2006年05月01日

チベットを越える【其の五】

f7d99d4b.jpg【雲の上にある街】
ついに5月ですねー。船上ライブまで後3週間です!暖かくなってきたし、いい感じだなぁ。楽しみです。チベット編(2つ前の記事)の続きです。俺としい君だけ、先に公式バスに乗ってラサを目指したところです。

●バスに乗って10時間程たった頃から徐々に頭が痛くなってきた。俺は買ってあった酸素ボンベを吸った。ゴルムドでは旅行者向けに携帯用酸素ボンベを売っている。値段は高かったけど、万が一に備えて2本ほど買っていた。
缶からストローのようなものが出ていて、それを鼻に入れて吸うんだけど、一本があっと言う間に終わってしまった。少し楽になったような気もしたけど、気分的な問題のような気がした。
しい君も隣でだまって目を閉じていた。まだ長い道のりの半分も来ていない。前半からこれで大丈夫だろうか?不安が募った。

景色バスの窓からの景色は素晴らしかった。本当に地球上の景色なのかと目を疑った。こんなに張り詰めたような透明感のある空を見たのは初めてだった。

標高が上がるにつれて、走行中にエンストが多くなった。酸素が少ないのでガソリンが燃えないのだ。それに勿論ガソリンスタンドなどない。そのため下り坂ではギアをニュートラルの状態にして、ただの重力だけで進むような運転をしていた。
驚いたのは、バスが日本製だったこと。中古の中古を中国政府が買い取ったのだろう。TOYOTAのスタッフは、自分たちの作ったバスが標高5000Mを走るなんてことを予想していたのだろうか?

ラサの人々運転手は二人いて、交替で仮眠と運転を繰り返している。目が充血していてギラギラしている。なにかアドレナリンが作られるようなクスリでもやっているんだろうか?
椅子に座っているだけで辛いのに、平気で何時間も運転するチベット人ドライバーの生態系に驚いた。他の乗客も、俺らと比べたら遥かに余裕の表情だった。

俺の腕時計(G-SHOCK)は、標高が計算できる機能がついていた。みるみるうちに標高が5000Mに近づいた。
そしてついに5000Mを越えた時点で、表示画面が「MAX」と出た。測定不可能という事だ。いろんな機能がついているG-SHOCKも雲の上の世界では役に立たない。
登山用の時計を買ったほうがよかったのかな。そんな事を考えているうちにも、バスはお構いなしにどんどん上り坂を走っていった。

何度かチェックポストを超えるたびに、公安(中国の警察)がバスに乗り込んで、乗客の顔を懐中電灯で照らし、本人確認をしていた。俺らは公式料金を払っていたので、パスポートを見られても特に問題はなかった。
俺は残った3人の事が気になった。ワンさん作戦でこの厳しいチェックポストを本当に超えられるのか?ばれたらゴルムドに返されてしまう。公式に認められていても辛いのに、その上、ばれないように動く体力が彼らにあるのか…。しかし他人の事を心配している余裕も、俺にはなくなっていた。
完全に高山病だ。最初にあった頭痛は、まだ序の口だった。早い時点で酸素ボンベを使ってしまった事を後悔した。本当の高山病の苦しみはまだまだこれからだったのだ。

ラサの人々2バスに乗って20時間ほど経った頃、食事休憩があった。
外はもう真っ暗だった。小さな明かりのついた食堂が一件だけあった。
あたりを見回しても食堂以外は何もなく、ただ延々と平野が広がっていた。
「こんな場所にもちゃんと食堂があるのか…」、俺はこの土地で食堂をしながら一生を暮らす家族の運命みたいなものを考えてしまった。人間ってすごいなぁと思った。
料理の種類は多くなかった。ぶっかけご飯のようなものが2、3種類あるだけだ。
酸素がなく火力が弱いせいか、スープも沸騰している温度ではなかった。でも温かいものを口に入れただけで、少し身体が楽になったような気がした。周りの乗客も、しい君も、ただ黙々と食べていた。

食事を済ませて、再びバスは走り出した。俺は目をつぶって寝てしまおうと何度も試みたけど、頭が痛くて寝れなかった。いくら空気を吸っても、吸ったような感覚がない。身体も少し熱が出てきたような気がした。とにかく水分をたくさんとって、なるべく体力が落ちないようにじっとしていた。

バスに乗って30時間経過。
あたりが少し明るくなってきた。でも景色は一向に変わらない。ほんとうに進んでいるのか?と不安になるくらい、同じ様な道を走っていた。
いったいいつになったら「神が住む」と呼ばれるラサという街が見えてくるのか。しい君との会話はほとんどなくなっていた。
もう自分との戦いという感じだった。

ラサの空いつのまにか寝てしまった。
乗客の歓声で目がさめた。
外を見たら、遠くに街のようなものが見えた。
俺は、飛び起きて、前の席の中国人に「ラサ?ラサ?」と指を刺して聞いた。
中国人はうなずいている。
「うぉぉぉ」なぜか俺も声が出た。やっと具体的な距離感が見えて、ほっとして涙が出そうだった。隣で寝ているしい君を起こした。二人で抱き合って喜んだ。

バスに乗って36時間後。
俺らはついにラサに着いた。バスから降りた途端、地面に座り込んでしまった。バスの屋根に縛り付けられている自分たちのバックパックを降ろす気力もなかった。

G-SHOCKの標高系も、MAXではなくなって3700Mを表示していた。
日本にいたら富士山の頂上にいる高さなのに、なぜかとても標高が低い場所に下りてきたような感覚だった。空気が濃かったのだ。

「ついに着いた。ここがラサか…」
俺は、ゆっくりと腰をあげた。


続く。
次は鳥葬の話に進む予定です。自己満足の旅行記ですが、書きとめておきたいのでもう少し付き合って下さい。普段の日記は「mixi」で書いてます。

rainman_daisuke at 20:16│Comments(6)TrackBack(0)旅で貰ったもの。 

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この記事へのコメント

1. Posted by YUMIKO   2006年05月01日 23:18
うぅーー、あとの三人が気になる。。標高三千七百にある町…すごいなぁ
2. Posted by えみこ   2006年05月02日 00:37
いいねぇ、旅行記。
チベットの話をバックパッカーから聞くの大好き☆
みんな、どれだけ大変やったかをうれしそうに話すもんね。
私は、飛行機でとんでいったけど
でも、はじめてポタラ宮を見たときは、車の中で
1人やのに、めっちゃうれしくて興奮したもんね。
続き、楽しみにしてるよ〜☆
3. Posted by ゆうこ   2006年05月02日 12:23
広い!!
旅行記もとーっても楽しみなんだけど、写真も楽しみにしてるのだ。
どこまでもどこまでも続く地平線。
青い空がきれいだなあ・・・。

4. Posted by rainman_daisuke   2006年05月05日 17:35
YUMIKOさん。
そうそう、その3人の話がすごいのだ。次で書くね!
5. Posted by rainman_daisuke   2006年05月05日 17:39
えみこchan。
どれだけ大変やったかをうれしそうに話す・・・
この気持ち痛いほどわかる(^-^;)
旅人にありがちなんだよなぁ。
聞くのが好きっていってもらえると嬉しいけど、興味ない人もいるし、難しいなぁ。
ポタラは俺も、大興奮だったよ!今でも始めてみた時のショックを覚えてるよ。
6. Posted by rainman_daisuke   2006年05月05日 17:40
ゆうこさん。
空は、ほんとうに綺麗。透き通ってる。
標高が高いって事は、太陽に近いってことだから、日差しが強い。
まだまだ写真あるので、ゆっくり載せていきます。おたのしみに!

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