サムスン副会長裁判、結審直前で急展開(JBPress)
 絶好調の業績だが、サムスン電子やグループ企業の首脳の間には、浮かれた様子はまったくない。それどころか、「重苦しい空気が漂っている」(韓国紙デスク)という。

 というのも、グループの事実上の総帥である李在鎔サムスン電子副会長が依然として拘置所にいるからだ。(中略)

 李在鎔副会長とサムスングループは、副会長によるグループ経営権継承を支援するよう朴槿恵前大統領に請託し、この見返りを提供したということだ。いったいどういうことか。 (中略)

 そんなおり、判決まで1か月という時点で、ここにきて突然、李在鎔副会長とサムスンを不安にさせる「サプライズ」が相次いでいるのだ。

 7月12日、李在鎔副会長の公判に、崔順実氏の娘が「証人」として登場した。(中略)

 娘の証言では、サムスン側は、「崔順実氏の娘」だけを支援したということになり、これまでの崔順実氏やサムスン側の主張とはまったく異なる内容だ。

 この証言が出た2日後の7月14日には、もっと興味深い「サプライズ」が続いた。

 この日午前、ソウル中央地裁の入り口に、就任したばかりの金尚祖(キム・サンジョ=1962年生)公正取引委員長が姿を見せた。地裁に公取委員長が何のために来たのか?

 李在鎔副会長の裁判の証人として出廷したのだ。

 「年休を取得して個人の資格で来た」 (中略)

 「結審直前に、崔順実氏の娘、公取委員長が相次いでサムスンと李在鎔副会長に不利な証言をした。政権が、合併に関与したかのように読める文書まで出てきた。政権の意向や世論が、判決に影響を与えるとは言いたくないが、判決に影響がないと言い切る自信もない」

 韓国紙デスクはこう語る。

 8月末に出る判決。すでにこの時点で、6か月間、拘置所生活を送ることになる李在鎔副会長にとって、運命の判決が近づいている。
(引用ここまで)


 画像はソウルのサムスン電子本社。
 サムスン電子の実質的総帥のイ・ジェヨン副会長が2月に逮捕状再請求が通ってしまって、逮捕されてから約半年。
 あれ自体もけっこうな衝撃でしたが、半年にわたって独房に拘束されたままというのもちょっとした衝撃。
 現状のサムスン電子には会長のイ・ゴンヒもいない(いや、まだ存在はしているけど)、副会長のイ・ジェヨンもいない。
 でも、半導体のスーパーサイクル状態でめっちゃ収益上がってますけどね。……もう1年、自民の政権復帰が早ければエルピーダもこの好景気を(死んだ子の年を数えるモード)。

 さて、8月末にイ・ジェヨンに対して判決が出る予定となっているのですが、これについてはもう有罪間違いなし。
 記事中に詳しいのでここではざっくりと書きますがイ・ジェヨンはサムスングループ継承にあたってサムスン物産と第一毛織を合併させるという必要性に迫られたのです。
 このとき、大株主のヘッジファンドから「合併時の比率がおかしい」と反対されたのですが、さらなる大株主の国民年金が賛成に回って合併成立しました。ちなみにそのヘッジファンドは後日、情報開示に問題があるとして捜査の手が入りました。いつものことですが。
 この国民年金が賛成に回るようにとパク・クネへの口利きをチェ・スンシルに依頼したのではないか、という疑惑が持たれています。その主体が法人としてのサムスン電子なのか、イ・ジェヨンなのか微妙なところではないかと感じているのですが。
 チョン・ユラを勝たせるために超高性能な馬を買い与えたりしたのが後援にまわっていたサムスン電子で、これらが賄賂にあたるのではないかという疑惑ですね。

 で、その裁判に「財閥絶対殺すマン」こと現在の公取委員長であるキム・サンジョまで参戦。
 「公休を取って私人の資格できた」ということですが、そもそも公取委員長がこうして法定で証言すること自体が異例。
 以前からムン・ジェイン政権は「持ちすぎている財閥を叩いて格差を小さくする」という政策方針であったため、その方向性を堅持できるであろうキム・サンジョを強行任命したほどなのですよ。
 そのキム・サンジョがこうして証言していることで、裁判所は政権の意向を汲み取って有罪判決を出さざるを得なくなったわけです。

 財閥として韓国そのものよりも大きな存在と化しているサムスングループの首根っこを、ムン・ジェイン政権は抑えつけることができるのか。
 イ・ジェヨンへの判決はその試金石であり、有罪以外はありえない状況になっていると思います。

ルポ 絶望の韓国 (文春新書)
牧野愛博
文藝春秋
2017/5/19