【社説】企業に賃上げを迫り海外移転は阻む韓国政府(朝鮮日報)
 韓国産業通商資源部(省に相当)の白雲揆(ペク・ウンギュ)長官は、繊維業界の代表と会い、「国内工場を閉鎖して海外に工場を移転することを自制してもらいたい」と要請した。経営難と政府による急激な最低賃金引き上げにより、100年以上の歴史を持つ京紡、創業80年の全紡が韓国国内の工場閉鎖と海外移転を発表したことを受けた要請だ。席上、繊維労組の委員長ですら、最低賃金引き上げの衝撃緩和策を提言したとされる。

 小さな雑貨店を経営してみただけで、生産性と売り上げの伸びを上回る賃上げは絶対に持続不可能だということが分かる。しかし、最低賃金引き上げに際し、政府は産業界の事情を一度も聞こうとはしなかった。「積弊」と決めつけ、黙らせたのだ。韓国の繊維産業は昨年、138億ドルを輸出し、世界9位の規模だ。そんな繊維業界にとどめを刺し、工場稼働をストップさせるようとしているのは、海外のライバル企業ではなく韓国政府だ。

 韓国の製造業生産額の13%、雇用の12%を占める自動車産業はさらに深刻だ。2011年に日本では「現代自動車が成功した秘訣(ひけつ)をしっかり検討すべきだ」との声が上がった。わずか6年で状況は変わった。日本のトヨタは世界首位の奪還に期待を膨らませているが、現代自労組は6年連続で賃上げストライキを行うという。韓国車の世界市場での存在感は急速に揺らいでいる。そこに通常賃金算定対象の拡大という事態が押し寄せれば、共倒れしかねにといっても決して誇張ではない。このため、韓国自動車産業協会は「このままでは海外に出ていくしかない」とする声明を出した。政府がやったことと言えば、同協会に圧力をかけ、声明を撤回させたことだけだ。

 繊維や自動車だけでなく、半導体などごく一部の品目を除き、韓国経済全体がそんな状況だ。それでも来年に最低賃金を16.4%も引き上げることを決めてしまった。それに伴う対策が何かあるわけでもない。国民の税金3兆ウォンで民間企業の賃金を補填(ほてん)するという奇想天外な対策が示されただけだ。その一方で、このままではやっていけないという企業に「海外移転するな」と圧力をかけている。

 17日で文在寅(ムン・ジェイン)政権発足から100日を迎える。脱原発など韓国経済全体に大きな影響を与える政策で論議が絶えなかった。経済政策はコインの裏表のように利害関係が絡み合っている。一方を「善」、もう一方を「悪」と位置づけ、一方だけに偏った政策を取れば、必ず副作用が生じる。政府は今後、産業界の声に耳を傾け、経済政策のスピードを調整していかなければならない。
(引用ここまで)
 京紡が最低賃金15.6%上昇が3年続くというバカな事態に耐えられないということで、最新の紡績機械とともにベトナムに脱出するという宣言をしたことは記憶に新しいと思われます。
 それに対してムン・ジェイン政権は「海外脱出を控えてほしい」というお願いを繊維業界に対してしたそうですよ。
 さらに「通常賃金裁判で労組が勝ったら海外脱出」と宣言した自動車製造企業に対しても宣言を取り下げさせたそうです。

 「まるで皇帝」とすらいわれる圧倒的な権力を持っている大統領からの「お願い」を断ることのできる企業がどれだけあるのかって話なのですが。
 それでも典型的な軽工業である繊維はもう韓国にはいられないでしょう。
 来年の最低賃金が7530ウォンになるというだけであればともかく、2019年には8700ウォンていどになるだろうし、2020年には1万ウォンという最低賃金が待ち受けているわけです。
 韓国政府から人件費補助が得られるのですが、それは中小企業だけで京紡のような大企業には関係なし。
 であれば人件費で致命的な被害を受ける前に工場移転をしようというのがまともな経営者のすることです。
 民主党政権時の円高容認のときもそうだったのですが、国内での雇用を守って企業が倒産するようであれば事業を行う意味がないのです。

 工場等の海外脱出というのは予想される……というか、確実に到来するであろうマイナス要素に対して、企業としては当然ともいえる対応です。
 それに対してムン・ジェイン政権は「雇用を守る」という大義名分を振り回して「お願い」をしていますが、それがどこまで通用するのか。
 その一方で「最低賃金を守らない雇用主に対しては3倍までの懲罰的制裁金を課す」と閣僚からの発言がありました。

・最低賃金を経済構造が許容する以上に上げる。
・非正規雇用はすべて正規雇用に転換。
・企業の海外脱出を許さず、雇用を守る。
・違反した企業には懲罰的制裁金。
・原発ゼロ、代替エネルギーは太陽光発電。

 果たして「サヨクの夢の国」を作ることはできるのか。
 韓国はすでにPPPであれば1人あたりのGDPは3万ドル超、一人あたりの名目GDPでも2万ドル台後半。
 ここまできて経済構造を根本から作り替える……というか、根本から破壊して構築し直すようなことができるのか。
 実験国家としてとても注目していますよ。
 楽韓Webはムン・ジェイン政権の経済政策を応援しています!

経済ヤクザ (角川文庫)
一橋 文哉
KADOKAWA / 角川書店
2017/2/25