文大統領訪中 「THAAD巡る隔たり克服」=韓国大統領府(聯合ニュース)
韓国青瓦台(大統領府)の高官は17日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の中国国賓訪問(13〜16日)について「文政権発足以降、外交的困難があったが、今回の訪中でまた一つ山を越えた」と述べた。北朝鮮の核・ミサイルによる挑発で緊迫する朝鮮半島情勢を外交的に解決し、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備に反発する中国の報復措置で冷え込んだ韓中関係を修復する上で重要な成果を挙げたと評価したものと受け止められる。

 同高官は「韓中首脳がTHAAD問題によるわだかまりを完全に克服したと思う」とした上で、「THAAD問題が完全に解決したわけではないが、(THAADへの)言及の頻度や強さは著しく低下した」との認識を示した。なかでも文大統領と習近平国家主席が14日の首脳会談を前後して5時間を共に過ごし、個人的な信頼と友情を築いたことが大きいと強調した。

 青瓦台は文大統領の訪中により中国がTHAAD配備に対する報復措置を事実上撤回したことを公式に宣言したと評価する。 (中略)

 青瓦台は訪中が成功したと評価することで、文大統領が中国から冷遇されたとの批判を一蹴した。青瓦台高官は「訪中に対する批判的評価も謙虚に受け止めるが、意味のある成果についてはしっかりと見てほしい」と述べた。THAAD問題を巡り韓国が中国に低姿勢を取っているとの指摘には「安全保障上の利益を確実に守り、中国の理解を求めたと評価できる」と反論した。
(引用ここまで)

 いやあ……強いなー。
 昨日の朝の時点であれだけの屈辱リストを晒されておきながら「THAADミサイル配備についての隔絶が緩んだから成功」ですって。
 たしかに習近平は首脳会談前の言葉においては直接言及をしてはいません。
 事前に楽韓Webでも予想していた通りに。

 ですが、それはTHAADミサイル配備問題の終結そのものを意味していません。
 むしろ、きつくなるのはこれからであるのは間違いない。ことあるごとに「三不の誓い」を持ち出されては、ああだこうだと皇帝からの指示が大使を通じてくるでしょうよ。
 まあ、それ以前に日米韓の軍事演習のように宗主国に気を使って韓国自身が自粛することが多くなるでしょうけどね。

 三不の誓いを立て、APECで習近平への謁見を許してもらう。
 そして訪中のお伺いを立て、「三不の誓いを守っているようでもあるし、よかろう」と年内訪中を許してもらったと。
 そこで一点突破でTHAAD配備の圧迫さえやめてもらうことができれば外交勝利、という心づもりだったのでしょう。
 そうすることで韓国国内からは賞賛され、国外からは中国の一の子分としての地位が確定するのだというつもりだったのでしょうね。

 そのためには朝貢外交と言われようとも、どんな扱いを受けようともかまわないというつもりだったのでしょうね。
 一点突破からなんとかできるはず、と見積もっていた。
 一応、そのルートはしっかりと通ることはできた。
 だから本来の見積もり通りであれば賞賛を得られるはずだったのですが……。

 世界が注目しているのは中韓関係そのものではなく、北朝鮮にどのような影響を中国が与えられるかどうか。ひいては北朝鮮核事態におけるもう一方の主役であるはずの韓国の国家元首が中国に対して、どのようにして制裁なり圧迫なりの影響を及ぼすことができるかだったのですね。
 ところが出てきた「朝鮮半島4原則」とやらは、旧来のものと1ミリも変わらない残念な結果。
 韓国国内における訪中の評判も「いくらなんでもこの扱いはおかしいだろ」となってしまった。
 まあ、しょうがないので身内である韓国政府、大統領府だけでも「外交的大勝利だ!」と叫ぶことにした、というところでしょうか。

 そんな哀れな結果であってもネチズンは「外交天才ムン・ジェイン!」「外交王ムン・ジェイン!」と盲目的な支持を捧げているようです。
 このあたりは支持率調査でどうなるかというのを見ないと分からない部分かな。
 いくらなんでもあの扱いを日本の国家元首なり行政の長なりが受けたら「いいからもう椅子蹴って帰ってこい」ってなりますけどね……。
 あまりにも哀れすぎて。
 まあそれでもとりあえず21世紀前半までの中韓関係というものの基本路線は見えたかな、というところです。
 そういった意味においては成果があったといえるかな。

世界のなかの日清韓関係史 交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)
岡本隆司
講談社
2008/8/10