【萬物相】「止まらなかった」ではなく「止まれなかった」240番バス(朝鮮日報)
 5年前、「菜鮮堂」というしゃぶしゃぶ専門チェーン店で、不親切な店員ともめて暴力を振るわれたという妊婦の書き込みがインターネット上に掲載された。この妊婦は「妊娠の事実を知りながら、おなかを足で蹴られた」と訴え、ネットは大騒ぎになった。この店のサイトは炎上し、謝罪文を出した。ところが、その後すぐにどんでん返しが待っていた。警察が店内の防犯カメラで確認したところ、トラブルはあったがおなかを足で蹴ってはいなかったことが分かった。今度は妊婦側が「国民をだました」と総攻撃を浴びた。これがいわゆる「菜鮮堂事件」だ。(中略)

 11日、ソウル市バス運送事業組合のホームページに、ある市民が投稿した。「午後6時ごろ、建大入口駅近くのバス停留所で子どもが1人で降りてしまい、母親が『ドアを開けて』と泣き叫んで頼んでいるのに、240番バスの運転手が運行を続けた」という目撃者の告発だった。この書き込みには、「次の停留所で泣きながら飛び降りた母親に向かって、運転手はののしり言葉を浴びせた」ともあった。同日夜からバス運送事業組合のホームページや掲示板には「運転手を処罰せよ」という非難が寄せられた。大統領府のホームページにも処罰を求める請願文が投稿された。ネット上には「240番バスの蛮行」という記事が広まった。

 だが、今回もどんでん返しのきっかけになったのはバス内の防犯カメラだった。ソウル市が確認したところ、バスの運転手は子どもが降りた停留所で16秒間ドアを開けてから出発、母親が一足遅れでバスを止めるよう要求した時は既に第2車線に入っており、停車が難しかったという。運転手もののしり言葉を発していなかったとのことだ。「運転手はバスが出発して10秒後に左右を見回しているが、その時に問題に気付いたと見られる」とソウル市では言っている。

 不確かな事実に基づいた告発が大衆の怒りに火をつけ、何の関係もない人を責めて被害者にするという出来事が繰り返されている。刺激的な「ネタ」があると集団催眠にでもかかったかのようにたかり、たたくという行為がネットの世界での病理現象として定着してしまった。ネットやソーシャル・メディアの発達により、今や誰もが自身のメディアを持っている時代だ。無責任で不誠実な書き込み一つが誰かを殺す凶器になるかもしれない。
(引用ここまで)

 韓国でバスの運転手といえばタクシー運転手と並んで質の悪いものとして挙げられる職種です。
 ソウルではだいぶマシになったとも聞くのですが、元々の基準が相当に低いのでなんともってところですかね。
 少なくともテグでバスに乗ったときにはキャリーバッグが吹っ飛ぶくらいの運転であったことは書いておくべきでしょう。

 なので、最初にこのニュースを目にしたときはさもありなんとか思っていたのですよ。
 ところが翌日になってこのバス運転士の娘という人が出てきて「父は無罪だ」と言い出して、さらにバス会社からも防犯ビデオの映像が出てきてやむを得ない処置だったということが分かってきています。
 この母親の方こそがモンスタークレーマーで、自分が有利なように出来事をでっち上げたということですね。
 娘と一緒に降りることができなかったという自分のミスを他人に転嫁するために「幼女と引き裂かれた自分」というものを演出し、さらには「暴言を吐かれた」という「バス運転士によくある」ことを付け加えた。

 以前の韓国社会であればそれも通用したのでしょうが、いまでは「それではこちらの防犯カメラ映像をご覧ください」となってしまう。
 かつてメジャーリーガーだったカン・ジョンホがレンタカーのBMWで自損事故を起こしたときに、同乗者が身代わり出頭しようとしたのですが警察がドライブレコーダーを確認してしまったので本人が罪を認めざるを得なかったなんてこともありましたっけ。

 以前にもちょっと書いたのですが、「なにがあったのか、映像で真実が分かってしまう」ということから、韓国社会と防犯カメラやドライブレコーダーとの相性はとことん悪いのですよ。
 なにしろ、証言が通用せずに「真実」が分かってしまうのですからね。
 炭鉱で死ぬより辛い目にあった、だの。
 日本陸軍が捕らえにきた、クリスマス休暇があっただのいう証言が通用しなくなってしまったのです。
 残念なことに、ですかね。大半の韓国人にとっては。