【コラム】「封印」されてはいなかったTHAAD問題(朝鮮日報)
「中韓は先ごろ、THAAD問題を『階段的』に処理(階段性処理)することで一部合意に至った」

 中国の李克強首相は今月13日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談でそう発言した。韓国メディアは「階段的」処理を「段階的」処理と翻訳して報じた。最終的なTHAAD撤収を目標としたもので、THAAD問題は「封印」されなかったとの解説も見られた。韓国政府も特に反論できなかった。

 しかし、韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官が中国の王毅外相と会談、夕食会をこなして以降、情勢が変わった。23日に北京駐在の特派員と会った韓国政府高官は「段階的処理は『step by step』ではなく、中国側の英訳を見れば、『in the current stage』だ」とし、「現段階でしっかり管理しようという認識だという点を昨日の会談で確認した」と説明した。英語はできても中国語は分からないこの高官に対し、中国が何を告げたらこういう発言が飛び出すのかと思った。 (中略)

 こうした一幕は韓国政府がTHAAD問題は「封印」されたとの点にこだわったことで起きた。実際に中国語の「階段性」には「段階的(phased)」という意味と「過渡的(interim)」という意味がある。どちらの意味であれ、中長期目標を前提として使う。(中略)THAADを放置したままでの韓中関係維持は「過渡的処理」にすぎず、最終段階はあくまで「THAAD撤収」だ。それゆえ、「階段性処理」という発言には「韓国にはTHAAD問題を適切に処理してもらいたい」という訓戒が伴った。

 中国は10月31日の合意で「THAAD反対」を改めて表明した。ただ青瓦台が「封印」とか「これ以上言及しないという意味だ」と一方的に述べただけだ。たとえ中国が12月の韓中首脳会談でTHAAD問題に言及しなかったとしても、いつかまた取り上げてくればそれまでだ。THAAD「封印」を主張し続けて矛盾に陥った結果、韓国の外交力だけが「封印」された格好だ。今からでもTHAAD問題が「封印」されたなどと言うのはやめ、中国の圧力に原則に沿って対応すべきだ。
(引用ここまで)

 韓国政府と大統領府はいまだに「THAAD問題は一切合切が封印された」という言葉にこだわっているようですね。
 いまだに「封印」がされていなかった、という公式見解は出していないとのこと。

 カン・ギョンファが国会でやった「我が国は中国に対して三不の誓いを立てました」という宣言をもって、ムン・ジェインは「THAAD問題は封印され、中韓関係は新しい時代に入った」と高らかに謳いあげたのですよ。
 でも、実態は「嘘でした」というパターンでした。
 韓国政府や大統領府が嘘をつくなんていつものことではあるのですが。

 さて、ムン・ジェインが大統領就任から半年ほどが経過していますが、「新時代の大統領」だのなんだの言われていたわりには実際にやったことってこれといってない。
 やったことといえば裏付けとなる数字もなしに最低賃金を16%ほど上げて中小企業を苦しめているくらい。あ、それと大企業に対する法人税率を上げて大企業も苦しめているってのもありました。
 あとはトランプ訪韓の晩餐会に独島エビと元慰安婦を出して「外交天才!」とネチズンから喝采を浴びたくらいですかね。
 他の実績……サムスン電子の副会長に実刑判決を出させたこととか……でしょうか。
 まあ、実際問題としてこの半年の間、目立つような実績はなにもないんじゃないでしょうかね。「基本方針はこうなる」というものは見せつけてきましたが。

 そんな中、「パク・クネが決めたTHAAD配備によって中国からGDPが下落するほどの圧力」を受けてきた韓国の状況を、あっという間にひっくり返したという最高の実績を上げてしまったのですよ。
 「これでTHAAD問題は封印され、中韓間で二度と話題にされることはない」と確約した。
 ネチズンは「これがムン・ジェインの実力だ!」と大歓喜。
 大統領府も記者団に対してあくまで「封印されている」と言い続けている。

 ですが、実際にやったことは主権放棄であり、さらにその内情はなにも変わっていなかった。APECでも中韓外相会談でもTHAAD問題はいの一番に話題になっていましたね。 
 それでも、それでもまだ「封印」の言葉にすがりつきたいのですよ、これまでなにもしていないムン・ジェインとしては。

 「封印」を実現するために、来月の中韓首脳会談で話題に出さないよう外交部は全力で走り回っていることでしょう。
 中国側もこのときだけは配慮するんじゃないかと思うのです。
 飴と鞭は使い分ける必要があり、ここは飴のターンではないかと。
 まあ、そのために今度はなにを差し出すのか……という話でもあるのですけどね。

自縄自縛の私
蛭田亜紗子
新潮社
2012/12/1