南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」(ニューズウィーク)
1月9日、韓国と北朝鮮による2年ぶりの南北高官級会談が行われているが、結果は今までと同じことになるだろう。北朝鮮の無法なふるまいに対し、韓国が多額の援助で報いるのはほぼ確実だ。かくして、国連安保理がようやく合意した制裁強化は効力を失う。一方の北朝鮮は、核弾頭を搭載した移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を複数配備するという目標に向けて着実に歩みを進めていくだろう。

北朝鮮の過去6回の核実験はいずれも、アメリカにとって攻撃に踏み切る絶好のチャンスだった。イスラエルが1981年にイラク、2007年にシリアの核関連施設を爆撃した時のように。いかなる兵器も持たせるべきでない危険な政権が、よりによって核兵器を保有するのを阻止するために、断固として攻撃すべきだった。幸い、北朝鮮の核兵器を破壊する時間的余裕はまだある。米政府は先制攻撃をはなから否定するのではなく、真剣に考慮すべきだ。

当然ながら、北朝鮮を攻撃すべきでない理由はいくつかある。しかしそれらは、一般に考えられているよりはるかに根拠が弱い。北朝鮮への軍事行動を思い止まる誤った理由の一つは、北朝鮮が報復攻撃をしてくるのではないかという懸念だ。 (中略)

北朝鮮を攻撃すれば、報復として韓国の首都ソウルとその周辺に向けてロケット弾を撃ち込む可能性はある。南北の軍事境界線からわずか30キロしか離れていないソウルの人口は1000万人にのぼる。米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ。

約40年前、当時のジミー・カーター大統領が韓国から駐留米軍を全面撤退すると決めた際(最終的には1師団が残った)、アドバイザーとして招かれた国防専門家たち(筆者自身を含む)は韓国政府に対し、中央官庁を北朝鮮との国境から十分に離れた地域に移転させ、民間企業に対しても移転のインセンティブを与えるよう要請した。

今からでも北朝鮮によるロケット砲やミサイル攻撃に備えた防衛計画を韓国が実行すれば、犠牲者を大幅に減らすことができる。支柱や鉄骨を使ってあらゆる建物を補強するのも方法の1つだ。3257基の公共シェルター(避難施設)に生活必需品を備蓄し、案内表示をもっと目立たせることもそうだ。当然、できるだけ多くの住民を前もって避難させるべきだ(北朝鮮の標的に入るおよそ2000万人の市民は、南へ30キロ離れた場所に避難するだけでも攻撃を免れられる)。

とはいえ、長年にわたってこうした対策を怠ってきたのが韓国自身である以上、最終的に韓国に被害が及ぶとしてもアメリカが尻込みする理由にはならない。北朝鮮の核の脅威にさらされているアメリカと世界の同盟国の国益を考えれば当然だ。北朝鮮はすでに独自ルートでイランなど他国に弾道ミサイルを売却している。いずれ核兵器を売却するのも目に見えている。 (中略)

インド、イスラエル、パキスタンの3カ国が核兵器を保有しているのは事実だが、今のところ破滅的結果を招いていない。3カ国は北朝鮮にないやり方で、自国の信頼性を証明してきた。北朝鮮のように、大使館でヘロインや覚醒剤などのいわゆる「ハードドラッグ」を売ったり、偽造紙幣で取引に手を染めたりしない。3カ国とも深刻な危機に見舞われ、戦争すら経験したが、核兵器に言及すらしなかった。ましてや金正恩のように、核攻撃をちらつかせて敵を脅すなどあり得ない。北朝鮮は異常だ。手遅れになる前に、アメリカの外交政策はその現実を自覚するべきだ。
(引用ここまで)

 去年から推しに推しまくっている戦略家であるエドワード・ルトワック氏のフォーリンポリシーへの寄稿。
 いわゆる「いまならまだ間に合う」という方向からの北朝鮮空爆論。
 ルトワックもさすがに地上戦への言及はない……というか、そもそも必要と考えていないようですね。
 著書の「戦争にチャンスを与えよ」にある北朝鮮対策のチャプターは示唆に富んでいます。一読の価値あり。

 ルトワックは「ソウルが砲撃されるのはやむなし」と見ているというのは興味深いところ。
 以前からアメリカの対アジア政策におけるCSISの影響力はかなりのものがあります。
 たとえば慰安婦合意はCSIS上級副理事長のひとりであるマイケル・グリーン氏がオバマ大統領にアドバイスした結果として生まれたものではないかと楽韓Webでは考えています。
 ルトワックもCSISに所属しています。
 この「ソウルが砲撃されるのは自業自得」という意見はなんらかの形でトランプ政権に伝わっていると見ていいでしょう。
 ……しかし、「地下シェルター」が商店街になっているなんてことまでよく知ってるなぁ。

 で、最後の段落になる「インド、イスラエル、パキスタンが核を保っているのは事実だが、彼らは核を使った恫喝などしたことはない。しかし、北朝鮮は違っている。彼らは異常だ」というのは楽韓Webでも何度か書いてきたことですが。
 国家元首が核で周辺国を脅し、兄を暗殺し、叔父を処刑している。
 そんな国に核兵器を持たせたままでよいのか、という観点からの議論はあって然るべきだと思いますね。

戦争にチャンスを〜とどちらも一読おすすめ。
中国4.0 暴発する中華帝国 (文春新書)
エドワード・ルトワック
文藝春秋
2016/3/18