「慰安婦」先送り 日本「南京」の轍踏まず 官民挙げ制度の欠陥突く(産経新聞)
「慰安婦記録ユネスコ登録保留...韓国外交は行方不明」(聯合ニュース・朝鮮語)
 安倍晋三首相は、2年前に中国が申請した「南京大虐殺文書」の登録を許した直後、「2度目の失敗は許されない」と大号令を発していた。

 そもそも「世界の記憶」は史実を認定する事業ではない。登録の是非を審査する登録小委員会と国際諮問委員会で中心となるのは、アーキビスト(公文書管理の専門家)だった。

 政治性の薄いアーキビストに政治圧力をかけると反発を受けかねず、日本側は学術的に歴史認識の間違いを指摘するのではなく、事業の欠陥を突くことで「登録阻止」を優先させた。 (中略)

 実際、登録審査を担当するアーキビストには、韓国の反日団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」などと深い関係を持つオーストラリア人もいた。この人物は制度改革を協議する専門家会合にも入っていたが、日本側が中立性を問題視したことで外れている。

 中韓の抵抗は強かったが、日本が慰安婦関連資料の登録は憲章の精神に反すると説き、対話促進などを盛り込んだ制度改革の必要性を訴えると、共鳴する加盟国も多かった。

 ユネスコ執行委員会は10月18日に制度改革を決め、非公開審査から公平性と透明性が従来より担保されたが、適用は「次回から」。日本側は今回の審査から「政治的緊張の回避」を求める決議採択を働きかけ、採択にこぎ着けていた。
(引用ここまで)
韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、1日正午、ソウル中学洞在韓日本大使館前で、第1307回水曜デモを開き、前日ユネスコの「日本軍慰安婦ドキュメンタリー「登載保留決定を批判した。

ユン・ミヒャン挺対協常任代表は、この日午前慰安婦一人追加で死去したというニュースを伝え、「もう一つ悪いニュースがある。日本軍が慰安婦を体系的に運営した事実を盛り込んだドキュメンタリーをユネスコに将来の世界の記憶に登録申込をしましたが、保留になった」と明らかにした。 (中略)

ユン代表は「昨今の法廷も被害者に『加害者と会話せよ』などと注文をしていないのに、国際機関がそのような決定を下した」とし「体系的に性奴隷犯罪を起こした証拠と被害者が厳格に存在するが、その歴史を修正しようとする加害者との対話をするようにとしたのだ」と批判した。

彼女は「ドイツに過去の女性政治犯収容所記念博物館があり、そこが少し平和の少女像を展示しているが、日本政府からの最近の少女像を撤去せよとの要求があった」と伝えた。

続いて「米国ソールズベリー大学には、先月19日少女像を設置する約束になって総長決裁はもちろん芝生に用地まで作ったにも関わらず、日本政府と右翼集団圧迫をして無期限延期になった」とし「このように日本の外交が繰り広げられ、被害者おばあさんはひとりずつずつ亡くなっている。韓国外交は行方不明になった」と批判した。
(引用ここまで)

 うむ、効いているなぁ……。
 産経の記事は感動的ですらありますね。
 以前にアメリカ下院でいわゆる慰安婦に関する謝罪要求決議が行われたことがありました。
 韓国側からの働きかけに対して、日本の保守派がワシントンポストに意見広告を出したことがあるのですよ。
 あれは戦略がよくなかった。
 史実を争うのは「歴史修正主義者」のレッテルを貼られるだけで、逆効果だったのですね。論争であればともかく、意見広告としては失敗だったと今でも思っています。

 今回は史実云々ではなく、ユネスコの精神として「国家間で論争のあるものを認定するのはどうなのだ」という方向で戦ったわけですね。
 より賛同してもらいやすい、より共感してもらうことのできる部分で戦うべきだったのです。
 慰安婦が事実としてどうであったとか、もはや関係ないのですよ。
 売春婦であったのか否かという論点で戦うと、心情的に韓国側に流れられやすいのは間違いないのです。
 そういった史実の論争は別のシーンでやるべきこと。
 実際の「世界の記憶に登録されるかどうか」という戦いの場では、戦略を現実的な方向性に持ってきたことで今回の保留を勝ち取れたということなのですね。

 外交として戦えるようになってきたなぁ……と感じます。
 長期政権のおかげで戦略に一貫性が出ているというのもあるでしょうね。

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2001/4/19