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続・今でもしぶとく聴いてます

モンテヴェルディ・聖母晩課

8 12月

モンテヴェルディ聖母晩課 ブリュノ・ボテルフ他/2017年

1812z08bモンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り~声楽と通奏低音のみによる17世紀式解釈

ブリュノ・ボテルフ(音楽監督、テノール)
ルドゥス・モダリス(声楽アンサンブル) 
~器楽(通奏低音)~
アンヌ=マリー・ブロンデル(オルガン)
ジャン=リュック・ホー(チェンバロ)
フランク・ポワトリノー(バス・サックバット)
ヴォルニー・オスティウ(バス・コルネット)
メリュジーヌ・ド・パ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

(2017年10月 フランス,プランザック,サン・シバール教会 録音 Ramee)

1812z08a 12月8日は段々と過去の出来事として存在が薄くなる対米英開戦の日(豪、蘭もか)、それから聖母の祝日の一つ「無原罪の聖マリア
」でした。私的にはそれ以外にちょっと節目の日にあたります。今日の昼、牛カルビ定食を食べにMつ屋へ入ったところ、どこかしら厨房とスタッフの雰囲気が違う気がしました。やがて「~(人名)ちゃん、これ洗ってないでしょ」という声が聞こえてきました。ラーメンのチェーン店なら「~ぼけえ」とかの怒声がきこえることもあったので、それとはえらい違いのなごやかさでした。憶測、推測だけながら、その職場は障碍者を雇用しているらしくて、しかも身体ではなく知的な方のように見えました。身内にその境遇の者が居るので何となく察せられ、店長なのかリーダーなのか現場を取り仕切っている人の配慮らしきものも感じられました。自分以外にその時に店内に居た客は皆ふた癖くらいありそうな外見の人間ばかりでしたが、ごく静かに食事をして出て行き平穏そのものでした。毎日がこの調子ならと思いつつ店を出ました。

 過去記事で聖母の祝日にはモンテヴェルディ作曲、「聖母マリアの夕べの祈り(聖母晩課)」を扱ってきたので今回も最近聴いた画期的な新録音をとりあつかいます。CDの広告、紹介に「
声楽と通奏低音のみによる17世紀式解釈」と銘打たれているように最小編成で演奏した録音で、領主、貴族の城館で演奏することを想定したのではなく、修道院の小聖堂くらいで簡素に演奏するスタイルを徹底しています。ヴァイオリン等の弦楽器を使っていない編成はこれが初めてのようです。

 この作品の演奏、録音するパターン分類を確認すると、モンテヴェルディの作曲した曲(1610年出版の作品集)だけではなく、グレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入しています。それだけでなく、フレスコバルディ( Girolamo Alessandro Frescobaldi 1583-1643 )のオルガン曲等も後半で取り入れています。“ Fiori Musicali(音楽の花束) ” からトッカータ・アヴァンティ・イル・レチェルカールと第44曲 Recercar con obligo del cantare la quinta parte senza Tocarla を詩篇147 " Lauda Ierusalem " の次に入れています。

 
声楽は独唱も含めて13人だけでその人数で全楽曲をカバーしています。少年を高音に起用しないで混声のアンサンブルで歌っているので、当時の修道院等での演奏を再現するだけということでもなさそうです。通奏低音には金管楽器とチェンバロが加わっているのでそこそこにぎやかです。無伴奏の声楽に金管が加わるのはスペインの作曲家、ビクトリア等の作品を演奏する際にもとられる編成ですが、チェンバロの代わりにもう一台オルガンを加えるなどとした方がより徹底した編成になったと思いました。

 この作品は冒頭でモンテヴェルディの代表作のオペラ、「オルフェオ」のファンファーレで始まるのが特徴ですが、そのお馴染みのフレーズとはちょっと違うもので開始するので少し驚きます。全体的にはモンテヴェルディより前のルネサンス期の教会音楽の方に近づく響きになるかと思ったらそれほどでもなく、ちょっと微妙な印象です。それぞれの楽曲は興味深いと思いつつも、挿入されるグレゴリオ聖歌のアンティフォナとの対比であまりメリハリが付かないのとチェンバロの音の影響からそういう印象になるのではと思います。ともかく画期的な編成、スタイルでの録音であることに違いはないはずです。
15 8月

モンテヴェルディの聖母晩課 ヘレヴェッヘ再録音/2017年

1808z15aモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

フィリップ・ヘレヴェッヘ 指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(合唱、アンサンブル) 

ドロテー・ミールズ(S)
バルボラ・カバートコヴァー(S)
ベネディクト・ハイマス(T)
ウィリアム・ナイト(T)
レイナウト・ファン・メヘレン(T)
サムエル・ボーデン(T)
ペーター・コーイ(Bs)
ヴォルフ・マティアス・フリードリヒ(Bs)

(2017年8月12-14日 アシャーノ,聖フランシスコ教会 録音 Phi Cl)

 今日8月15日の朝、少し早めに伏見区内の外環状線からJR山科駅南で三条通(府道四ノ宮四塚線)に入るルートで通勤していると元旦なみにガラガラでした。やっぱりお盆の8月15日は
ほとんど休祝日並みに定着しています。お盆にはご先祖の霊が自宅(生前の実家か)へ帰ると言われながらこの期間に墓参しています。それからご先祖のおかげ、という風に前向きに感謝の念を口にしながら、逆に不遇にあっても「こんな境遇なのは先祖が下手うったから」という類の恨み言はほとんど表に出てこないのは一種の美徳かもしれません。さらに、近親者が亡くなった際には「天国の誰それ」と宗旨に関わりなく「天国」と口にしがちです。わざわざ煉獄とか黄泉、ましてや地獄とは言い難いというだけでなく、なんとなく共通の精神風土のようなものを感じます。

1808z15b 「聖母の被昇天」の8月15日は過去記事でモンテヴェルディ「聖母晩課」をはじめ、聖母に関わりのある作品を取り上げていました。このモンテヴェルディ「聖母晩課」は、ヘレヴェッヘが30年以上経てから再録音したもので、今回は声楽はほぼコレギウム・ヴォカーレ・ヘントのみで演奏しています。前回の1986年録音時には同じくヘレヴェッヘのアンサンブルであるシャペル・ロワイヤルとサックバットのアンサンブル、「トゥールーズ・サックブーティエ
」を加えていました。

 この作品を録音する場合のチェック・ポイントを確認すると、モンテヴェルディが1610年に出版した作品集に入った楽曲だけでなく、グレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入して演奏しています。マニフィカトは一種類だけで6声部のミサは当然省いています(そもそも聖務日課・晩課とは違うから)。それから声楽は混声、器楽は金管等み加えているので修道院の聖堂で少人数で演奏する形態ではなく、どちらかと言えば貴族の城館等を想定した規模のようです。

 旧録音から30年以上経って旧録音から根本的にとまではいかなくても、大幅に変わったかどうか分かりません。聴いていて時々思ったのは、より後年に作曲された作品を演奏する時のスタイルのようなものを感じられ、古楽独自の演奏スタイルをより前面に出すという風ではない印象です。逆にというのか、歌詞、晩課の音楽という点を強調しているようでおおらかな祈りの音楽を感じさせます。
16 7月

モンテヴェルディ 聖母晩課 ウィルソン、ラ・カペラ・ドゥカーレ

1807z16モンテヴェルディ 「聖母マリアの晩課」

ローランド・ウィルスン 指揮
ラ・カペラ・ドゥカーレ(古楽声楽集団)
ムジカ・フィアータ(古楽器使用)

モニカ・マウフ(S)
ドロテー・ミールズ(S)他
ハンス・イェルク・マンメル(T)他
シュテファン・シュレッケンベルガー、他(Bs)

(2010年10月22日 ケルン,聖三位一体教会 ライヴ録音 Pan Classics)

 7月16日は「カルメル山の聖母」の記念日でした。ということは世界中の修道院の中にはモンテヴェルディの「聖母晩課」を演奏したことがあったのかどうか。1610年に出版されたモンテヴェルディの曲集には同作品と六声部のミサ曲がおさめられていました。これはマントヴァの宮廷からローマ教皇庁への転職、息子の教皇庁神学校への入学を願ったモンテヴェルディが、自身の作曲技法の集大成的に作曲したものを出版したのではないかという見方もされています(歌劇「オルフェオ」のファンファーレが聖母晩課の冒頭に出て来るのは名刺代わりか)。その「聖母晩課」は日本のクラシック音楽フアンの間ではバッハのマタイ受難曲やロ短調ミサ程は有難がられていないようですが、海外では定期的に新譜が出続けていてそれらにまさるとも劣らないようです。

 これは英国出身のローランド・ウィルスンが結成した古楽アンサンブル、ムジカ・フィアータと声楽アンサンブルのラ・カペラ・ドゥカーレらを指揮した録音で、2010年に録音していたものが今年になって日本語解説付きで発売されました。ウィルスンはトランペットとツィンク(コルネット)を学んだ後ドイツへ渡り、1976年に
ムジカ・フィアータを結成しました。その後フリーダー・ベルニウスのプロジェクト、録音に参加していました。その後1992年に古楽の声楽作品にも対応できるようにラ・カペラ・ドゥカーレを結成しています。

 CDの解説によると楽隊1~4と通奏低音の五つのグループ分けて表記されてあり、1と2が声楽(
ラ・カペラ・ドゥカーレ)、3と4が器楽アンサンブルでした。こういう構成ならヴェネチア楽派のように聖堂の離れた場所に陣取った奏者が交唱するような壮麗なものになっているかと思ったら、実際に聴くとそうでもなくて、しめやかに歌われている趣なのでちょっと予想外でした(勝手に期待しただけ)。声楽の方は6名ずつの二群という構成で、そんなに大音量で朗々と響くといった風ではありません。器楽アンサンブルも一群が6名で、片方はトロンボーン等の管楽器だけという構成で、ツィンク(木管コルネット)が3人ということもあってか甲高くならず、晩課らしい落ち着きも感じられます。

 CDの構成は一枚のCDにモンテヴェルディが作曲した聖母晩課の楽曲だけを収録しています。だからグレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入したり、特定の聖母の祝祭日を念頭に置いて構成するということはしていません。また当然ミサ曲も収録していません。ただ、解説によると音程についての考察、移調の可能性の分析がなされています(専門的なので引用もしない)。
1 1月

モンテヴェルディ 聖母晩課 バット、ダニーデン・コンソート

1801z01bモンテヴェルディ 聖母マリアの晩課

ジョン・バット 指揮
ダニーデン・コンソート
ヒズ・マジェスティーズ・サクバッツ&コルネッツ

ジョアン・ラン:S
エスター・ブラジル:S
エイミー・リドン:A
ロリー・マクリーリー:CT
ジョシュア・エリコット:T
マシュー・ロング:T
ニコラス・マルロイ:T
ピーター・ハリス:T
ピーター・ハーヴェイ:Bs
ウィリアム・ゴーント:Bs

(2017年3月6-9日 エジンバラ,グレイフライアーズ教会 録音 Linn Records)

1801z01a 新年あけましておめでとうございます。今年も三分割のブログくを再統合、一致させるでもなく続ける予定です。本年もよろしくお願いいたします。元日の今朝はいつになく切れのある快適な目覚めでした。郵便配達の音を聞いたのが8時過ぎくらいで例年より早めで、雪も雨も降っておらず穏やかな朝です。1月1日はまだクリスマス期間、降誕節のうちで、その上に1月1日は「神の母聖マリア」の日でした。クリスマスから八日目にあたりイエス・キリスト命名の日にあたります。ということでモンテヴェルディの聖母晩課を取り上げるわけです。

 これは昨年3月に録音されたジョン・バットらによる新しい録音です。バットと言えばメサイアやバッハの作品で初演稿や初演時の形態を再現する等画期的な企画で注目されていました。しかし今回の聖母晩課はグレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入したりせず、モンテヴェルディが1610年に出版した作品集の「聖母晩課」のみ(四声部のミサは当然録音しない)を連続演奏したシンプルな内容です。しかも比較的小編成で演奏しているのでいつもの彼ららしくなくて拍子抜けしそうです。演奏する楽曲、編成の面ではクイケンとラ・プティットバンドの録音と似ています。

 しかし演奏はかなり素晴らしくて、とにかく終始優雅にして美しい音楽なので作品の素晴らしさを再認識させられます。特に聖務日課、典礼のための音楽ということを強調する風でもなく(少なくともそう思えた)、音楽作品としての美点を練り、磨きあげるという印象です。それに目立ったのが金管楽器の響きがバックで通奏低音的に覆っているように聴こえ、これが独特の響き、魅力を醸し出しています。ヒズ・マジェスティーズ・サクバッツ&コルネッツと共演しているのはこれが狙いなのだと思いますが、こうなるとバットのこと、想定する演奏機会、場所があるのだろうと想像できます(日本語解説が無いので何とも言えない)。とにかく、モンテヴェルディの聖母晩課をアンティフォナ等を加えないタイプの演奏としては屈指の演奏じゃないかと思いました。

 ジョン・バットは音楽学者、鍵盤楽器奏者からスタートしているということですが、スコットランドではなくイングランドのソリハル出身でした。教会のオルガニストや合唱指導からキャリアをはじめたのではないようです(ライプティヒの聖金曜日に演奏されたバッハのヨハネ受難曲を再現した録音が感銘深く、実は教会系の音楽家と思ったもので)。
8 12月

モンテヴェルディ 聖母晩課 マルコ・メンコボーニ/2009年

17z1208aモンテヴェルディ 聖母マリアの晩課

マルコ・メンコボーニ 指揮、第1オルガン 
アンサンブル・カンタール・ロンターノ

リア・セラフィーニ(S) 
ロベルタ・マメリ,フランチェスカ・ロンバルディ(S) 
アージア・ダルカンジェロ(児童独唱) 
エレーナ・カルツァニーガ(コントラルト) 
アンドレーア・アルリーヴァベーネ(CT)
ヤーコポ・ファッキーニ(CT) 
シモーネ・ソリーニ(T)
ラファエレ・ジョルダーニ(T)
ルーカ・ドルドーロ(T)
ジャンパオロ・ファゴット(T) 
マウロ・ボルジオーニ(BR)
マルコ・スカヴァッツァ(BR) 
マッテオ・ベッロット(BS)
ヴァルテル・テストリン(BS)、他
*他に合唱、聖歌斉唱の隊があるが独唱者と一部兼ねている

(2009年12月3-4日 マントヴァ,サンタ・バルバラ大聖堂 録音 PANCLASSICS)

 今日12月8日と言えば「ニイタカヤマ ノボレ 一二〇八」の真珠湾攻撃を敢行した日でした。ラジオの報道では「大いなる歴史の夜は明けた」で始まる仰々しい文言だったとか(どこぞの将軍様の国の報道を思い出させる)。それとは関係なくローマカトリック教会の典礼暦では「無原罪の聖マリア」という聖母の祝日の一つです。単なる偶然のことながら8月15日の終戦記念日は「聖母被昇天」の大祝日にあたり、太平洋戦争の始めと終わりの日が両方とも聖母の祝日にあたっていました。とにかく過去記事では聖母の祝日にモンテヴェルディの聖母晩課を聴いていたことがあったので、今年発売されたCDの中からマルコ・メンコボーニ率いるアンサンブル・カンタール・ロンターノらの録音を聴きました。

17z1208b このCD、何年か前に日本流通仕様の発売予告がされてから何度も延期の告知があり、出る出る詐欺のように一年以上が過ぎて立ち消えになっていました。輸入盤の方も品切れ状態が続き今年初めにようやく発売されました。付属冊子の解説(メンコボーニ自身が説明している)の日本語訳からはメンコボーニがこの作品を演奏するにあたって画期的なやり方を確立していることが分かりますが、それ以前にモンテヴェルディが仕えたマントヴァ公の宮廷があった街の教会で演奏しているのが注目です。そのサンタ・バルバラ大聖堂の大オルガンが復元されていて、それも演奏に参加し、合計三台のオルガンが加わる編成です。それに天井の高い聖堂の空間をよく実感できる音質になっています。

 この作品の演奏、録音に際しての分類を確認すると、1610年に出版された曲集に共におさめられた四声部のミサ曲は含まず、モンテヴェルディが自身が作曲した「聖母晩課」の各楽曲の間にグレゴリオ聖歌のアンティフォナを挿入しています。マニフィカートで終わらずに、短い祈祷の言葉等も続けて加えているのが珍しいパターンです。しかし、晩課の典礼を完全に再現している風ではなく、あくまで演奏会という形式であり、最後には拍手が入っています。
 
 メンコボーニによると、今回「聖母晩課」を演奏するにあたって各楽曲のはじめから終わりまでテンポや拍子を変えないで演奏するという方針を、作曲者自身が表現上の必要から変化させている箇所を除いて貫いています。こういう方針で演奏した最初の機会は2008年6月、アンコーナのチリアアーコ大聖堂でのことだったので、この録音の一年半くらい前ということになります。従来は歌手らはそれぞれテンポを変えて(時に自由過ぎるほどに)歌っていたから最初は当惑していたそうで、そのため時間をかけて話し合って打ちとけたとメンコボーニは振り返っています。その他、歌詞についてラテン語聖書(ヴルガータ
だけでなく、語句によっては原典(ヘブライ語)にまでさかのぼって初めて合点が行くようなものもある等(定説を得ていないけれど) 、画期的、踏み込んだ解釈を行っています(詳しくは解説文にある)。

 こうした演奏方法によるためか、ゆうたりとしているようで遊水地に川が流れ込んで渦を巻いているような独特の響きで、過去の演奏の中にも似たものを思い付かない内容でした。器楽はオルガン3台の他、木管コルネット3人、横笛フルート2人、リコーダー2人、ショーム2人、サックバット5人、ヴァイオリン3人、ヴィオラ2人、ヴィオローネ1人、テオルボ2人という編成です。そこそこの人数なのに部分的にはほとんどオルガンだけが目立つところもあります。
13 8月

モンテヴェルディの聖母晩課 ライニッシェ・カントライ

1708z13bモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

ヘルマン・マックス 指揮
ライニッシェ・カントライ
S1:ヨハンナ・コスロフスキ
S1:マルティナ・リンス
A1:カイ・ウェッセル
A2:アルノ・タベルトショファー
T1,2:ウィルフリード・ジョッヘンス
T1:マルクス・ブルストシャー
T3:ラインハルト・ディンゲル=シュルテン
Bs1:ハンス=ゲオルグ・ウィンマー
Bs2:ステファン・シュレッケンベルガー

~通奏低音
ガンバ:ヒルデガルト・パール
ヴィオローネ:ロバート・サガッサー
テオルボ(chitarrone):リー・サンタナ
オルガン:リーン・ヴォスクイレン

(1990年11月5-9日 ドルマーゲン,クロスター・クネヒトシュテデンのバジリカ 録音 EMI)

1708z13a 8月14日は聖コルベの記念日、翌15日は聖母被昇天の大祝日、コルベ師は聖母への崇敬、信仰が強く深かったのでこの二日は特に聖母マリアに縁のある日と言えます。そういうこともあって過去記事で今時分に聖母マリアに関わる楽曲を選んでいました。今年はモンテヴェルディのメモリアル年なので聖母晩課のちょっと古い録音を取り出しました。といってもこのCDは最近まで存在を知らなかったもので、「名曲名盤500(レコード芸術編)」の最新版にリストアップされているのを見て始めてヘルマン・マックスがこの作品を録音していたのを知りました。

 マックスがテレマンのスペシャリストだとしてもその録音を聴いたことがなく、かろうじてバッハのCDしか聴いていませんでした。これは海外のEMIの廉価シリーズ、バロックスペシャルという企画に入っていたものでした。CD1枚だけに収録しているこの録音は、よく見ればこの演奏者がこういう作品を、という珍しさだけででなく、演奏内容もちょっと珍しいものでした。

 器楽アンサンブルが通奏低音だけという簡素なもので、そのため通常は冒頭から聴こえてくる金管楽器が入っていない編成です。これは作品自体が貴族の城館のサロン等の広い場所から修道院の聖堂、小さな館といった様々な場所で演奏できるように、編成、規模に幅を持たせてある(従ってマニフィカートは7声部と6声部の二種備えている)、という性質に対応したものです。6声部のマニフィカートを採用する場合はオルガン伴奏だけということもあるので、この録音はそこまで極小編成ではないわけですが、よく聴かれる演奏とは趣が違っています。

 それ以外にもこの演奏、録音には色々考証、特徴があるはずですが解説の日本語訳はないので詳細は分かりません。聴いた印象はかなりゆったりしたテンポで(それでCD1枚に収まっているからカットか何かの工夫があるのか)、そのため小編成の割に明るくあたたかい空気があふれています。単に聖務日課の晩課らしいというだけでない独特の祈りの音楽という印象です。なお、この作品固有の演奏、録音上の分類は、モンテヴェルディが1610年出版の曲集に入れた楽曲以外のグレゴリオ聖歌等は挿入せず、マニフィカトは1種だけ(どのマニフィカトか明示はない)、四声部のミサも収録していません。
24 6月

モンテヴェルディ「聖母晩課」 ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ

170624aモンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り 

ジュゼッペ・マレット 指揮
ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ
カンティカ・シンフォニア
ラ・ピファレージャ(器楽アンサンブル)

ロッサーナ・ベルティーニ(S)
フランチェスカ・カッシナーリ(S)
エレーナ・カルツァーニ(A)
ラファエーレ・ジョルダーニ(T)
ジュゼッペ・マレット(T)
ジャンルカ・フェッラリーニ(T)
マッシモ・ロンバルディ(T)
ダニエレ・カルノヴィチ(Bs)

ルカ・グリエルミ:オルガン
ジャンルカ・フェッラリーニ:オルガン
グイド・マグナーノ:レガール(鍵盤楽器)

(2016年9,10月 ラ・ピファレスカ イタリア,ピネローロ,サン・マウリツィオ教会 録音 Glossa classics)

170624b 今年はモンテヴェルディ(Claudio Giovanni Antonio Monteverdi 1567年 *5月15日洗礼 - 1643年11月29日)の生誕450年の年なので代表作の一つ、「聖母マリアの夕べの祈り」も新録音が出てきています。これは声楽アンサンブルの「ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ」とジュゼッペ・マレットが率いる声楽アンサンブル「カンティカ・シンフォニア」と器楽アンサンブルの「ラ・ピファレージャ」らによる共演です。マレットはコンチェルト・イタリアーノやラ・ヴェネクシアーナのメイン・メンバーとして活躍していて、その他も有名古楽アンサンブルからメンバーが参加した複雑な構成のようです。ということで男声のみとか修道院聖歌隊らによる演奏ではなく、プロの古楽演奏者の精鋭が集まったものです。

 聴いてみると比較的ゆったりしたテンポで朗々とした歌唱が印象的です。合唱、合奏の中からオルガンの音色がよく通って聴こえるのとの相乗効果か、聖務日課の音楽であることが強く印象付けられます。これに似たタイプとしてはロベルト・ジーニらの録音と似た印象です。逆に歯切れのよいガーディナーの再録音とかとは対照的な感触です。器楽の方も名手が集まっているのならもっと派手な演奏になりそうなところですが、終始祈りの音楽を志向しているようで最近では珍しいタイプかもしれません。

170624 この作品固有の演奏分類としては、グレゴリオ聖歌等のアンティフォナを加えずにモンテヴェルディが1610年に出版した曲集の楽曲だけを演奏しています。マニフィカートは7声部のものと6声部のものを二種類収録しているのが珍しい点ですが、4声部のミサは晩課とは違うので含んでいません。6声部のマニフィカトは当然歌詞は7声部と同じですが、オルガンと通奏低音だけという地味な編成なので「聖母晩課」の想定していた用途、演奏される場面が想像されて興味深いものです。つまり、7声部のマニフィカトは貴族の城館、広間等で演奏されることを念頭にし、簡素な6声部のマニフィカトは修道院の聖堂等を想定したとされ、マニフィカト以外の部分もそれに準ずる編成に出来るというわけです。

 通常はマニフィカトを7声部を採用しているのでそれ以前の部分も相応の楽器を加えた壮麗なスタイルになっています。この録音のように6声部のマニフィカトを聴けると後者、修道院等で演奏された場合を想像しやすくなると思います。モンテヴェルディの「聖母晩課」も謎、不明な点が少なからずあるので現代は研究、考証がどうなっているのだろうかと思います。

25 3月

モンテヴェルディ「聖母晩課」 ユルゲンス、アーノンクール

1703z25aモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

ユルゲン・ユルゲンス 総指揮
ハンブルク・モンテヴェルディ合唱団(合唱指揮ユルゲン・ユルゲンス)
ミュンヘン・カペラ・アンティクァ(合唱指揮コンラート・ルーラント)
ニコラウス・アーノンクール 管弦楽指揮(楽器選定,用法)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ウィーン少年合唱団ソロイスツ

ロートラウト・ハンスマン(S)
イルムガルト・ヤコバイト(S)
ベルト・ヴァン・トホフ(T)
ナイジェル・ロジャース(T)
マックス・ヴァン・エグモント(Br)
ジャック・ヴィリセシュ(Bs)

(1966-1967年 ウィーン,カジノ・ツォゲルニッツ 録音 TELDEC)

1703z25 昨年の三月に亡くなったアーノンクールの没後1年前後に彼の録音が多数復刻されています。その中には長らく廃盤状態だったものも含まれ、このモンテヴェルディの聖母晩課もその一つです。といってもこれは総指揮はアーノンクールではなく、ユルゲン・ユルゲンスが行い、アーノンクールは器楽の方を楽器の選定から受け持ったものです。だから海外の方のジャケット表記はユルゲンスが指揮となっていてアーノンクールの名は出ていません(現代ではアーノンクールの知名度が圧倒的に高まっているので、彼の旧録音という位置付けになっているようです)。

1703z25b 細かいことはさて置き、この古くも本格的な古楽録音は今聴いても感動的で、特に典礼音楽に相応しい 息吹を感じさせます。この作品を演奏、録音する際のスタイル上の分類としては、モンテヴェルディが曲集(1610年に4声部のミサと合わせて出版した)に入れた楽曲だけでなく、詩篇歌の前後にグレゴリオ聖歌のアンティフナを加え、マニフィカトは7声部の方1曲だけを採用しています。声楽の方は少年合唱を起用していますが、ソロの名前と写真から判断して男声だけでなく女声も加っています。また、コーラス等はかなりの人数で歌っているので晩課らしいのと同時に壮麗で、1970年代までの録音の中では屈指の感銘度だと思います。レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊らによるハンス・マルティン・シュナイトの録音の場合は金管楽器が騒々しいくらいで、今回のもののような静謐にして霊妙な感じのものはなかなか無いので貴重です。そうなると器楽の方を担当したアーノンクールの功績も大きいのだと再認識させられ、ややくすんだような色々な楽器の音色は絶妙です。

 ~ CD1
01.主よ、われを助けに来たり給え 
02.アンティフォナ:彼の左手はわが頭の下にあり 
03.詩篇109:主は言われた
04.アンティフォナ:彼の左手はわが頭の下にあり
05.コンチェルト:われは黒し
06.アンティフォナ:すでに冬は去り
07.詩篇112:しもべらよ、主を讃めたたえよ
08.アンティフォナ:すでに冬は去り
09.コンチェルト:麗わしきかな
10.アンティフォナ:わが愛する人は
11.詩篇121:われ、よろこびに満てり
12.アンティフォナ:わが愛する人は
13.コンチェルト:二人のセラピムが
14.アンティフォナ:こよなく美しき婦人よ
15.詩篇126:主が建て給わずば
16.アンティフォナ:こよなく美しき婦人よ
17.コンチェルト:天よ、ききいれ給え
 ~ CD2
01.アンティフォナ:王が食卓に居ますかぎり
02.詩篇147:エルサレムよ、讃めたたえよ
03.アンティフォナ:王が食卓に居ますかぎり
04.カピトゥルム:太初より
05.賛歌:めでたし、海の星
06.ヴェルシクルム:聖処女よ、御身を讃むるに値せしめ給え
07.「聖マリアよ、われらのために祈り給え」によるソナタ
08.アンティフォナ:聖マリアよ、われら貧しき者を助けに来たり給え
09.マニフィカト (7声部)
10.アンティフォナ:聖マリアよ、われら貧しき者を助けに来たり給え
11.聖母マリアの夕べの祈り われらに主を讃えさせ給え 

 上記のようなトラック分けでCD二枚で構成され、青字が「聖母晩課」の楽曲で紫色字がグレゴリオ聖歌です。特定の聖母の祝日(被昇天とか)を想定したわけでなく、聖母に共通するアンティフォナや朗読を持ってきているようです。最後がグレゴリオ聖歌で静かに終わるというのは印象深くて、この録音以外には例がないかもしれません。また、「めでたし海の星」の順番を変えたり独自の凝った構成です。

 この作品が出来た頃の聖務日課がどういう具合だったか分かりませんが、復活の主日や生聖霊降臨の日の夜、晩課を行ったならさぞ喜ばしいものだっただろうと想像できて、この録音はそうした想像をかきたてる魅力に満ちています。 
16 7月

モンテヴェルディ「聖母晩課」 ザ・シックスティーン・2014年

160716aモンテヴェルディ 「聖母マリアの夕べの祈り」

ハリ=クリストファーズ 指揮
ザ・シックスティーン
グレース・デイヴィッドソン(S)
シャーロット・モッブス(S)
サイモン・ベリッジ(T)
ジェレミー・バッド(T)
マーク・ドッベル(T)
ベン・デイヴィス(Bs)
イーモン・ドゥーガン(Bs)

(2014年3月31日~4月3日 ロンドン,聖オーガスティン教会 録音 Coro)

160716b 7月16日は「カルメル山の聖母」という記念日(カルメル会では祭日と表記されている)にあたり、カルメル会の修道院では記念ミサなどが行われます。しかし教区の教会では被昇天のような大祝日とは違って地味なものです(自分が気づいてないだけかもしれないけれど)。過去記事ではこの日をはじめとして聖母の祝日にモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」の録音を取り上げてきました。それもそろそろネタ切れに近く、あとはCD化されていない古いLPに思いがけない素晴らしいものがあるかもしれませんが、なかなか情報がありません。今回のものはハリー・クリストファーズとザ・シックスティーンらによる再録音(再録音と注記された広告は無いが)です。

 下記のようにモンテヴェルディが1610年に出版した曲集の聖母晩課に含まれる曲だけを連続しています。グレゴリオ聖歌のアンティフォナや他の作曲家の曲を挿入したりせず、したがって晩課の典礼を再現したりというスタイルとは違います。また、同じ曲集に含まれるミサ曲も収録していないシンプルな内容です(しかしCD二枚組)。

① Deus in adiutorium meum intende
② Dixit Dominus
③ Nigra sum
④ Laudate pueri
⑤ Pulchra es
⑥ Laetatus sum
⑦ Duo Seraphim
⑧ Nisi Dominus
⑨ Audi coelum
⑩ Lauda Ierusalem
⑪ Sonata:sopra Sancta Maria
⑫ Ave maris stella
⑬ Magnificat

 
上記の独唱者を含んでソプラノは6名、アルト(男声)が4名、テノールとバスは各6名でコーラスは総勢22名で歌っています。器楽はオルガンを含み18名という比較的少人数の編成です。全体的におおらかというか伸びやかな演奏なのでひと昔くらい前の?古楽アンサンブルらしい強弱のアクセントを強調するスタイルとは違います。そのためかもっと後世の作品を聴いているような印象も交じり、宗教曲という香気よりもひたすら華やかさの方が目立ちます。ただ、近年 Coro レーベルから出ているパレストリーナ(1枚しか聴いたことがないが)に比べると音質が良くて、コーラスもよく響いています。

 モンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」は本当に典礼音楽らしいタイプの演奏を聴いても感動的ですが、祝祭的というのかサロン的で華やかなタイプを聴いても決して幻滅しないのが不思議なところです。例えばバッハの宗教曲だったら、それらしさというのか受難の内容を度外視して演奏したとすればそもそも長時間の演奏が持ちこたえられないくらいだと思います。何もこのCDがアンチ典礼的だと思ったわけではありませんが、曲の解説に「謎が多い」と書かれることがあるのもうなずけます。
10 12月

モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」 ボストン・バロック

1512z10aモンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り

マーティン・パールマン 指揮
ボストン・バロック

ジャニス・チャンドラー(S)
カレン・フリフト(S)
リチャード・クロフト(T)
リントン・アトキンソン(T)
ブラッド・ダイアモンド(T)
クリストファレン・ノムラ(Br)
ジェフ・マットセイ(Br)


(1997年2月1-4日 マサチューセッツ,ウェストン・センター,キャンピオン・センター 録音 Telarc)

1512z10 昨日の日本語による聖母賛歌に続いて同じく聖務日課で演奏することを念頭に置いたモンテヴェルディの聖母晩課です。演奏しているのはアメリカ合衆国で初めて設立された古楽器による団体、ボストンバロック他です。このアンサンブルは1973年に元々鍵盤楽器奏者であるマーティン・パールマンにより設立され、当初は「バンケット・ムジカーレ(Banchetto Musicale)」という名称で活動していました。その後コーラスも加えた団体に拡大して、ヘンデルやバッハ、モーツァルト等メジャーな作曲家の有名曲を録音しています。パールマンがチェンバロを弾きながら指揮をするというスタイルのようで、パールマン単独で他のオーケストラを指揮する機会もあります(日本で客演したことはあるのか?)。

1512z10b 実はこのアンサンブルの名前は知らず、CDを聴くのはこれが最初です。聴いた印象はあまり古楽器らしくないキラキラした音色の器楽とロマン派のテイストの多目のコーラスが印象的で、修道院での聖務日課というよりも貴族の館での演奏会といった感じの華やかな演奏です。同じ英語圏のロバート・キングとキングズコンソートらの録音と少し似ていると思いました。独唱も古楽中心の歌手の唱法があまり前面に出ていなくて、穏やかな器楽アンサンブルとよく合っています。コーラスは各パート6名(ソプラノ、アルト、テノール1,2、バス)の30名、器楽は指揮のパールマンを含めて24名の総勢54名という編成です。最近の演奏と比べるとやや多い人数です。

1512z10c この作品の演奏パターンとしては、モンテヴェルディが1610年に出版した曲集だけでなく、詩篇歌の前に短いグレゴリオ聖歌のアンティフォナを追加して演奏しています。モンテヴェルディの楽曲歌詞になっている詩篇と同じ章のアンティフォナを選んでいます。マニフィカトは1種類だけ、ミサ曲は録音していません。「聖母晩課」の曲集の中の10曲目、Lauda Jerusalem は溌剌としたリズムの合唱曲なのでこの作品にあまり関心が無い時でも好きでした。このCDではあまり強弱、リズムを強調していなくて、他の楽曲でもその傾向で、長く伸ばすように歌っています。そのためかあまり騒々しくならず、この曲が聖務日課のためのものだということを忘れずにすみます。色々な演奏があるこの作品なので、中庸的というのは安易なたとえですが、前回に聴いた日本の古楽アンサンブル・コントラポントが濃厚に晩課、典礼色を前面に出していたので対照的に聴こえます。
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