【萬物相】権力者の名をかたる詐欺(朝鮮日報)
 先輩の友人は病院の院長だ。その院長がこの間、先輩に電話をかけてこう相談した。「何者かが青瓦台(大統領府)の首席秘書官だといって頼みごとをしてきたが、どうもうさんくさい気がして…」

 その一部始終を聞いてあきれ返った。自らを「福祉担当首席秘書官」と名乗ったその人物は、それとなく相手を威圧するような口ぶりで「ある方がそちらへ行くので、彼の言う通りにしてやってもらえるとありがたい」と話したという。その言葉通り、翌日、一人の男がジュースの入った箱を下げて病院を訪れた。病院の取引先の銀行を別の銀行に変えてほしいというのだ。

 病院を経営する院長にとって、医療担当の役人たちは皆「主人」だ。その役人たちの頂点に大統領府の首席秘書官がいる。顔見知りではないが、首席秘書官から電話があったとなれば無視できるはずはない。本当に本人からなのかどうか、「主人」に直接確認することなど考えも及ばなかった。院長は悩んだ末、友人に頼んだ。「本当に首席秘書官からの電話なのかどうか、調べてほしい」。思った通り偽物だった。

 大統領府の陰の実力者とされる李在万(イ・ジェマン)総務秘書官を詐称した事件が発覚した。大宇建設は昨年の夏、「李在万秘書官様」から電話をもらい、50代の詐欺師の男を無条件で採用した。男が提出した偽の履歴書にほとんど目を通すこともなく、翌日から部長として出社させた。男は今年の夏まで1年にわたり部長として勤務したが、業務能力が非常に低く、耐え切れなくなって大宇建設を退職した。KTを相手にまた秘書官を詐称したところ、警察に逮捕された。

 大統領に15年近く仕えたという「李在万」の名前一つで、大企業の社長がころっとだまされた理由は何だろうか。大統領府の実力者たちがこうした人事の頼みごとを全くしてこなかったのであれば、こんな笑劇が果たして起こっただろうか。(中略)

自分の思い通りにさせるため権力者を詐称する事件は、1950年代の「景武台(青瓦台の旧称)詐称事件」以来、毎年発生している。91年には大統領府関係者の名をかたる詐称事件の報道が80件を超えた。時がたっても手口は同じだ。権力者たちが人事に介入しなければ、こうした茶番劇も起こらないだろう。
(引用ここまで)

 韓国で起きる詐欺もこういう構造のものは非常に多いのですよね。
 よくあるパターンとして「実は私は大統領の陰の財政管理者で、マネーロンダリング用の口座を探している……」というような手口で「まずは取引実績を作るためにお金を振り込んでくれ」をよく聞きます。

 で、そうやって集めてきた大金をやっぱり「実は私は大統(以下略)」と言ってきた詐欺師に巻き上げられたという詐欺師がいたというくらいでして。
 韓国では権力者は不正をするものであるという、共通した認識があるからこそこういった詐欺が横行するのですよね。
 権力者は不正蓄財をするものだし、警官・教師は賄賂を受け取るもの。
 スポーツでも権力者は不正を命令できる立場にいます
 江南で教師が「贈り物」を受け取らないとニュースになるくらいに腐敗は身近なものなのです
 いわゆる「ウリとナム」は一般民衆がそういったものから自己保身するための防衛手段のひとつとして発達してきた側面もあるのですよね。

 この記事はそういった韓国社会を生々しく描いていますね。
 薄々、「これは偽物の依頼だな」とは分かっているのですよ。でも、本物かどうかを直接に確認することはできない。
 なぜなら、万が一本物から依頼されたものだとしたら、それを確認したということは疑ってかかっているということになるわけですから。 
 ウリであるはずなのに、ウリに課されている義務を履行していないと思われたらどんな不利益がやってくるか分からない。

 意識の底辺に「権力者は常にうまいことやっている」という共通認識がないと、こういった詐欺が日常に起きるような社会にはならないのですよね。
 というわけで、詐欺師が跳梁跋扈する社会のできあがりです。
 ホント、歪んでいる社会なのですよ。
 そして、いざとなったら自分がおいしい汁を吸う側に行こうと待ちかまえている社会でもあるのですけどね。