【社説】韓国だけを標的にする米鉄鋼関税、理由は何か(朝鮮日報)
【社説】同盟国という理由で米制裁避けた日本(朝鮮日報)
 米政府が米鉄鋼業界の被害を防ぐための「関税爆弾」の対象に挙げた12カ国・地域に韓国が含まれた。韓国鉄鋼業界からは「このまま確定されれば、対米輸出は事実上おしまいだ」との声が漏れる。(中略)

 問題は米国の主な友好国のうち、対象12カ国・地域に含まれたのが韓国だけだという事実だ。米国に鉄鋼を最も輸出しているカナダ、韓国とほぼ同水準のメキシコをはじめ、日本、ドイツ、台湾などは全て対象から外れた。韓国政府は軍事同盟国であり、自由貿易協定(FTA)の締結国である韓国がリストに含まれた理由すら把握できずにいる。 (中略)

 韓国政府は米国による鉄鋼制裁が伝えられた今月17日、産業通商資源部長官(産業通商資源相)が慌てて鉄鋼業界を集め、官民合同の対策会議を開いた。しかし、会議の結果は「米政府の最終決定が下されるまで、官民が共に米国の政府、議会などに対し、最大限説得に努力しよう」としただけだった。それで済む問題ならば、事態はここまで至らなかった。米商務省は昨年4月から超強硬な貿易制裁に向けた調査に着手した。政府がこれまで何をしていたのか、国民は知りたがっている。貿易と投資、技術開発で国全体が富を稼ぐという問題にどれほどの関心を持っているのか。政治に対する熱意の半分を通商に振り分けただけでも、対米貿易環境がこれほど悪化することはなかったはずだ。
(引用ここまで)
 日本の世耕弘成経済産業相は20日、「米国が同盟国である日本から鉄鋼、アルミニウムを輸入しても安全保障に影響は与えない」と述べた。米商務は最近、外国製の鉄鋼製品が米国の安全保障上の脅威になるとして、12カ国・地域の鉄鋼製品に53%の関税を課したが、そこに日本が含まれなかった理由を説明したものだ。日本は鉄鋼の対米輸出量で7位だ。

 日本の閣僚が外国政府による決定の背景を単なる憶測で説明するはずはない。米国の制裁対象から除外されようと努力する過程で「同盟国である日本の対米輸出は米国の安全保障に影響を与えない」という説明を米国側から聞いたか、日本がそうした論理で米国を説得したかどちらかだ。

 韓国も米国の同盟国であることには変わらないが、制裁対象に含まれた。韓国政府はその理由を「米国は伝統的に安全保障と通商を区別して対応している」と説明した。ところが、日本政府は「米国が日本との安全保障関係を考慮し、通商報復の選定過程で配慮した」と正反対の説明を行っている。実際は米国は言葉では安全保障と通商を区別すると言いながら、通商問題が安全保障の負担とはならないように配慮しているというのが常識だ。

 韓国政府が「韓国も安全保障と通商を切り離し、強硬に対応していく」と表明したことは、誤った判断に基づく誤った対応だ。 (中略)

米国や中国などの貿易大国に通商圧力のような方式で真っ向から対応するというのは、もっともなことだと聞こえるかもしれないが、実効性はない。むしろ、日本は制裁を避け、韓国は制裁対象になった原因すら説明できない韓国の通商交渉本部の組織と戦力を再整備する覚悟を固めた方がましだ。
(引用ここまで)

 日本からではちょっと想像できないレベルで、韓国ではこの話題が激しく語られています。
 もうここ数日、延々とニュースになっているっていう感じですね。
 ムン・ジェインは「制裁には制裁で対抗する」だの「新北方政策と新南方政策を積極的に推進しよう」とか言っている……つまり「新しい輸出先を見つけてアメリカが輸出先として失われてもいいようにしよう」とか言ってるのですが。アメリカの代わりになる貿易規模をキープできる国……ねぇ?

 韓国メディアはここ数日──

 「なぜ同盟国の中で韓国だけが対象になったのか」
 「なぜ日本は制裁対象から外されたのか」
 「日本と韓国の違いはなんだったのか」
 「ムン・ジェインは制裁には制裁で対抗すると語るが実行力はあるのか」
 「ツートラック外交なんて通用していないのではないのか」

 ……といった記事を盛んに配信してます。ピックアップした朝鮮日報の記事はほんの氷山の一角。

 ま、実際には同盟国の中でも使えないランキング第1位だからこそ、制裁されているのですよ。
 北朝鮮に対して強硬な圧力をかけることが全世界的に認められつつある中で、北朝鮮になんとかして融通をしよう、堤防に対して蟻の一穴を開けようとしているのですから当然のことでしょう。

 そして「まずは通商部門」で圧力を受けているということでもあるし、以前からトランプ大統領が「米韓FTAはひどい取り決めだ」と主張していたことの延長線上でもある。
 というか、米韓FTAはオバマ政権時代からやり玉に挙げられていたし、そもそもTPPがあれだけ難航したのは米韓FTAがひどい結果に終わったからでもあるのですけどね。

 その一方で韓国はやり玉に挙げるのにちょうどいい規模であり、ちょうどいい相手であるということでもあります。
 日本を相手にするのはなんだかんだでしんどい。
 ドイツも規模的に同様。カナダは国内問題だし、台湾は対中国を考えると叩きづらい。
 じゃあ、韓国あたりを叩いておいてロシア、インド、ブラジルあたりにも「たとえ同盟国であってでも不公正な相手は叩くのだ」という言い訳をしやすくしておこうという思惑が働いていることは間違いないところでしょう。

 1)米韓FTAで不均衡が進んだことへの報復。
 2)ちょうどいい規模の相手国であること。
 3)北朝鮮問題で本気にならないムン・ジェイン政権への警告。

 一石三鳥ってとこですね。
 いまの韓国はアメリカや韓国GMにとって、取って捨ててもいいけどこっちの言うことに従うのならまだ付きあってやらないでもない、というレベルの相手になりつつあるのです。
 使える部分があればそりゃ使いますよね。
 アメリカとしては制裁しない理由がありません。

Kindle版はちょっと早い明日発売。
炎と怒り トランプ政権の内幕 (早川書房)
早川書房
2018/2/25