第四章
知っておきたいアニメ・ゲーム業界の歴史
セリフを丸暗記したり、関連スタッフの名前を列挙し、そのクリエイターの他の作品も完璧に網羅していたり、あるいはひとりの声優の熱心なファンだ……これらは、いわば「作品のファン」です。ユーザーの目線ならこれは正しいし、とても楽しいものですが、プロとしてやっていくには、もう少し視点を引いて、業界全体を見わたす必要も出てきます。
ここでは、ビジネス、あるいは産業として見たアニメ、ゲーム業界の歴史について、簡単にですが解説していきます。これらが頭に入っていれば、自分が味わう作品の見え方、新たな作品を目にしたときの評価も少し変わってくるはずです。つまり今後自分が作品に関わったときも少し違って見えてくるのではないでしょうか。
アニメとは何か?
日本では「アニメ」といいますが、これは英語の「Animation」から来ています。アニメーション、ラテン語の「anima」が語源といわれており、その意味はずばり「霊魂」。本来動かないはずの絵が、命を吹き込まれたように動き出すわけですから、こうしたところから名付けられたのではないでしょうか。その起源については諸説あり、2004年にイランのネット新聞「ペルシアンジャーナル」では、出土した約5000年前の土器に「順々に飛び跳ねようとしているヤギ」が描かれていたことから、「これこそが世界最古のアニメーションだ」という主張がなされています。これを起源とするのは議論の余地があるでしょうが、人類は大昔から、止まった絵が突如動き出す様子というのを夢見てきたとはいえそうです。
直接現在のアニメーションにつながるのは、18世紀にヨーロッパで盛んに製作された「フェナキストスコープ」が有名です。それぞれのコマに当たる絵がたくさん描かれた円盤を回し、それをスリットの間から見ると、目の錯覚から動いて見えるという仕掛けです。この絵をフィルムに置き換えたのが現在のアニメーションの原形といえます。
また、現在ではアニメーションとひと口にいってもいろいろな種類があります。たとえば紙や粘土で出来た人形を、少し動かしては撮影、少し動かしては撮影……というのを延々繰り返していき、一連のフィルムにしていく「ストップモーション・アニメ」。「ウォレストとグルミット」や「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」などがその代表です。
これに対し、少し前までテレビ放送用アニメなどの大部分を占めていた手法が「セルアニメ」です。この手法はセルと呼ばれる透明のシートに絵を描いたもの(動画)を何百枚、何千枚と用意し、その1枚を1コマとして繋げてフィルムとしていたことから名付けられました。いわば高度なパラパラマンガ。しかし現在は、これらの作業は、大部分がコンピュータ上で行えるようになっており、これを「デジタルアニメ」「CGアニメ」などと呼んで区別する場合もあります。
アニメ制作現場でのコンピュータは、当初、彩色作業などから用いられてきましたが、1997年、大手制作会社である東映アニメーションが、大部分をコンピュータ上で行う制作手法を確立。従来かかっていた膨大な手間や時間、スタッフの人数を大幅に減らすことに成功します。人件費を少しでも安くしたいのはどこの制作会社も同じです。そのためこの手法は一気に普及し、現在では「サザエさん」のみが、昔ながらのセルアニメの手法を守る珍しいアニメとして認知されるほど、コンピュータを使ったアニメの制作手法は一般化しています。
なお最近では、作品が全編にわたって3DCGで制作されたアニメ「フルデジタルアニメーション」も制作されるようになりました。1枚1枚絵を描いていた時代からすれば、とてつもない進化といえるでしょう。これほどの進化をしたのに、アニメの歴史はおおまかに100年ほどしかありません。そして進化という意味では、ここ50年に集中しています。このことからもアニメ業界が、現在進行形で変化し続ける業界であるということがわかります。さて次はいよいよアニメの歴史について解説していきます。