韓経:【コラム】ソウル大をなくそうだって?(中央日報)
 過去、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の時に話し合われた「ソウル大廃止」が文在寅(ムン・ジェイン)政府下で実現しそうな雲行きだ。新政府が発足するや、ソウル大を全国の主要国公立大とひとまとめて学生選抜、学士運営、学位授与などを共同運営しようという「国公立大統合ネットワーク」が推進されているからだ。

 ソウル大に象徴される競争中心の教育体制、これに伴う学閥序列化社会、生まれながらにして裕福ないわゆる「金の箸とスプーン」階級の学閥世襲などを打破しようというのがこの政策が望んでいる効果であろう。 (中略)

名門ソウル大の学位を地方国公立大が共有すれば彼らも「上向き平準化」されるだろうと強弁する人々もいる。だが、全国30校の国公立大を統合すれば、その算術平均と同じ「下方平準化」がもたらされるということが常識的に予想される。

 ソウル大廃止案は今日充満している韓国社会の反知性主義を反映している。反知性主義は学問・理性・知識などに対する不信・排斥を表す思想だ。したがって、その産室である一流高校、一流大学、一流知識人などを忌避する。こういうものは課外授業、その他物質的支援が可能な富裕層の享有物であり、主に既得権階級を世襲させる役割を果たしていると主張する。このような論理で韓国の政治的・理念的集団は、少数の理性的市民よりも多数大衆に迎合するポピュリズム世論を作って広めてきた。例えば1等を失格させれば残りの選手たちにみな優勝させる機会が生まれるという宣伝のようなものだ。

このような反知性社会の致命的問題は、優秀な集団が作る社会的価値と成果をさげすみ排斥して、社会の随所から「一流」を退出させていることだ。どの社会でも1等集団は共同体の精神的・物質的文明を創造する主体となり、残りの国民がその受恵者となる。一流を尊重する国家社会では大学・企業・文化・芸術など、すべての領域で一流が無数に増えて普通の人が一流になる機会も増える。これを排斥すれば、究極的には下流国民だけが残る低級国家になるのは自明の道理だ。
(引用ここまで)

 ソウル大学というのは、言ってみれば韓国のピラミッド構造を象徴する存在なのです。
 高校に入ることすらギリギリであったノ・ムヒョンにしてみれば、恨の対象そのものだったでしょうね。
 また、ムン・ジェインもソウル大学受験に失敗して一浪、授業料免除で一流大学とは呼びがたい慶熙大学校に入ったという経緯があります。
 ふたりとも「ソウル大学を解体したい」という動機にはあふれているということでしょう。

 ちなみにノ・ムヒョン、およびムン・ジェインと同じ極左属性を持っているソウル市長のパク・ウォンスンも似たような構想を述べていたことがあります。

朴元淳ソウル市長、「ソウル大学を事実上廃止する」(中央日報)

 ソウル大学を事実上廃止して、他の国公立大学でも同じサービス、授業を受けられるようにするという構想です。
 他のふたりとは異なり、パク・ウォンスンはソウル大学に入学しているのです。
 ただし、学生運動のやり過ぎで除籍させられています。より恨は深そうですね(笑)。

 「同じ国公立大学なのに、受けられる授業に差があるのはよろしくない」という建前はなかなか反論しづらい部分でもあるのですよね。
 ただ、エリートにはエリートとしての教育が必要なのです。韓国の場合はそれが行きすぎているのは間違いないのですが、その補正のために象徴としてのソウル大学解体というのはなかなか……。
 ポル・ポトが草葉の陰で「同調者がいた」と喜んでいることでしょうね。

ポル・ポト政権下を生き延びた日本人の話
戦火と混迷の日々 悲劇のインドシナ (文春文庫)
近藤紘一
文藝春秋
1987/2/10