August 28, 2011

和のステーキ

今夏のハウステンボス帰国では、ホテルヨーロッパの『吉翠亭』に大変にお世話になった。
何せ朝2回・昼1回・夜2回の食事を飽きもせずに認めたのであるから・・・・・・。
(当然メニューは毎回違うが)
そして、今夏は暑さと開放感の為食事が面倒になり、『吉翠亭』以外では、マトモな昼と夜の食事はほとんど摂っておらぬことも付け加えておこう。

吉翠亭 ステーキ会席メニューさて。
私がこちらで食事を頂いたのは、入れてあった予約の為である。
この「ステーキ会席」は、ハウステンボスの夏の食イベントのひとつである「スタミナ&涼味特選フェア」の一環として供されたものである。
偶々7月上旬に開催された「夏の美食会」のときにこちらが供されると聞き、
「へぇ、それ食べたいなぁ。8月に頂いても良いですか?」
「ありがとうございます。お肉の種類は長崎和牛とF1牛がありますが、どちらになさいますか?」
「それは勿論長崎和牛でしょう」
「では、ご用意しておきますね」
・・・・・・以上が予約の遣り取りである。
元々は中日の8日夜にこの「ステーキ会席」の予約を入れていたのであるが、飲酒の蓄積で胃が重くなることを鑑み、7日夜に予約していた「ファミリエ スペシャル会席」と変更して貰った。無論、翌8日夜には「スペシャル会席」を堪能してきたのは言うまでも無い。

吉翠亭 飲み比べセット(ボトル)吉翠亭 飲み比べセット(グラス)美味い料理には美味い酒が無くては始まらぬ。
が、間の悪いことに、「夏の美食会」のあたりで本格的に調子が悪くなった私の胃腸は、病院にて持病の十二指腸潰瘍と診断されてしまった。これでは、いつもの如く調子に乗って杯を重ねる訳にも参らぬ。が、1種類や2種類の酒ではいかにも淋しい。
そこで、こんなものでお茶を濁してみた。
「英勲 飲み比べセット」である。
銘酒「井筒屋伊兵衛」を擁する酒造である。どれも美味い酒であるが、呑んだくれの私には、酒の味がしっかりと味わえる「生貯蔵原酒」が殊に美味かった。
・・・・・・本来ならば、これこそ、度数が高い故に潰瘍持ちがガブガブと飲む訳には参らぬ、筈である。

吉翠亭 ステーキ会席前菜(蛍籠)吉翠亭 ステーキ会席前菜(一雨潤千山)吉翠亭 ステーキ会席前菜





のんびりと、酒で口を湿らせている間に、「季節の前菜五種盛り」が来た。
左が私の前に運ばれてきたときのものである。「夏の美食会」にご参加の方々は懐かしくご覧になるであろう。
『吉翠亭』が美食会の為に張り切って仕入れた「蛍籠」である。
籠を取ると、最近ではすっかりお馴染みになった、禅語が書かれた葉が顔を出した。「一雨潤千山」、これは「いちうせんざんをうるおす」と読む。こちらの記事にも解釈が記載されているが、「ほんの僅かに降っただけの雨も、辺りを見渡せばあらゆるものを潤している」という意味の言葉で、「誰ひとり区別や差別をすることなく等しく恩恵を与えてくれる釈迦の教えを表す」「しがらみや拘りを捨てればこの世のあらゆるものが見えてくる」などと人によって解釈が違ってくる言葉であるのだそうな。
尤も、今回の主役は禅語ではなく、料理である。葉を取ると、いよいよ前菜が顔を出す。
この日供された前菜は「鮴(ごり)の佃煮」「マスカットのおろしかけ」「鴨ロースの芥子茄子巻」「鰻の八幡巻」「丸十栂ノ尾煮」に飾り切りの大根と鬼灯釜に入れられた山桃が添えられていた。夏にふさわしい涼しげなあしらいが食欲をそそる。
どれもこれも本当に美味かったが、甘辛い鮴の佃煮の後で山桃やマスカットを頂くと、サッパリした風味が濃厚さを洗い流して次の料理や酒を進めてくれる。八幡巻や丸十は言わずもがな。鴨ロースも、芥子茄子と一緒に頂くと、鴨のギュッと詰まった旨みに柔らかい辛みが相まって層倍の美味さが味わえたように思う。

吉翠亭 ステーキ会席椀物(富士椀)吉翠亭 ステーキ会席椀物次に来た「今月の椀物」の椀も、美食会でお披露目された「富士椀」である。横から見ると、蓋の部分が富士を模した如くに見えるのでこの名が付けられたのだそうな。
蓋を取ると、中身は私の大好物の白味噌仕立て。具は、「鱧のオランダ煮」「コロ(鯨の脂身)」「蓴菜(じゅんさい)」「胡麻豆腐」に、あしらいとして木ノ葉人参と柚子が添えられたものであった。
「オランダ煮」とは何ぞや?と調べてみたら、「一度揚げてから煮る、西洋から長崎に伝わった調理法」であるのだそうな。ここ『吉翠亭』は京都で修業した料理長の京料理が表看板であるが、その実、他の地域の様々な調理法や味付けを取り入れ、単なる京料理にとどまらぬ“吉翠亭料理”を創り上げている。それでいて、ベースは当然京料理の技法を用いるのであるから、出汁の味がしっかりした華やかな料理であるのだ。
ひと口、啜る。
歯応えは揚げた衣で残しながら口中で淡くほろほろと解ける白身の鱧の味と、ふるりつるりと喉を滑り、後で口中や鼻腔に味と香りを残す胡麻豆腐・蓴菜・コロといった美味い食材の数々が、甘めのまったりとした白味噌の味と柚子のふわりとした香りの中に溶け込んでいるのが、何とも口福な快感である。

吉翠亭 ステーキ会席お造り3種盛り次の料理の造りは「地魚三種盛り(お造り)」と「和風カルパッチョ」のいずれかを選ぶことになる。それぞれの魚の種類を聞いて、此度は「地魚三種盛り」を選択した。
今回、「地魚三種盛り」で供された魚は「鱸(すずき)」「伊佐木(いさき)」「鮪(しび)」である。ちなみに、「和風カルパッチョ」の方は「伊佐木」と「サーモン」が使われていたのだそうな。
光物と白身が大好きな私(都内のよく行く寿司屋では、毎度毎度季節の光物と白身を中心に注文をしている。お蔭で鯒(こち)やら秋刀魚やら金目やらといった光物や白身の味を覚えてしまった)であるから、好物の鱸がある「地魚三種盛り」に手が伸びるのは自明の理であろう。
期待を裏切られることは、無論、無かった。
トロリとろける食感の鮪に、旨さが舌に絡みつくかの如くの伊佐木、何よりもコリコリとした鱸の歯触りとじんわりと舌に乗る旨みが、ついつい酒に手が伸びる羽目になった。気が付くと、胃に負担がかかるから、と諦めていた「英勲 生貯蔵原酒」2合の銚子が目の前にあった。

吉翠亭 ステーキ会席地魚和風ポワレ酒を調達し、いよいよ調子が出てきたところで供されたのが、魚料理の「本日の地魚和風ポワレ」。魚は、「甘鯛」である。
甘鯛は、その名の通り身が甘い。砂糖の甘さとは当然違うが、一塩をして馴染ませ、軽く焼いて食べると身の甘さとしっとりした食感が何とも美味いものである。
今回は、それをフランス料理の技法の“ポワレ”を用いて料理してあった。“ポワレ”は、元来蒸し煮の技法であるが、近年は油を引いて表面をカリッと焼き上げることも指すようであって、此度の「和風ポワレ」も、香ばしく焼き上げられた皮が殊に美味かった。身も、しっとりとした食感にバターの風味が加わって、えもいわれぬ美味さが其処にあった。醤油を僅かに利かせた風味が“和風”という所以であろうか。
添えられたヤングコーンやピーマンもそれぞれの甘みを存分に主張し、旨みを更に引き立てていたことまでもが印象に残ったものである。

吉翠亭 ステーキ会席和風ステーキ(付けダレ)吉翠亭 ステーキ会席和風ステーキ(ヒレ)こちらは、メインの肉料理の「和風ステーキ ガロニ 小さなサラダ」である。
このメニューは、選択することが多い。先ずは「長崎和牛(黒毛和種)」と「国産F1牛(ホルスタイン×黒毛和種の交雑種)」という肉の種類を選択し(当然価格も違うので、この選択は予約時にする)、当日は「サーロイン100g」か「フィレ80g」かを選び、更に肉の焼き加減(レア・ミディアム・ウェルダン)を指定する。
胃が悪く、脂が然程好きとも言えぬ私のチョイスは、当然の如く「長崎和牛・フィレ・ウェルダン」である。F1牛も、こちらで取り扱っているのは間違いが無いものであろう故、当然ながら美味い筈ではあるのだが、多少なりとも高くても長崎和牛の美味さの魅力には勝てぬ。また、脂たっぷりのサーロインもとろける味がえもいわれぬと人気であるが、私の胃にはかなり重い。故に、隣りの『戎座』でも、選択の折にはフィレばかり注文している。
また、ガロニ(付け合せ)は、シャトー剥きの人参のグラッセと、これもまたシャトー剥きのポテトフライ。ポテトフライでシャトーになっているのはあまり見ないので、少々吃驚した。サラダは、パイナップルと新鮮な野菜が玉葱ベースの和風ドレッシングで和えてあり、それを、ホタテの貝殻に乗せて供された。
焼けた肉の香ばしい香りに、肉本来の旨みが絡む。ポテトフライもグラッセも、とろけんばかりの味わいである。濃厚な味に慣れた舌を酒で洗い流し、サッパリしたサラダが清めて、また肉が欲しくなる。
ちなみに、肉の味付けに添えてあるのは「粗塩」「ポン酢」「胡麻ダレ」「にんにく醤油」である。以前の「伊万里牛食べ放題」ではサッパリしたポン酢を多く使ったが、此度は酒の肴であるので、味の強いにんにく醤油と肉の旨さがダイレクトに味わえる粗塩を多く使っていた。

吉翠亭 ステーキ会席食事(塗椀)吉翠亭 ステーキ会席食事(本日のお茶漬け)次の食事もまた選択メニューである。用意されているのは「白飯・赤出汁・香の物」「本日のお茶漬け・香の物」「五島うどん(温・冷)」の3種。コメの御飯が好きで、ここの出汁のファンである私。選んだのは、御飯に出汁を掛けてサラサラと食すことが出来るお茶漬けである。
出てきたお茶漬けは、此度は「鯛茶漬」。香の物は、「昆布の佃煮」「南瓜の浅漬」「胡瓜の糠漬」である。
出汁の味を存分に吸った鯛や美味い香の物は、僅かに残った酒の肴として有り難く頂いた。此度の茶漬は、既に出汁を掛けた状態で供されたので、単品の茶漬の如くに出汁を掛けては食べ、掛けては食べ・・・・・・ということは出来ぬが、出汁を啜り、御飯を口に含むと、ふうっと柔らかい落ち着きが体を包む。胃の腑が静かに落ち着き、一連の食事を締めくくってくれる。無論のこと、出汁の香りと味が体の隅々まで沁み渡る心持がしたのは言うまでも無い。

吉翠亭 ステーキ会席デザート今月の特選甘味は、「蜜漬」である。砂糖で清げに調えられた蜜に漬けられてあるのは「さくらんぼ」「スイカ」「抹茶羊羹」「ナタデココ」。それにあしらいのミントを添えてある。
甘いモノが苦手と言っても、こういった重くない甘味は結構好きで食べる。
特に、ハウステンボスのデザートは、どのレストランでも果物を使った軽めのものがあるので、果物が好物の私は他所よりも喜んで食べている。
(ちなみに、比べるのもどうかとは思うが、地元の大型遊園地であるTDRの甘味は、ベタベタして重いアメリカ人好みのものが殆どであるので、私が食せるものは無い。デザートは同行者に押し付けるか食べずにそのまま出てしまうことが多い)
すっきりした蜜は、飲める程度の濃さであるので、これこそ安心して食すことが出来る。自家製の抹茶羊羹も、抹茶と小豆の美味い味が相まって何とも言えぬ優しい味である。果物は推して知るべし。ナタデココの食感がアクセントになって、面白い味わいを生み出していた。

“ステーキ”をメインとしてはいるが、これは、紛れも無く京料理の『吉翠亭』の髄を極めたコース料理である。
京料理に囚われず、他地域の技法や、はたまたフレンチの技法迄もを取り入れてはいるものの、出てくる料理はあくまでも“日本料理(京料理)”である。
食事が終わった後、会計を済ませて立ち去るときも、離れ難い思いが後ろ髪を引いていたのは言うまでも無い。
翌日もまた此処で食事をするのが決まっているというのに……。
その思いがあった故であろうか?この日、翌々日の朝食を連泊メニューで予約してしまったのは。

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