[社説]民主主義の道しるべを新たに打ち立てた市民革命の勝利(ハンギョレ)
 愚かで極悪非道な大統領は、結局権力の座から追い出された。事必帰正。国民を蔑視し国家権力を私物化して国の根本を揺るがした罪に対する当然の因果応報だ。長い冬が去り春が来る町角で、腐って病気にかかった枝は落ちた。そしてその場に新しい芽生えが始まっている。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領罷免の外的形式は憲法裁判所の弾劾認容だが、実際的内容は常識と当然な道理の勝利だ。これは、左右の問題でも、進歩と保守の対決でも、理念と階級の問題でもない。冬の間に広場で燃え上がったろうそくの炎は「法治と民主」に向けた渇望であったし、憲法裁判所は「全員一致の罷免賛成」でこれに答えた。「大統領の違憲・違法行為は、憲法守護の観点から容認できない重大な法違反行為」であり「大統領罷免により得られる憲法守護の利益が圧倒的に大きい」という憲法裁判所の決定は簡潔で的を射ている。ろうそく市民が流した涙は、不正な権力によって汚された世の中を浄化し、炎に宿った生命力は国を新たに脱皮させようと力強くゆらめいている。

 法治主義は統治者の恣意的支配を排撃することから始まる。憲法の「憲」は、何人も社会構成員に対し害を及ぼせないよう、目と心で徹底的に監視するという意味を含んでいる。大韓民国が一瞬にして奈落の底に落ちたのは、合理的な法の支配ではなく権力者の自分勝手な支配が横行したためだ。憲法裁判所は傍若無人な恣意的統治にとどめを刺し、国家に害悪を及ぼした最高権力者を厳しく懲治することによって法治主義の大義を再び打ち立てた。

 大統領の罷免は国民にとって羞恥であると同時に誇りでもある。ねつ造された神話と虚像にだまされて傲慢無道な資格未達者を国家の最高指導者に選んだことは復元が難しい失敗であった。だが、私たち国民は誤りを自ら原状回復させる偉大な底力を発揮した。「水は船を出すことも、ひっくり返すこともできる」という古の先賢の言葉を身をもって証明した。これを通じて民主主義を一段階進展させた。2017年3月10日は、世界史的にも類例を探し難い市民革命の貴重な勝利の貴重な勝利の日として歴史に長く記録されるだろう。 (中略)

 朴前大統領と彼女の支持者は、もう狂気の濁流から抜け出さなければならない。大統領に対する弾劾反対は、灯りに向かって無為に飛び込んでいく夏の虫に過ぎないことが、憲法裁判所の決定により確認された。それでも無駄になった迷妄と盲信から抜け出せずに、このままずっと太極旗を辱める行為を続けるならば、それは国の不幸であり本人の不幸だ。

 憲法裁判所は単に朴大統領の弾劾可否だけを決めたのではない。国の根幹を新たに立て直し、今よりもっと良い国を作らなければならないという課題が、そこには含まれている。憲法裁判所の決定は、弾劾列車の終着駅であり、新しい挑戦に向けた出発駅だ。国の根幹を新しく立てることは、単に法治主義の確立、最高権力者の節制などにとどまらない。“ヘル朝鮮”という言葉で代弁される社会全般の不条理と不平等、社会の随所で乱舞する反則と特権、政官財界の強固な既得権体系など、これまで韓国社会に重々積み上げられた積弊の清算がそれだ。
(引用ここまで)

 うわぁ、今回の弾劾に関して危惧していたことが全部ここに込められてますね……。
 韓国の停滞や失敗をパク・クネ個人のミスによるものであると認定してしまい、その極悪犯を正義の剣で裁いたのだから韓国には明るい未来しかない、という勘違いです。

 そりゃまあ、古代の「皇帝」にすら比肩される韓国の大統領制度ですから。
 大統領の手腕によるところもあるでしょうよ。特に失業対策は青年希望ファンドでの寄付なんかに頼らず、もっとできることがあったんじゃないかとは思います。
 韓国の問題は構造的なものであって、大統領ひとりが政策でどうこうできるものじゃないのですよ。

 パク・クネ政権を常に目の敵としていたハンギョレの社説ですから、ことさらそういう部分が強調されているのですが、これは別にハンギョレだけの意識ではないのですよね。
 極悪人のパク・クネを裁いて、正義の象徴であるムン・ジェインが大統領となって、韓国は端から端までよい世の中になるのだ、なんていう気分が韓国人に蔓延している。
 特に格差がひどいとされている若年層はそういう意識になっている。
 この記事でいうところの「市民革命の勝利だ!」と。
 いうなれば「映画の途中」なのに、クライマックスシーンになってしまっているのですよ。
 
 これからまだまだ物語は続く、というよりもこれからが本番。
 なのにもう多幸感でいっぱい。もう自分たちはこれから幸せになるしかない、みたいな話になっている。
 実際には大統領を罷免しただけで韓国でなにが変わったわけでもない。
 構造も制度も風習も法律もなにも変わっていないのです。
 ろうそくデモに参加していた人間が成長したわけでもなんでもない。大統領が辞めたからって食べなければ腹は減るし、食事をすれば金も減るのですよ。
 希望を持てないままならともかく、一度希望を持ってからのヘル朝鮮への強制送還はきついでしょうね。精神的に。 
 保守派が大暴れしているのは流行の先取りだった、なんてことにならなければいいですね。

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