[ニュース分析]韓国の労災死亡率はドイツの4倍、労災率は4分の1?(ハンギョレ)
 現代重工業の下請け労働者のキム氏(35)は2014年7月、電気のブレーカーが下りていると思って変圧器の分離作業をして感電事故にあった。会社側は救急車を呼ばず会社の車でキム氏を病院に連れていった。会社は労災処理をせずに公傷処理(健康保険で治療して会社が別途補償する方式)にするよう要求した。キム氏は医者に「自宅でケガした」と言うしかなかった。彼は「会社が労災処理をしなければ、自分で勤労福祉公団を訪ねて直接申し込まなければならないが、そうすれば名前が知られて他の造船所でも働けなくなる」と話した。いわゆる「労災ブラックリスト」に載るためだ。

 韓国のように製造業の盛んなドイツの労災率は2.65%(2011年基準)だ。韓国は同じ年に0.65%だった。ドイツより労働環境が安全だということになる。しかし労災による死亡率を見ると、ドイツは10万人当たり1.7人(死亡万人率0.17)だった。韓国は10万人当たり7.9人だった。仕事で負傷したり病んだ労働者の割合はドイツの4分の1なのに、死ぬ労働者は4倍以上多い。これをOECD平均と比較してみても、2013年基準で韓国の労災率は0.59%でOECD平均(2.7%)より遥かに低いが、労災死亡率は10万人当たり6.8人で圧倒的1位だ。韓国の労働者は負傷したり病気にかからず突然死んでしまのだろうか。この格差の秘密は、労災の隠蔽だ。さすがに隠し通せない死亡に至る前の、他の労災は労災とは呼べないわけだ。 (中略)

 共に民主党のウン・スミ前議員が、2011〜2013年に社内下請け労働者の健康保険使用内訳を分析した結果によれば、韓国の推定労働災害率は公式災害率の平均23倍に達する。社内下請け労働者38万8475人(3年分合計)が3年間に病医院を訪れS-T傷病関連疾病と診断され国民健康保険公団に請求された保険金が50万ウォン以上の場合を集めて分析した結果だ。S-T傷病とは、韓国標準疾病死因分類コードのうち、頭、首、胸、腹、腰、肩、目などが外的要因により負傷したり中毒になったケースをいう。専門家たちは会社員が病むS-T傷病はほとんどが職業性疾病と見る。 (中略)

 下請け業者の状況はさらに深刻だ。国家人権委員会が2014年12月に発表した報告書「労災危険職種実態調査」によれば、職場で負傷した造船、鉄鋼、建設プラントの下請け労働者343人のうち、労災処理をされた人は36人(10.5%)に過ぎなかった。個人が費用を負担したり、まったく治療を受けられなかったという人も122人(35.6%)もいた。残りの185人(53.9%)は、元・下請け業者の費用で処理(公傷処理)された。労災処理をしなかった理由を尋ねると、「元・下請け業者の不利益を憂慮して」という回答が39.6%で最も多く、「元・下請け業者が労災保険処理を出来ないようにした」(29.4%)と「労災保険申請手続きが複雑で」(9.5%)が後に続いた。
(引用ここまで)

 韓国ではヒヤリハットで起きた怪我は「労災」として認められない。
 でも、労災死までは隠蔽できないので、カウントされてしまう。
 なので韓国の労災事故は少ないことになっている。
 労災率はドイツの1/4。
 つまり、韓国の安全度はドイツの4倍。

 なかなかに面白い構造。
 「上位層の実際の収入が不明」なので、そこから導き出されるジニ係数から見るとはアメリカや日本よりも公平性が高い社会になっている、ということにちょっとつながりますかね。

 この事例のなにが怖いって、「どういうシーンで労災があったのか」というデータの収集ができないこと。
 どういうシーンで怪我があったのかということが分からないから、その対策も打ち出せない。
 もちろん、こういう対策に有効なビッグデータも適用できない。

 まあ、「仮想的な労働安全性」は高くなっているようですから、それはそれでよいんじゃないでしょうか。

入門テキスト 安全学
向殿 政男
東洋経済新報社
2016-03-18