韓経:【現場から】雇用は作れないのに「雇用組織」だけ作る韓国政府(中央日報)
【取材日記】人件費を上げたのは政府、尻拭いは店舗所有者=韓国(中央日報)
【社説】「馬車を馬の前には置けない」という経済学者の苦言=韓国(中央日報)
大統領直属の雇用委員会が30日に予定になかった記者会見を行い、「今週各官庁の1級公務員が参加する青年雇用対策タスクフォース(TF)を設置する」と明らかにした。続けて来週には広域自治体・基礎自治体の雇用専従部署長会議を開き中央政府と地方政府の有機的協業体系を構築することにした。

これに先立ち企画財政部は金東ヨン(キム・ドンヨン)副首相兼企画財政部長官を本部長とする「青年雇用対策本部」を設置することにした。企画財政部は対策本部を通じ青年雇用政策を導出し、官庁間の協力案もまとめる計画だ。雇用労働部をはじめとする他の官庁も青年雇用TFを推進しているという。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が25日に青年雇用点検会議を招集し、「青年失業が国難水準なのに各官庁に(対策を用意しようとする)意志がみられない」と激しく叱責した直後に現れた現象だ。 (中略)

政府官庁だからとすぐに手にできる解決策があるのではない。公共雇用81万件創出、公共機関の青年義務雇用比率引き上げ、青年3人を採用する中小企業に3年間1人分の賃金支援(最大年2000万ウォン)などできる対策はすでにすべて取った状態だ。それでも大統領の叱責があれば官界では「すぐに何であれしなければならないが何をやるべきかわからない」という切迫感と不安感が大きくなっている。
(引用ここまで)
ソウル恩平区(ウンピョング)に4階建て商業ビルを所有する知人A(70)に対し、政府が先月19日、店舗の保証金および賃貸料引き上げ率の上限線を9%から5%に引き下げたことによる影響を尋ねた。

「賃貸料の上限線が低くなったが、それによる打撃は」。

「とんでもない。ビルを所有する10年間、賃貸料を年3%以上上げたことはない…。全く関係ない」。 (中略)

Aの反応は政府の案に実効性がないという意味だ。実際、韓国国内市場で賃貸料を年9%以上も上げるケースは全体の1割にもならない。ほとんどが富裕層が集まっている人気商圏だ。月に数千万ウォンの賃貸料を出す人たちはほとんど商街建物賃貸借保護法の対象ではないため今回の措置とは関係がない。

ところがAが突然怒りを表しながら話したことがある。水をこぼした(最低賃金引き上げ)のは政府なのに尻拭いはなぜ店舗所有者にさせるのか、ということだ。実際、今回の案は最低賃金引き上げによる小商工人の人件費負担を緩和するために政府が取った措置だ。内容を発表してから1週間後、従来の店舗賃貸借契約にまで遡及適用したため、店舗所有者の立場では「個人財産権侵害」という不満の声が出るのも無理はない。

問題は得られるものがない点だ。立地や商店の規模、業種によって千差万別だが、一般的に小型飲食店の運営で賃貸料の比率は20−25%だ。材料費負担が25−30%、人件費が40−45%、マージンが10%ほどだ。支出の半分近くを占める人件費負担は政府が作ったが、その緩和措置は別のところでする。

副作用も心配される。賃貸料引き上げ率を低めたとしても、店舗の所有者がその気になれば方法はいくらでもある。契約期間の短縮がそうだ。例えば契約期間が2年である場合、200万ウォンの家賃を以前の上限の9%で引き上げれば218万ウォンだ。契約期間が1年である場合、2回にわたり変わった上限の5%ずつ上げれば2年後には220万5000ウォンになる。

賃貸料の代わりに管理費を上げることもできる。管理費を上げても制裁する適当な法規がない。こぼした水はその人が後始末をするべきだ。
(引用ここまで)
「雇用という馬車は経済成長という馬が引っ張る結果であるため、馬車を馬の前に置くことはできない」。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で青瓦台(チョンワデ、大統領府)政策室長を務めた李廷雨(イ・ジョンウ)慶北大名誉教授が1日、江原(カンウォン)大で開かれた「2018経済学共同学術大会」で述べた言葉だ。所得と雇用は経済成長の結果であり成長をもたらす要因でないという指摘は経済学界で何度も出ていたが、参加政府の経済政策を設計した進歩学者である李教授の発表という点で目を引いた。李教授は文在寅(ムン・ジェイン)政権の所得主導成長論自体は支持しながらも、最低賃金引き上げによる負担を減らすために支援する雇用安定資金には批判的だった。所得主導成長論を擁護してきた朱尚栄(チュ・サンヨン)建国大教授も最低賃金の急激な引き上げについては、最低賃金1万ウォン(約1000円)目標が経済に不必要な衝撃を与えるとして速度調節論を提示した。

大統領選挙の公約という理由だけで最低賃金の急激な引き上げをはじめとする所得主導成長を強行してきた政府はもう危険な独走をやめて、経済学界の苦言に耳を傾けなければいけない。市場価格に直接介入する政策も経済の原則に合うよう見直す必要がある。「青瓦台参謀陣があまりにも経済を軽く見ている」という学界の評価を重く受け止めて熟考することを望む。
(引用ここまで)

 最初の記事は先日のムン・ジェインによる「雇用創出を民間の仕事だと思っている固定観念が政府に残っている」という叱責を受けての話。
 とりあえず就任と同時に大統領執務室に「リアルタイムで雇用状況が見えるパネル」を設置したように形から入っていますね。
 なにしろ、自称「雇用大統領」ですから。
 自分が就任してから雇用情勢が悪化することは許さないでしょう。許さないだけですけども。

 2番目の記事は最低賃金を一気に100円以上上昇させたことで、商売に負の影響が出るということは理解していたらしいのですよ。
 ムン・ジェインにはそのような能力があったのです。軽い驚きを覚えますね。
 その余波を緩和するために、家賃の上昇度合いをこれまでの「契約更新時に最大9%」から最大5%に規制したというもの。
 ……なんで人件費上昇を賃料で吸収させようとしているんですかね。
 ムン・ジェインは当初「不動産投機をしていた人物は閣僚に登用しない」と宣言していたほどに不動産によって財を成した人物を嫌っています。けっきょくはなし崩しにそんな話はなかったことになるのですが
 でも、不動産が余りまくっている状況で明洞や江南の駅前物件でもないかぎり、9%も上昇させないよというオチがついているっていう。

 最後の記事は左派の経済学者ですら、ムン・ジェインの「所得主導成長」方針に総体的には賛成でも個別政策には反対をはじめているという話。
 楽韓Webでも何度か取り上げているように、現状は負の作用しか及ぼしていません。
 解雇が増え、解雇されなかった労働者には「休憩時間」が増え、あるいは同じ作業でも人数が減るという状況。
 これまで韓国国内の経済学者からはムン・ジェインの経済政策があまりにも素晴らしいので、なにも意見が出なくなっていたほどなのですが、実体経済に影響を及ぼし始めてようやく声が上がったということのようです。

 でも、韓国政府曰く「急激な賃金上昇に伴う影響は数か月でなくなる」とのことなので?
 とりあえずは数ヶ月ほどなにもせずに見守るのが得策かもしれませんね。
 ムン・ジェインはその能力において精一杯の経済政策を打ち出していると思いますよ。日本からもぜひ応援しましょう。

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三輪芳朗
筑摩書房
2002/6/20