ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 WAB.107(ノヴァーク版)
オイゲン・ヨッフム 指揮
ドレスデン・シュターツカペレ管弦楽団
(1976年12月11-14日 ドレスデン,ルカ教会 録音 EMI)
昨年末に今回と同じくヨッフムとドレスデン・シュターツカペレのブルックナー第4番のCDを取り上げた時、マイナーな雑誌に載っていた連載記事の話題に触れていました。森内俊雄氏がブルックナーを愛好していて、原典から翻訳した英語の聖書(エルサレム訳)を読んでいると行間からブルックナーが響いてくるという内容でしたが、なかなか追体験さえできるものではなく、驚くのみでした。ここ10日間程連続してブルックナーのCDをネタにしていて実際に聴いてもいるわけですが、そうしている間に本来自分が一番好きなはずだった声楽・宗教曲よりも、歌詞の無い器楽のみのブルックナー作品の方により親しみを覚えてきました。ちょうど四旬節に入っていることもあり、何の根拠も無いとしてもブルックナーの方がその情緒に相応しいような気がしてきました。ここへ来てその雑誌の記事の間隔がおぼろげながら身近に見えてきたようです。
オイゲン・ヨッフム二度目のブルックナー全集はLPレコードの時代に分厚い箱セットが店頭に鎮座していたのを覚えています。全集は1975年から1980年にかけて録音されたので、第7番は初期の演奏です。その当時からすればブルックナーの交響曲の全曲録音も増えました(全曲でなくても第3番か4番以降からというのも含めればさらに多種になる)。それらの内をピックアップしながら色々聴いているとやっぱりヨッフムのブルックナーは独特な魅力があると思います。
交響曲 第7番 ホ長調
第1楽章 Allegro moderato
第2楽章 Adagio.Sehr feierlich und sehr langsam
第3楽章 Scherzo.Sehr schnell
第4楽章 Finale.Bewegt,doch nicht schnell
第7番の場合は特に録音が多いのでヨッフムのセッション録音が特別に人気があったわけでもなかったと思いますが、改めて聴いてみると特にフィナーレは得も言われない高揚感があり、ブルックナーでなければ得られない感覚はこれだろうと思います。CDの演奏時間だけを見れば下記のように特に軽快なテンポでもなさそうなのに、不思議に躍動するような流動感が聴いた記憶として残ります。ヘルベルト・ブロムシュテットが同じくドレスデン・シュターツカペレと第7番を録音した時は、ちょうどヨッフムの全集が完結した年だったことになり興味深いものがあります。そのブロムシュテットのトラック・タイムを見ると、両端楽章の時間がヨッフムとほとんど同じです。
ヨッフム・ドレスデン(1976年)
①21分05②25分54③10分02④12分25 計69分26
ブロムシュテット・ドレスデン(1980年)
①21分05②24分31③09分37④12分24 計67分37
シノーポリ・ドレスデン(1991年)
①19分46②22分51③09分35④12分45 計64分57
ヨッフム・BPO(1964年・DG)
①20分37②25分00③09分44④12分36 計67分57
2000年に入った直後、クラシック音楽から遠ざかっていた頃にヨッフムの旧全集がCD化されていているのを見つけて購入してCDウォークマンに入れてよく聴いていました。新旧どちらの方が良いかは簡単には分からず、ぶれますがこれまで聴いたところヨッフムらしい特徴(具体的に何かは言葉にし難い)は何となく新録音の方が顕著じゃないかと思いました。それと同時に第7番もやっぱりいい曲だなあと(当たり前だけど)しみじみ思いました。