「五輪外交で主導権を握った」と小躍りする韓国(日経ビジネスオンライン)
南北対話の進展で「日本外し」を懸念する日本政府(朝鮮日報)
 いつもは冷静な筆致の中央日報のコラムニスト、チョン・ヨンギ記者も「中国と日本が韓国の顔色をうかがうようになった」と文在寅外交を褒めたたえました。「『平昌開幕式』の夢のような場面」(1月8日、日本語版)から引用します。
  • 文在寅大統領は金正恩が新年の辞で差し出した平昌五輪の出席カードを握って、トランプ大統領に電話をかけ韓米合同軍事演習の延期を確定させた。 
  • 驚くべき機敏で大胆な行動だ。中国と日本も戸惑い、朝鮮半島のハンドルを握った文大統領の顔色をうかがっている。
 韓国語の元記事を読むと「顔色をうかがう」部分は、やや上から目線の翻訳で「様子をうかがう」くらいのニュアンスと思います。が、いずれにせよ韓国人の高揚感が伝わってきます。

 韓国の通信社、NEWSISも1月15日「日本、南北対話の進展で『日本外し』を憂慮」(韓国語)を報じました。

 南北対話が進み始めたうえ、米国もこれに理解を示している。このため日本政府が「外される」と恐れていると東京の外交筋が明かした、との内容です。
(引用ここまで)
 平昌冬季五輪への北朝鮮の参加をめぐって南北対話が進展する中、日本政府内部では、北朝鮮核問題をめぐる韓日の協力が弱体化するのではないかと懸念の声が上がっていることが分かった。

 東京のある外交筋が15日に明らかにしたところによると、南北対話が進展し、韓米間でも南北対話についてかなりの部分で認識の一致があったとみられることから、日本政府内部では「ジャパン・パッシング(日本外し)」が起きるのではないかとの懸念が出ているという。 (中略)

 日本政府が、韓日慰安婦合意をめぐる韓国政府の新方針について「断じて受け入れられない」と強い不満を示しながらも駐韓日本大使の帰国措置などの強硬対応を見せないのは、北朝鮮の核・ミサイル危機に直面する状況で韓日関係が冷え込めば、韓米日の協力に悪影響を与えるとの認識からだとみられる。

 こうした状況下で南北対話が再開されたため、対話が韓日の協力に亀裂をもたらすのではないかとの懸念が高まっているというわけだ。 (中略)

 南北対話をめぐって、トランプ米大統領が文大統領の発言に表面上かなり共感する姿勢を見せていることも、日本としては手放しでは歓迎できない側面がある。韓国が独自に南北関係改善の道に進む場合、米国がそれをけん制する役割をきちんと果たせるのかが疑わしくなるからだ。かといって日本が積極的にけん制に乗り出すには、現在のあいまいな韓日関係が間違いなく障害となる。慰安婦合意をめぐる韓日の摩擦によって、日本国内の(反韓)世論は日本政府が無視できない状況になっている。
(引用ここまで)

 上の鈴置氏の記事にある「ニューシスの記事」とは下で引用した朝鮮日報日本語版に掲載されている記事のことです。
 以前にも「南北会談があったことで『日本は孤立した』と感じているのではないか」と語っている韓国政府高官がいるという話がありました。
 韓国内では慰安婦問題はムン・ジェインが実質的に棚上げしたことで終息している。あとはツートラック外交が受け入れられるかどうかだけが問題だ、というような空気になっている。
 そして、南北会談が進んだことで日本は焦り、孤立感を味わっているはずだ……という雰囲気になっているのです。

 いや、なんでだって言われてもそういう雰囲気になっているのは間違いないので。
 韓国にとっては慰安婦合意に云々っていうよりは、南北会談のほうがずっとニュースバリューがあることは間違いないのですね。
 彼らの中でのニュースバリューの差がそういった勘違いを演出しているようなのです。
 まあ、上の過去エントリでもそう言われた人がポカーンとしていましたが、南北会談があるないで日本の対北戦略が変わるわけがないんだよな……。

 で、韓国はなんだかんだで小躍りするようにして南北会談を続けているのですが。
 まあ、どう見ても北朝鮮による時間稼ぎ。鈴置氏の記事の後半にあるように、「何ヶ月か様子を見てみよう」というのが実際でしょう。オリンピック、パラリンピックの期間中は様子見であると。

 もし、南北対話をきっかけにして北朝鮮の非核化ができるのであればそれはそれでよいことですから。世界の目標は北朝鮮を非核化すること。そして、北朝鮮はなにをしてもそれを飲まないことは間違いありません。
 CIAの報告では3月までがタイムリミット
 ウォールストリートジャーナルの記事(Amid Signs of a Thaw in North Korea, Tensions Bubble Up)によれば「2018年の中頃が審判の時」だそうで。
 さてはて。

ノンフィクションとして最高レベルに面白かったのでおすすめします。
北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―
古川勝久
新潮社
2017/12/22