【社説】韓国の非正規社員、95%は中小企業なのになぜ財閥が反省?(朝鮮日報)
非正規職めぐる対立を深める経総…新政府は「財閥責任論」で突破目指す(ハンギョレ)
 国政企画諮問委員会の金振杓(キム・ジンピョ)委員長は28日「韓国における最も大きな既得権は財閥だ」「社会における改革や大妥協を達成するには、まずは財閥が反省しなければならない」と発言した。これに先立ち韓国経営者総協会(経総)の金栄培(キム・ヨンベ)副会長が政府の非正規雇用政策を批判した際、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と同委員会はこの批判に気分を害し、経総に対して強い口調で逆に反省を求めた。財閥に問題があることや改革が必要なことくらいは誰でも知っている。しかし非正規社員問題の議論で財閥改革にばかり言及するのは完全に的外れだ。

 非正規社員は大企業よりもむしろ中小企業あるいは零細企業にとって大きな問題だ。韓国における非正規社員は644万人いるとされているが、うち95%は中小企業で働いている。また従業員5人未満の零細企業では社員の半分が非正規雇用だ。政府が「反省せよ」と非難している経総も会員の90%は中小企業だ。 (中略)

 大企業における正社員の賃金を100とした場合、大企業の非正規社員は62.7、中小企業の正社員は52.7、中小企業の非正規社員は37.4だ。つまり大企業の非正規社員の賃金は中小企業の正社員よりも多いのだ。もし政府が大企業ばかりを標的とし、非正規社員を正社員にすることだけを目標とすれば、ごく少数の大企業で働く社員と多くの中小企業で働く社員の賃金格差は一層広がってしまうだろう。つまり政府が社会における二極化を一層深刻化させ、その結果、中小企業の人手不足も解決の兆しがますます見えなくなってしまうはずだ。 (中略)

いずれにしても政府による今の非正規社員対策がこのまま進めば、問題はさらに大きくなる可能性の方がむしろ大きい。非正規社員を正社員とするのであれば、大企業ではなくむしろ韓国企業全体の95%を占める中小企業を念頭に、まずは同一労働同一賃金制度の定着を先に進めていかねばならない。
(引用ここまで)
 韓国経営者総協会(経総)の「非正規職政策に対する批判」で触発された財閥と新政府の間の非正規職をめぐる対立が、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の強力な発言にもかかわらず、収まるどころか広がりを見せている。経総が従来の立場を固守する中、新政府は「財閥責任論」を雇用政策の強力な推進力として掲げており、今後の事態の展開が注目される。(中略)

チャン・ハソン室長は普段から「労働市場の不平等や二極化の責任は大企業にある。ここ20年間、雇用減らし、非正規職をむやみに増やして財閥企業や株主、既得権層だけ恩恵を享受してきた」と批判してきた。チャン室長が書いた『なぜ憤るべきなのか』によると、去年15年間、国民総所得の中で家計所得の比重は1990年の71.6%から2015年の62.0%へと減っている反面、企業所得の比重は同じ期間で17.0%から24.6%に増えた。新政府の経済チームが雇用と非正規職問題に対する診断と処方において「財閥責任論」を展開する根拠になっている。
(引用ここまで)

 先日、ムン・ジェインは「大企業こそが二極分化を招いた原因である」として、「(大企業は)真摯に反省しなければならない」と述べました
 それに対するメディアの反応ですね。
 朝鮮日報は「非正規雇用の95%は中小企業でのものなのに、なぜ財閥が反省しなければならないのか」というもの。
 全体を引き上げなければ意味がないとしています。

 で、ハンギョレの話は「非正規雇用が中小企業に集中しているのは、韓国の利益を財閥が握っているからだ」というもの。
 本来得られていたはずの利益を吸血鬼である財閥に吸い取られていたから、中小企業は非正規雇用でしか雇えないのだ、と。政権側の立場に立った社説です。

 まあ、どちらの話も理解できなくはない。
 ハンギョレはムン・ジェインを最初から支持している左派メディアで、朝鮮日報はその左派らから「おまえらもパク・クネの一員だろ」と言われる右派メディアであるというのが、この際の最大の原因ですけどね。

 ただ、韓国企業の競争力の源泉というのはこうして財閥だけに経済の中枢を握らせ、中小企業に勤める大多数の韓国人から搾取することにあるのです。
 塩田奴隷事件はそれが極端な形で生じているだけで、韓国の経済社会構造をそのまま写し取ったものなのですよね。相似の関係にあるというべきか。
 内需は絞れる部分は絞って、利益の大半は輸出でまかなう。そのためには一部を除いて労働者を搾取しなければならないという構造です。

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 画像はハンギョレから。
 100大財閥が雇用の面では4%に過ぎないというのは、これまでも語られてきましたね。
 以前に大卒者が30大財閥に入れる確率は1.6%前後であるというように計算しましたが、間違ってはいなさそうです。
 逆にいえば、韓国の大企業がまともな給料を出せるのはそのていどの人員まで、ということなのです。
 財閥絶対殺すマンが公取委員長候補となっていますが、財閥をどこまで締め上げるのか。
 こういった雇用問題だけでなく、法人税率も上げることを宣言しています。
 このグローバル時代の中、規制でがんじがらめにしたらどの企業も韓国脱出を図ると思いますけどね。
 すでにサムスン電子最大のスマートフォン工場はベトナムにあります。ヒュンダイ自動車は国内への投資をほとんどやっておらず、既存工場のライン改修しかしていないとの話。新規工場はすべて海外だそうです。
 韓国国内はキレイになるかもしれませんが、そこに企業はなにもなくなったりするんじゃないでしょうか。

“超”格差社会・韓国 (扶桑社新書)
九鬼太郎
扶桑社
2009/8/28