韓国で昨年の新規就業者50万人増加、ほとんどが“質の悪い働き口”(ハンギョレ)
ソウル大卒47歳男はなぜ妻子を殺したのか(朝鮮日報)

昨年韓国で就業者が50万人以上増えたが、そのほとんどを50〜60代が主導し、非正規雇用の規模も増えて働き口の質は下がったことが分かった。

  5日、統計庁資料によれば、昨年1月から11月までの就業者増加人員は平均で54万3000人と集計された。 12月の就業者増加数が40万人台に留まっても、働き口の増加幅は50万人を超える見通しだ。 これは2002年の59万7000人以後最多で、2013年の38万6000人と比べても4割増しの水準だ。

 働き口の数は増えたが、質 は落ちている。 生産主力階層である30代の就業者は減少した反面、50〜60代の就業者数が大幅に増加した。 30代の就業者数は昨年2万人減り、20代では5万8000人の増加に終わった。 50代は24万1000人、60代以上でも20万人増えて、50〜60代が働き口増加幅の81%を占めた。 統計庁は「ベビーブーム世代(1955〜1963年生まれ)が整理解雇や名誉退職、引退後に再就職や創業する事例が増えているため」と説明した。

青 年層と老年層の働き口は特に脆弱だ。 統計庁の「経済活動人口調査勤労形態別付加調査」(2014年8月)によれば、60代以上は正社員が54万1000人に過ぎず、非正規労働者は二倍以上多 い118万5000人に達した。 1年前より正社員は5.3%増えたが、非正規労働者は11.1%増加した。 20代も正社員は1年前より1.8%の増加に終わった反面、非正規労働者は5.8%も増えた。 非正規労働者の規模も607万7000人で、1年前(594万6000人)より13万1000人(2.2%)増えて、初めて600万人を突破した。
(引用ここまで)
 「俺の話を、ドラマの最終回みたいに思わないでほしい」

 ソウル市の江南地区にある高級マンションの住民で、妻と2人の娘を殺害する事件を起こした男(47)が、警察の取り調べで語った言葉だ。(中略)

  警察や男の知人たちの話を総合すると、男はエリートコースを歩み続けてきたという。ソウルの名門大学の経営学科で財務を学び、修士学位も取得した。大学の 同期生は「大学院時代は有名な教授の助教(教授の雑務を手伝う大学院生アルバイト。日本でいう「助教」とは異なる)を務めた上、就職もうまくいき、江南に マンションを購入したと聞いて、多くの友人たちがうらやましがった」と話した。(中略)

 だが、2012年12月に韓方病院を辞めた男は その後、定職に就くことができなかった。警察の調べに対し男は「最後の職場でトップが代わり、自分が担当していた仕事はこれ以上不必要だと感じて仕事を辞 めた。すぐによい仕事を見つけられると思ったが、再就職にことごとく失敗し、たまに仕事を紹介されても、自分の理想に合わなかった」と供述した。12年 11月、男はマンションを担保に、銀行から5億ウォンの融資を受けた。

 男はかなりプライドが高かったという。借金を生活費に充てていた ときも、自分の両親と妻の両親には借金があることを知らせなかった。昨年の「先生の日」(5月15日)には大学院時代の指導教授の元を訪ねたが、そのとき も失業していることを話さなかった。毎朝会社に行くふりをして家を出ていたため、2人の娘は父親が失業していたことを知らなかった。(中略)

  男はしばらくの間、先輩や後輩の事務所を転々としていたが、ここ1年間は自宅から1.5キロ離れた考試院(受験生向けの貸し部屋)に通っていた。(中略) 先月29日、男は「知人たちと良才洞(ソウル市瑞草区)に事務所を構え、事業を興すことにした」と言って考試院を引き払ったが、それから約1週間後に家族 を殺害した。
(引用ここまで)

 ひとつの事件を全体へと拡大するのは危険であると書いた上で、江南地区にマンションを買うほどのエリート→40代後半で退職→再就職の難しさというのが韓国の社会構造としてあるのでピックアップします。
 エリートとしてやってきていても、一度離職してしまうと「エリートにふさわしい」就職口というものはなくなってしまうのですね。
 40代後半っていったらまだまだ働き盛り。司馬遼太郎曰く「体力と知力のバランスが取れている最良の時間」……だったかな、確か。

 そういう年代なのに再就職先なし。
 起業するといっていたけども、行き着く先は妻子殺害事件だった……と。

 そして、より高齢者になるとさらに厳しさが増してきています。ハンギョレの統計では60代の就労者は172万6000人。
 そのうち、118万5000人が非正規雇用。69%が非正規雇用。
 年金制度がなかった時代の労働者なので、ほとんどが年金ももらえずに暮らしのために働き続ける。

 出口ないなー。
 もちろん、「幸せな老後」を過ごしている韓国人もいるのでしょう。
 でも、統計の数字からはそういう姿はあまり見えてきていませんね。

統計学が最強の学問である
西内 啓
ダイヤモンド社
2013-01-28