする団体、テルツ少年合唱団は南ドイツ、アルプス山中のバートテルツで1956年に設立された合唱団、といった具合にそれぞれ直接的には強い結びつきが無く、ハイドンの作品を演奏するために一致して結集している点が興味深いものがあります。

 このテレジア・ミサは1799年に完成されたのか出版されたのか未確認ですが、どちらにしても24年若いモーツアルト(1756-1791年)の没後のことで、ハイドンが67歳の年です。また、オラトリオ・天地創造と同じころの作品です。

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1 4月

高田三郎・雅楽の旋法による聖母賛歌 エリザベト シンガーズ

高田三郎 同声合唱のための 雅楽の旋法による聖母賛歌

マリアは天に上げられた “Assumpta est Maria”
恵みの母、マリア
“Maria Mater”
あわれみの母
“Salve Mater misericordiae”
マリアよ、あなたは美しい
“Tota pulchra es”

松原千振 指揮
エリザベト シンガーズ 

(2012年3月8-9日 エリザベト音楽大学 ザビエルホール fontec)

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   このCDは高田三郎の作品をエリザベトシンガーズが歌ったアルバムですが、お馴染みの典礼聖歌だけでなく、ラテン語の歌詞を日本の伝統的な旋律に乗せた作品「 雅楽の旋法による聖母賛歌 」が収録されています。日本の有名な讃美歌の多くは、外国の讃美歌に日本語の歌詞を付け替えたものが多いはずです。しかしこの作品は制作過程が逆とは言えないけれどかなり異なるというか、歌詞と旋律・音楽の関係を考える上で重要な事柄を示すものだと言えるでしょう。

 過去に取り上げた高田三郎作曲の「やまとのささげうた」 は、浄土宗の経文、礼賛、詠歌の旋法、旋律特徴を取り入れて作られたのに対して今回の聖母賛歌はそのタイトルの通り、雅楽の「催馬楽」、「神楽歌」を研究してその旋律特徴を取り入れた作品です。ローマのサンタ・チェチリア協会から委嘱を受け、1958年から翌1959年にかけて作曲され、同協会の“ Lourdiana ” に収録されました。聖母賛歌とは言っても演奏が難しそうで、これまで一度も聴いたことがありません(やまとのささげうたは、ミサで使われることもあった)。このCDで最初聴いた時は日本語の歌詞だと思いこんでいたので驚きました。歌詞がラテン語だからどうだと言えそうですが、切支丹の禁教がもう少し緩くて特区のような制度で限定的に認められでもしていれば、その昔にこれに似たマ聖母賛歌が生まれたかもしれないと想像できて感慨深いものがあります。聴いていると何か失われたものを取り戻したような気になりました。

 ただ、そもそも雅楽自体が義務教育の音楽の時間か、ドラマ「不良少女と呼ばれて」くらいでしか聴いたことが無いので、「催馬楽」も「神楽歌」も分かりません。しかし、ラテン語の聖歌歌詞が得も言われない香気帯びて響き、感銘深いものがあります。「日本的」とはどういうものなのか、説明できませんが詠歌等に基づいた「やまとのささげうた」よりも、さらに日本的な空気なのではないかと思いました。

 このCDのタイトルは「主の祈り」となっていて、トラック1に収録された典礼聖歌の「主の祈り」を充てています。雅楽の旋法による聖母賛歌と最後の「平和の祈り(アッシジの聖フランシスコ)」以外は、普段教会内で耳にする曲が入っています(口ぱく族でも知っている)。ところが、演奏者が変わると雰囲気がかなり変わります。これらの歌は今回のようなプロだけでなく、アマも含めて複数の団体が録音していますが、最大22名で歌うこの録音は徹底的に蒸留されたような澄んだ響きに感心させられます。「雅楽の旋法による聖母賛歌」は「同声合唱のための」となっているので、男声だけで歌えば(可能なら)どうなるか聴いてみたい気がしました。

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