2006年04月04日

せんきゅーまいふれん。

ゴアネパールからインドにかけて、三人組の日本人青年と出会った。
彼等はまだ当時二十歳くらいだったと思う。
すごいテンションの高いヤツラで、いつも三人で大笑いしていた。
誰がリーダーというわけでもなく、上も下もない幼馴染という感じだった。
日本でずっと不良やってきて、国内じゃ飽き足らず、外国でも遊んでやろう!ってノリでインドに来ちゃったっていう展開が、とても解りやすく想像できた。
俺は彼等の「何事も面白いことがあればスマートに楽しむ」という遊びのスタイルが好きだった。
「ほほえましく思えた」とか、そういう上からの目線じゃない。単純に自分にはないソウルを見せてもらい、それに気づかせてもらえた事で、リスペクトしていたのだ。

彼等は、ガンジス川船上ライブにも参加してくれたし、その後のゴアでのビーチでも何度も顔を合わせた。
愉快なヤツラだったから、彼等の周りにはヨーロッパ人やイスラエル人のヒッピーがいつもたくさんいた。
でも、彼等には一つ弱点があった。
それは、英語でのコミュニケーションだった。
誰かが彼等に英語で色々質問しても、返ってくる言葉はいつも「めいびー!」だった。
しかし、それをなんとも言えない人懐っこい笑顔で言うので、質問した外国人も苦笑いするしかなかった。
でも彼等は、彼等なりに一生懸命外国人とコミュニケーションを取ろうとしていた。
中途半端に英語が話せる日本人よりも、はるかに多い時間、外国人と接していたと思う。

ある日、南インドのボンベイという街で、俺は彼等と再会した。ゴアで別れてから二週間ほどたった後だ。
彼等は二人になっていた。一人はもう旅の資金が尽きて日本に帰ったという。
そしてその日も、二人のうちの一人が日本に戻る日だった。

ガンジス俺は、今日別れるという二人を、自分の部屋に招いた。
そしてインドでのさまざまなエピソードを話し、笑いあった。
そろそろ飛行機の時間だ、と言うので、タクシーに乗る所まで見送りに行くことにした。
俺は三人一緒に旅に出てきた友達が、一人一人帰っていって、それを見送るのはどういう気分なんだろうと考えていた。
俺等は硬い握手をして、一人をタクシーに乗せた。
タクシーに乗った方は、安堵感もあったのか晴れやかな顔をしていた。
見送る方の彼は少し寂しそうな顔に見えた。

タクシーが走り出りだした瞬間、突然、見送る側の彼が大声で叫んだ。
「せんきゅーまいふれん!!!」
そしたらすぐにタクシーの窓が開いて、タクシーの中から、
「せんきゅーまいふれん!!!」
と言って、見送られる側の彼も体を出して手を振った。

俺は胸が熱くなった。
俺は、日本人同士の、このへんてこな英語の挨拶が、こいつらの旅の全てを凝縮しているように感じたからだ。
英語が苦手な彼等の、そして必死で英語で外国人とコミュニケーションを取ろうとしていた彼等の、旅での最後の別れの挨拶が、このへんてこな英語なのだ。
「せんきゅーまいふれん」→「ありがとう俺の友達」、こんなスマートなお礼の気持ちがあるだろうか。
この光景に立ち会えた事を、俺は感謝した。


日本に戻って来てしばらくしたある日、一度だけ彼等三人と酒を呑んだ。阿佐ヶ谷だったと思う。
インドで遊んでいた時と同じ顔をしていた。

その少し後、あの日見送る側だった彼から電話が来た。
あいかわらず人懐っこい声だった。
「また遊ぼうなー」「うぃーすっ」
そう言って電話を切った。

それが彼と話した最後だった。

アイツは遠くに逝ってしまった。
友達を通じて、その悲報を知った時、俺はあの日の、彼の叫んだ「せんきゅーまいふれん」という言葉が、頭をよぎった。
30分だけ泣いた。
そしてアイツの残した言葉を、俺が拾おうと思った。

Thank you. My friend. じゃない。せんきゅーまいふれん、なんだ。

友人「I」に捧ぐ。
「せんきゅーまいふれん」

rainman_daisuke at 15:54│Comments(4)TrackBack(0)旅で貰ったもの。 

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この記事へのコメント

1. Posted by よーへー   2006年04月06日 01:15
スマートに楽しんだり生きるという事は自分勝手とは訳が違うし、簡単そうでかなり難しい事ですよね。

余計な知識とかが邪魔したりすると逆に視野が狭くなってスマートじゃなくなりそうだし…。脳みそ柔らかく視野はおっぴろげて生きたいです。

『めいびー』+『人懐っこい笑顔』=自然に人々が集まりそうですね。

言葉はたいして伝わらなくても心は伝わりますよね。
『のぉーぼぉーだぁー』だと信じてます。
2. Posted by rainman_dasuke   2006年04月06日 18:14
よーへー。
ありがと。
ほんとそうだよね。

今回の話は、いつか書こうと思ってて、でもずっと書けなかった。
いざ文章にすると難しくてね。。

写真変えてみた。
ゴアでの俺と、下はガンジス河の対岸。

『のぉーぼぉーだぁー』で生きます。
せんきゅーまいふれん。
3. Posted by kazuking   2006年04月07日 07:07
「せんきゅーまいふれん」

daisukeのこの言葉でどれだけの人たちが繋がったのだろう?

旅から帰ってて久しぶりに会ったdaisukeからもらった
「なんかあったかいもの」は
出会いと再会の握手とこの言葉

「せんきゅーまいふれん」だった

せんきゅーまいふれん。
4. Posted by rainman_daisuke   2006年04月07日 19:43
kazuking。

俺も、この言葉使おうって決めてから、何回言ったんだろう。
いつでも新鮮な気持ちで言ってます。わすれないように。

せんきゅーまいふれん。これからもよろしゅう。

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