「キューバ革命」に突き進む韓国(日経ビジネスオンライン)
──前回は、韓国の自称「名誉革命」が、既得権層を打ち倒す「ロシア革命」に向かい始めた、という話でした。

鈴置:それだけではありません。米国との関係を断絶する「キューバ革命」に至る可能性も相当にあります。大統領候補と見なされる政治家が一斉に「米国離れ」を叫び始めたからです。

 世論調査で支持率1位を占めることが多い「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表。12月15日にソウルの外信記者クラブで以下のように語りました。

 聯合ニュース「文『THAADは次の政府に先送りすべきだ・・・誰がなるかは分からずとも、政権交代は確実』」(12月15日、韓国語版)から引用します。

・朴槿恵大統領の職務が停止され首相が権限を代行する中で、THAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)を強行するのは望ましくない。次の政権で十分に議論し、外交的努力を尽くして合理的な判断を下すべきだ。
・(日本との慰安婦合意に関しては)正当性を認めることが難しい。合意に関する両国の説明が異なるだけに、合意を(再)確認する必要がある。 ・(日本とのGSOMIA=軍事情報包括保護協定=については)この協定を通じ受け渡しする情報が何なのかに対し、十分に見直し検討する必要がある。

 THAADもGSOMIAも、そして実は「慰安婦合意」も米韓同盟の紐帯です。その3点セットをすべて見直す、と表明したのです。「文在寅政権」は米国との同盟を打ち切る方向で外交政策を組み立てると宣言したのも同然です。

 文・前代表は翌12月16日にも「大統領に当選したら最初にどこに行くか」との質問に「躊躇せずに言う。私は真っ先に北朝鮮に行く」と答えました。

 これも明確に「離米路線」を打ち出したと受け止められました。朝鮮日報が「文在寅『国民の憲法意識がすなわち憲法・・・弾劾棄却すれば次は革命しかない」(12月17日、韓国語版)で報じています。(中略)

──安保問題に関しほかの候補は?

鈴置:野党候補は皆「3点セット」見直し論です。要は「離米派」ばかりです。朴大統領の行ったことはすべてひっくり返す、というのが今の韓国のムード。「ABP(Anything but Park)」なのです。

 中でも、この3点セットは朴槿恵大統領の「悪行中の悪行」とされています。大統領選に立候補する者なら「NO!」と叫ばなくてはなりません。

 激しい発言から「韓国のトランプ」と呼ばれる李在明(イ・ジェミョン)城南市長の発言に注目する必要があります。李在明市長は「日本は敵性国家だ」とまで言い出し、それを理由に「3点セット」に強く反対しています。

 支持率調査あるいは人気投票で2位、あるいは1位に付けることもある政治家です。この人の発言に引っ張られ、与党系含めすべての候補が「反日・離米」に傾いて行くと思います。
(引用ここまで)

 鈴置氏のいつものコラム。
 韓国の次期大統領候補によって、韓国には「キューバ革命」が起きる、すなわち反米政権になるであろうというお話ですね。
 何度か楽韓Webでも語っていますが、パク・クネは「親日媚米政権」であったといまの韓国では考えられています。
 実際の政治的なスタンスはそうではない。むしろ中国側に組み入れられる寸前まで行っていたのですが、現在の韓国では「パク・クネ=親日媚米」であるという構図が描かれているのです。
 慰安婦同意、THAAD配備、日韓GSOMIA締結の3本セットによってそのように考えられている……というか野党側が描いた構図、もしくは韓国人全般が信じたがっている構図ではそのようになっています。

 そして、これまた何度も書いてきたように韓国の政権交代は易姓革命の側面を大きく持ち、前の政権を可能なかぎり否定することが宿痾となっています。
 今回の弾劾によってそれはかつてないほどに強化されており、どれだけパク・クネ政権の業績を否定できるかがひとつの目安となっているのですね。
 特にパク・ウォンスン現ソウル市長イ・ジェミョン現城南市長はそうすることによって支持を大きく伸ばしています。ムン・ジェインもそれに引っ張られる形で発言を過激化させている。
 いわば、次の政権のレゾンデートルが「反日反米」であり、大統領候補たちはどれだけ反日反米であるかをアピールすることが選挙活動の大きな争点となってしまっているわけです。

 そもそも共に民主党は反米指向であったのは間違いないのですが、それがブーストされているのですよ。
 そして、韓国人が「それこそがパク・クネ政権を否定することになる」と是認することでかつてないほどに高まっている。
 もはやその過激化を止める手段はないように見えるのですけどね。
 一種の社会実験としてどこまで行くのか見てみたいという気はしています。

世界反米ジョーク集 (中公新書ラクレ)
早坂隆
中央公論新社
2005/1/10