April 06, 2010

のほほんと、気が気では無く

何故、根拠も無く「何時までも在る」と思っていたのだろう。
失くすときになるまできちんと見ていなかったのだろう。
それが、此度の食事の際の想いである。

『トロティネ』は、フォレストパークにあるレストランである。朝食会場と、昼食時の「自然食レストラン」の顔を持つ。
縁有って、『フォレストヴィラ』に2度ほど宿泊した。その折に、朝食は頂いていた。が、和食と日本酒・焼酎をこよなく愛する私は、そのうちに、そのうちに・・・・・・と思いながら昼食時には『吉翠亭』へばかり足を運んでいた。
故に、「自然食レストラン」の『トロティネ』の顔は知らずに過ごしてきた。が、今回の経営者の変更によりハウステンボスの役員でもあったローラン・ジャンマリー氏が去られるにあたって一旦クローズとのことを耳にし、ならば今のうちに食事をしてみようかと思ったので、ハウステンボスの常連M氏とこちらに足を運んだものである。

今回頂いたのは、「お昼の軽いコース」。
パン(但し2人分)最初に供されたのは・・・・・・パンである。左から「ハーブのパン」「胡麻のパン」「ヴィエノア・オ・ローズ」の3種類。ご覧の画像は、2人分のパンであるので、それぞれが2ヶずつ並んでいる。
この中で、今回は「ハーブのパン」を食事中に頂いた。ふわりと鼻腔でハーブが香り、それでいて主張しすぎることはないので料理の邪魔にならない絶妙のバランスが感じられた。後で申し上げる肉料理のソースとの相性も白眉であった。

「お昼の軽いコース」前菜&スープ程無くして、前菜とスープが運ばれて来た。前菜は「的鯛のテリーヌ」、スープは「レンズ豆のスープ」である。
テリーヌは、淡白な的鯛とトマトの酸味が相まって、次への食欲を大いに刺激してくれるものであった。和食の突き出しでも食欲を刺激してくれる気の利いたものが供される場合と下手なものを出して減退させる場合があるが、これは前者に値する。ほろりと口中で崩れる的鯛の身の美味さが、トマトの爽やかな味と絡んでまた違う表情を見せてくれる。
スープは、ベースのダシ(フォン)の味と香りがしっかりとしたもので、スパイスが利いてひと口、もうひと口、あとひと口・・・・・・と、後味を引くものであった。割合に濃い目の味付けでありながら、飽きずに食せるのは偏にこのスパイスのあしらいに拠るものであろう。レンズ豆もしっかりと煮込まれていて、噛むとほろりと解けて豆の美味い味を口中に残す。それをスープで洗い流し、更に豆を味わう。

「お昼の軽いコース」サラダ(食べかけだけど…)食し終わり、次に出てきたのはサラダ。「エディブルフラワーと野菜のサラダ」とも申し上げるべきであろうか?
ドレッシングは、カレー風味のものであった。ドレッシングのみを口にしたが、カレーの香りは素晴しく口中に広がったものの、強いスパイスの味ではない。また、クラシカルなフレンチの酸味の強い味でもない。柔らかく、優しい味である。・・・・・・が、私は普段からほとんどドレッシングの類を使わぬ。殊に、このサラダはエディブルフラワーの香りと爽やかさ、野菜の新鮮さが舌に広がり、噛む毎に野菜の甘さが美味くて美味くて、気が付いたら画像に収めるのを忘れて半分程食してしまった、という体たらくであった。

「お昼の軽いコース」牛肉のパヴェメインの料理は「牛肉のパヴェ」。“Pave(パヴェ)”とは、フランス語で“石畳”や“敷石”という意味である。この料理を見るに、恐らくこの“Pave”は、肉の上に乗せられた野菜やグリルの焼き目をそれに見立てたものであると思われる。
(尤も、分厚く切った軟らかいステーキもPaveと言うそうであるが、この料理にはそれは当て嵌まらないであろう)
グリルして余分な脂を落とし、酸味が利いてあっさりしたソースと合わせている。肉は軟らかく焼きあがっており、それでいてしっかりと中まで火を通してある。遠火で肉を焼いたが故であろう。肉は噛む毎にジュッと旨味を出し、牛肉にありがち(というよりも私が感じがち)なしつこさは、ソースの酸味が消してくれる。前述のパンをソースに浸して食すと、これもまた肉のエキスがじんわりと口中に広がった。後味は酸味のお蔭でさっぱりとしたものになったのは言うまでもあるまい。
付け合せは「白いんげんとブロッコリーのマッシュ」とのことであった。が、画像でご覧の通り、ブロッコリーの青さは無い。食した感じも、ブロッコリー特有の青さは感じられなかった。察するに、こちらは「白いんげんとカリフラワーのマッシュ」であったものであろう。白いんげんは滑らかな口当たりで、舌の上でふわりととろけた。カリフラワーの花部分は合わせられたトマトの甘みの中で、プチプチと弾けた。これらは「ポンム・アンナ」の要領で焼かれたものであっただろうか?チーズと思しき“皮”が、軟らかい付け合せの口触りのアクセントになっていた。

「お昼の軽いコース」デザート盛り合せデザートは「リコッタチーズのタルト・カボチャのアイスクリーム・フルーツの盛り合せ」である。
チーズのタルトは、ベイクドのものである。私の大好きなチーズの味を思い切り味わうことの出来るものである。無論、デザートであるからにはチーズの塩味ではなくチーズケーキの甘い味であるのだが・・・・・・。
アイスクリームは、カボチャとミルクの味が存分に楽しめるものであった。カボチャの甘みが、ミルクの穏やかさに良く合う。そして、タルトもアイスクリームも甘過ぎず、甘いモノが余り得意ではない私にとって大変嬉しい味わいであった。そして、添えられたパイナップル・キウィフルーツ・ルビーグレープフルーツは爽やかさを後味に加えてくれた。

「お昼の軽いコース」〆のコーヒー最後にコーヒーで余韻を味わったものであるが・・・・・・お気付きであろうか?こちらの料理の食器も、全て植物の図柄をあしらったものである。
此処は、食材として肉も魚も使うものの、主体になるのは植物の食材の数々である。野菜然り、果物然り、スパイスやハーブもまた然り。
ムッシュ ローラン・ジャンマリーの食材の扱いは目を見張るものがある。そして、味付けは、クラシカルなフランス料理の濃い味付け(要はワインの肴になる味付け)ではなく、昨今のフランスの潮流であるミネラルウォーターと共に味わえる優しくも穏やかな味付けである。

何故、根拠も無く「何時までも在る」と思っていたのだろう。
失くすときになるまできちんと見ていなかったのだろう。
私は、此処に来るのが遅過ぎた。



ハウステンボスには、嘗て2人の偉大なシェフが居た。

ひとりは、ハウステンボスの創業以来の功労者であるにも拘らず、盆暗な経営者の手によって追われる様に退職の憂き目を見た上柿元勝シェフ。
ハウステンボスの(特にホテルズの洋食部門の)食の確立は、この方を抜きにしては語れない。素材を活かす〜その手腕は「和」に通じるものも無きにしも非ず〜姿勢と、クラシカルな手法をも惜しげも無く用いて尚新しさを感じさせる料理は、「ハレの日の“ニッポンの”フランス料理」を日本の端の九州に於いて開花させた功績は語りつくせぬものがある。
ハウステンボスの、フレンチに止まらぬ“洋食”のベースは、この人が作ったものであると言えよう。しっかりとしていながら素材の旨味を存分に活かすベースの味は、国内でも類を見ぬほど素晴しいものである。

そして、もうひとりは、その腕をハウステンボスで揮い、ハウステンボスにようやく自身の味を浸透させ始めたところで、悪名高き経営者の犠牲となった(と言い切ってしまっても良かろう)ローラン・ジャンマリーシェフ。
フランス人のこの方は、当然ながら、DNAレベルで“フランス料理”がその身に浸透している。それ故か、食材のあしらいやスパイス・ハーブの扱いは、我々とは全く違うセンスを垣間見せてくれ、想像も付かぬような味を提供してくれた。残念なことに、私は『デ アドミラル』と『トロティネ』でそれぞれ1度ずつこの方の料理を頂いたのみであるが、前職のホテルではファンが多数付いていらしたという評判もさもありなんと言う素敵な料理を堪能したものである。
尤も、某経営者とは考え方が違ったようで怒りを買ったと思しき節もあるが(それが証拠に任期の半ばで降格とも言える人事の憂き目に遭っている)、それが却ってこの方の料理に凄みを増していたようにも思う。現『トロティネ』での食材のあしらいに、この方の素晴しい腕を見ることが出来る。

新たな経営者を迎えた現在、残念ながら『トロティネ』も一旦クローズされる由。これで、お2人の偉大な料理人の直系の料理は頂くことが出来なくなるのであるが、それでお2人の痕跡が全て消える訳では無い。
叩き込まれたベースの味はこれからも継承されるであろうし、食材や香辛料のあしらいは料理の仕上げのそこかしこに見受けられることであろう。そして、残された我々は、それらの料理を味わいつつ、お2人のムッシュの味をほろ苦い想いと共に思い出すことであろう。



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1. 自然食レストラン/トロティネ(ランチ)  [ ハウステンボス飲食店がいーど!!?? ]   April 09, 2010 18:54
今回はハウスンテンボス、フォレストパーク内にあるトロティネです。改定版をアップします。最新更新日4月9日 森と湖のフォレストパークを彩るお庭「フォレストガーデン」。 ハーブや果樹、野菜や草花たちが織りなす美しい風景は、まるでヨーロッパ郊外の村のようです...

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