北野武第13回監督作品「監督・ばんざい!」と、同時上映のカンヌ映画祭で世界の35人の映画監督に選ばれた企画でのオムニバス短編「素晴らしき休日」を池袋のシネマ・ロサで観てきました。


3分間の短編「素晴らしき休日」は、ある田舎町で男(モロ師岡)が映画を観に、さびれた劇場に行くんだけど…みたいなストーリーです。


そして「監督・ばんざい!」はキタノ・タケシ監督(ビートたけし)がお得意のギャング映画を封印して新境地に色々と挑むんだけど…みたいなストーリーです。


江森徹さんや鈴木杏ちゃん、内田有紀さん、毎度おなじみの岸本加世子さん寺島進さん、たけし軍団のつまみ枝豆さんや井手らっきょさんも出演してます。



鑑賞日★07/06/01




うーん、ホントにウルトラおバカムービーですね。超くだらねー!このくだらなさは素晴らしいです、ある意味。ホントど〜うしようもない映画です。ストーリーはあって無いようなカンジです。好き勝手やってる風なカンジです。ナンセンス・コメディというか。


たけしさんが映画のインタビュー等で言ってたみたく、今までのイメージを全て払拭したかったのかなぁって強く感じました。それも海外からの評価に対して。こんな超おバカなくだらない映画をお前らどう評価するんだ!みたいな。評価できないだろ!呆れて笑っちゃうだろ、コノヤロー!みたいな。

公衆便所のありふれた便器でも、展示してアートだと言い張れば芸術に見えるってヤツみたいというか。映画監督「北野武」しか知らない外国人を半分からかっているカンジというか。

からかうというか、なんか皮肉さ、シニカルさがあるんですよね。こんな超おバカ映画なのに。劇中のキタノ監督がいろんなジャンルの映画を撮るんだけど、一本一本を意外と長くガッツリ見せてるんですよ。キツイ言い方すればダラダラと流してるというか。

失敗映画という設定だからあえてダルく描いてるんだろうけど、正直もっとテンポ良く見せて欲しいなぁーって観ながら感じていたんだけど、後から考えると、オイラならこういう映画なら幾らでも上手く撮れるよ!今のありふれた邦画くらいなら撮ろうと思えばいくらでも!っていう風に受け取れたかな。僕が良い風に受け取りすぎなのかもだけど。かなり本格的に撮ってて、全部続きが観たいくらいでした。


けどホントなんか知らないけど、意外と笑っちゃうんですよね。意外と、と言ったら失礼だけど。ぶっちゃけ面白くて笑うってカンジではなくて、くだらなくて笑っちゃうカンジが多くて。

特に最後の方なんて、くだらないのが3周くらい回っちゃって面白くって。くだらなすぎて笑けてくるというか。映画のラストなんて完全になんじゃそりゃ!やし。

観る前は「みんな〜やってるか!」みたいなのをイメージしていたんですけど…まぁ、ほぼイメージ通りではあるんだけど「監督・ばんざい!」の方が全然良いですね。

「みんな〜やってるか!」もホントくだらないけど、やっぱ1周して面白いって部分もあったんです。けど、後半はそこから更に半周してキツくて僕は観ていられなかったんです。

「監督・ばんざい!」も途中で呆れて物も言えないくらいになるんだけど、そこから2周、3周していって、笑けちゃう、呆れる、笑ける、呆れる、笑ける…ってしてるウチに面白くなるというか笑ってしまうんですよね。アホすぎて。


たけしさんは狙ってコレをやってるんでしょうね、やっぱし。けど意図してもコレを堂々と出せる度胸というか勇気が凄いですよね。コレを堂々と真剣にやってのけるのが面白くもあるし。全力投球おバカだからこそ面白いというか笑わされるし。


ホント超くだらないんだけど、なんか僕は嫌いではないんですよね。今すぐもう一度観たいとは思わないけど。やっぱ長いし。長いというかダルいシーンが多いんですよね。「みんな〜やってるか!」もなんだけど、全く面白くないって訳じゃないけれど、面白いシーンと、そうでないシーンがあるので、2時間も見てるのはキツイですね。これが1時間くらいの作品なら結構満足って感じです。ちなみに「みんな〜やってるか!」は30分くらいなら満足かなぁ(笑)


てゆっか、たけし君人形がかなりツボに入っちゃいました。あの人形がなんともいえなくて。使い方が上手いというか面白かったです。切ないというか、おバカというか。燃えた人形をたけしさんが直してる姿とかホントおバカですよね。映画がコケて人形もコケる様の哀愁もなんともいえないし。エエわぁ〜。冒頭のCTスキャンも面白かったし。見た目は安っぽいんだけど、命が宿ってるんですよね。だからこそ面白くて。たけしさんが上手く演出して宿らせていて。ホントたけし人形は助演男優賞モノですね。オモロイ!


てゆっか、点数めっちゃつけにくいです。僕が勝手に点つけてて言うのもなんだけど。次回レビュる予定の「大日本人」もなんだけど、なんか余韻が残るというか、それの波紋みたく評価がまだ上下していて定まらないというか。もちろん、おおまかな点数は出てるんだけど、±10点くらいが揺れちゃって。あと他の映画と単純に比較できないのもあるし。

「監督・ばんざい」は最初は60点くらいのツモリだったんだけど、増減あって、今は一応66点くらいかなぁ。「座頭市」を65点くらいにしてたので、それよりも良いので、というカンジです。けど、まだ増減しちゃうかも。

点数では簡単に計れない良さみたいなカンジなんですよね。50〜60点くらいの映画だと思うんだけど、点数以上に好きというか余韻が結構残ってるんですよね。「大日本人」は「監督・ばんざい!」とは少し違って、点数は80前後くらいだと思うけど、80だと点数甘すぎるかなぁ?いや80だと辛いかなぁ?って迷って増減させちゃって。

ただ一つ言えるのは、どちらも余韻がまだまだ残ってるんですよ。簡単にいえば思い出し笑いしちゃうというか。 たけしさんも松本さんも多くを描きすぎず、想像力をかきたてる作品、作風なんですよね。まぁ、それが笑いの本質なんですけれど。

だから「監督・ばんざい」も「大日本人」もベタな部分が多くあるんですが、観てる側の想像力をかきたてるので、想像する事で深くシンクロして観れるので、映画に入り込みやすくなるんですよね。

そして想像して作品にシンクロしているから、観終わっても想像したモノが頭に残ってるから、余韻が長く残っちゃうんだと思います。というか、想像がなかなか止まらずに膨らんでいって、観終わってからも想像で笑っちゃって、観終えてからも面白くなったりする部分もあるというか。


北野武監督も松本人志監督も、そういう質の作風だからこそ、人によって評価の差が激しいのかなぁ〜って思うんですよね。シンクロ率の違いで楽しめる度合いも違う気がします。それは観る側のコンディションによっても違うだろうし、映画に対する期待度などの先入観によっても違うだろうし。だから人によっての合う、合わないの差が激しいのかなぁって思います。


けど「監督・ばんざい」を過大評価しすぎなのかなぁ?意味が無いものに僕が勝手に意味を見い出してるのかなぁ?北野武監督の罠に見事にハメられてるのかなぁ?悶々と悩んでしまいますね。

超くだらないけど笑わせられちゃう不思議な映画でした。ナンダカンダでやっぱ北野武監督は上手いですね。やっぱ真剣な顔してバカやられると笑っちゃいます。すごいチカラワザですけど。チカラワザと言っても、実際は勢いで持っていく技術がスゴいんですけど。


てゆっか、チカラワザで今までのイメージを払拭して、次は何を撮るんでしょうね。次回作が楽しみですね。期待が膨らむし、次は更に自由に出来そうだし。やっぱナンダカンダで世界の評価というか先入観というか、世界が評価してる部分に応えなきゃという部分があったのかなぁって思うし。縛られるというか。今回この映画を撮ったので、そういう縛りからも開放されたと思うし。


…ってコトで「監督・ばんざい!」は今すぐ観直したいとは思わないけどDVD化されたら、もう一度チェックしたいと思います。





他の方の「監督・ばんざい!」のレビュー
http://blog.livedoor.jp/pro_g_mania21/archives/51182380.html
http://blog.livedoor.jp/clockworkorenge/archives/50172810.html
http://blog.livedoor.jp/ykyama_g3/archives/50830248.html
http://blog.livedoor.jp/an_punch1028/archives/50828842.html
http://blog.livedoor.jp/tsubuanco/archives/50990295.html