韓国大統領府、「最低賃金引き上げの肯定的効果」資料を非公表(朝鮮日報)
 31日の国家財政戦略会議で文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「所得主導成長論」を擁護した発言の波紋が広がっている。この会議で文大統領は「最低賃金引き上げの肯定的効果は90%」「労働者の賃金は全てのレベルで増え、とりわけ低賃金労働者の賃金は大きく増加した」などと発言した。ところがこの発言については「現状と合わない」といった指摘に加え「何の統計を根拠にしているのか」などの疑問も指摘されていた。すると韓国大統領府は1日「統計庁の資料をより深く、また具体的にチェックした」と説明した。その一方で大統領府は「非公開の資料」としてそのデータについて公表しなかった。しかし統計庁の関係者は「我々は大統領にそのような資料を提供したことはない」「大統領府が従来のデータを活用し、自分たちで分析したようだ」と述べた。 (中略)

 これについて大統領府の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は1日の会見で「(29日に参考とした資料は)家計所得の水準を5つに分類したものだった。一方で10に分類した時の(資料では)下位10%を除く全ての所得が増加しただけでなく、高所得層と低所得層間の所得格差も縮まったからだ」と説明した。大統領府によるこの説明は要するに「文大統領の発言はいずれも別のデータに基づくものであり、後の発言の方が現状に近い」という趣旨だ。 (中略)

識者らによると、文大統領の「肯定的効果は90%」発言の根拠は、統計庁による家計所得支出統計を加工したデータに基づいていた可能性が高いという。ある識者は「文大統領は29日に『2人以上の世帯』における月平均所得の統計に基づいて発言したが、31日には『労働者世帯』だけを取り出した統計資料を引き合いに出したようだ」「そうした場合、自営業者や仕事を失った世帯は統計に反映されなくなる」などと指摘した。

 さらに「賃金が全て増加した」とする文大統領の発言は「雇用労働部(省に相当)による『事業体労働力調査』に基づいたのでは」との見方もある。この調査では、今年3月に正社員、非正規社員、日雇い労働者の賃金はいずれも増加したことになっている。しかし識者らは「事業体労働力調査は『従業員5人以上の事業所』を調査対象としているため、零細自営業者は最初から対象に入っていない。この点が決定的な問題だ」「最低賃金引き上げで仕事を失うなど直接の影響を受けた労働者は対象に入っていない統計だ」と指摘した。
(引用ここまで)

 昨日からこのムン・ジェインによる「最低賃金引き上げの前向きな効果は90%」という発言が韓国メディアではけっこう取り上げられています。
 「どの統計を見たらそんな発言につながるんだ?」とか「まったく現実が見えていない」という批判にさらされています。

 で、どうやらその統計はこれではないかというものが出てきたのですよ。
 以前の「所得格差がますます広がっている」というエントリの際に韓国では5分位、10分位の数字を統計としてよく用いるという話をしましたが。
 この統計を10分位にすると上位の1〜9分位では所得が増えていたので「肯定的な効果が90%」と発言したそうです。
 所得最下位の第10の区分に存在する人間こそが、ムン・ジェイン政権によって支えられるべき層ではないのかという気はするのですが。
 まあ、実際には労組に加入していないような有象無象なんてどうでもいいというのが本音なのでしょう。
 さらにその詳細なデータは非公表。
 それ以前にこの統計は「所得があった層の統計」なので、失業して所得が消えてしまった層は組み入れられません。
 働く場所そのものを失った日雇い労働者や、「廃業届を出すために役所に行列が出ている」とまで言われている自営業者については完全に無視。
 データは事実なのだけども、それを扱う人間が恣意的に扱えばなんとでもできるといういい例ですね。

 しかし、「我々はデータを深く分析して、肯定的効果が90%と理解した。ただしデータそのものは非公表だ」はいいですね。
 ムン・ジェイン政権にはこのまま突っ走っていってほしいものです。

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2017/4/20