【寄稿】「まだ韓国で起業するのですか」(朝鮮日報)
 まず公正取引委員会が組織を拡大し、不公正取引調査を強化した。朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代に企業を悩ませた特別税務調査も強化されそうだ。さらに公取委の専属告発権廃止、支配構造改善、集団訴訟法導入、社会的責任公示などさまざまな規制が待ち構えており、企業の懸念は山積している。

 最低賃金引き上げと通常賃金の範囲拡大も打撃だった。関連業界は「このままでは韓国を脱出するしかない」と反発したがどうにもならなかった。今後正社員転換、労働時間短縮、役員報酬の公開まで実現すると、人件費がさらに上昇するのは火を見るよりも明らかだ。賃金上昇を通じた「所得主導成長」の実験が再び始まっているが、今回も失敗すれば、その副作用は90年代とは比べ物にならない。

 それよりも士気を低下させているのは企業経営者を罪人扱いする社会のムードだ。罪を犯せば罰せられるのは当然だが、最近は政治的に犠牲になるケースが増えている。四大河川事業に協力した企業経営者が朴槿恵政権下で一斉に逮捕され、防衛関連企業は政権が代わるたびにひどい目に遭う。サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長と役員は大統領の言葉に順応した罪で逮捕された。こんな具合ならば、自由でいられる企業経営者などいない。最近は国会までが企業経営者を呼び出して叱りつけている。
(引用ここまで)

 サムスン電子の実質的支配者である副会長のイ・ジェヨンが5年の実刑判決を受けたときに、ネチズンの多くは「5年? 50年の間違いじゃないのか」みたいな反応をしていました。
 サムスン=悪、という構図が国民の中で固まっているのですね。
 その後、法曹界の一部からも「なんで5年なんだ」みたいなコメントが出てきて唖然としたのですが。
 中国の「水に落ちた犬は叩け」ということわざがそのまま通用している国なのでやむなしかなとも思っていたのですが。

 結果として見事に韓国での企業活動が縮小方向に向かっているのですよね。
 大企業は国民からも、政府からも、裁判所からも見放されている。
 見放されているだけならまだしも、敵扱いを受けている。なにしろ、さっきのイ・ジェヨンなんて「物証はないが心証では確実」で有罪判決、それも実刑判決ですからね。
 韓国最大の企業にしてこの扱い。
 最大の企業だからこそ、というべきか。ろうそく革命の精神に則っているってところですかね。

 最低賃金を15%以上上げておいて、「中小企業には政府が補填しますよ」と言うものの大企業は「おまえらの責任で上げろ」と放置。
 これはたまらんとばかりに軽工業中心に海外脱出を図ろうとしたら、政府は「なにもできないけど、海外脱出はするな」とのお達し。
 いわゆる通常賃金裁判で「この裁判で負けたら海外に脱出する」と宣言していた自動車企業の宣言を政府圧力で取り下げさせたりもしていました。

 いわく「こんな韓国になったのはすべて大企業のせいだ」「大企業から富を取り戻せ!」とのことですが。
 まあ、この路線を突き詰めていけば左翼の夢の国が実現するんじゃないかと思いますよ。

ソ連という実験 ──国家が管理する民主主義は可能か (筑摩選書)
松戸清裕
筑摩書房
2017/1/10