【社説】文在寅政権は家計所得よりも主力産業の危機を直視せよ(朝鮮日報)
【取材日記】庶民のうめき声が聞こえないのか=韓国(中央日報)
 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は29日、緊急に招集した「家計所得動向点検会議」で、2003年以降で最悪を記録した所得分配悪化の深刻さを認めた。「所得主導成長」政策を掲げていても、むしろ弱者層の雇用、貧困層の所得が減少したためだ。それでも政策基調は変えないとした。 (中略)

 現在求められるのは問題の根源を見ることだ。下位層の家計所得も問題だが、こうなった根本原因は別にある。現在青年の雇用機会が減少し、低所得層の暮らしが苦しくなるのは、分配がうまくいっていないからだけではない。それよりも産業競争力が低下し、経済が活力を失い、企業が雇用を創出できるにいるからだ。その上、政府の政策は企業を締め上げてばかりであることは大問題だ。韓国経済が直面する問題の本質は「家計所得」ではなく、「主力産業の危機」だ。

 政府は所得主導成長を目指す理由として、中小企業や低所得層に成長の果実が波及するトリクルダウン効果が消えた点を挙げる。トリクルダウン効果は消えておらず、消えることもない。自動車工場が閉鎖された群山市では、1年間で地域の総生産の15%が蒸発したという。造船業不況に襲われた巨済市や昌原市など南海岸造船ベルトでは、下請け業界が連鎖倒産し、景気が凍り付いた。一方、サムスン電子の一次下請け会社は昨年の営業利益が約64%伸び、雇用も10%以上増えた。それでもトリクルダウン効果はないというつもりか。

 大企業、中小企業を問わず、競争力がある優良企業のみが良質の雇用を生み出すという事実に今も昔も変わりはない。各国の政府が企業誘致に全力を挙げるのもそのためだ。トリクルダウン効果がなければ、トランプ大統領が貿易紛争を起こしてまで外国企業を誘致しようとはしないはずだ。日本が完全雇用を達成したのも、製造業の大企業の経営が好転し、雇用を創出し、富をつくり出したからだ。世界のどこにもトリクルダウン効果を否定し、反大企業政策を取る政府は存在しない。 (中略)

 現政権の発足から1年間で産業競争力強化のためにどんな努力をしてきただろうか。何も思い浮かぶものがない。大統領による投資活性化会議すら一度も開かれていない。「家計所得点検」は票になるが、主力産業の危機に取り組んでも票にはならない。しかし、企業が衰退すれば、家計も崩壊し、ポピュリズム政治家がばらまく税金もなくなる。
(引用ここまで)
「12年間、一日も休まずショッピングモールをしてきました。職業病になり、指が固まっています。一生懸命にやってきましたが、最悪の売り上げのため昼に他のバイトをしようかと悩んでいます。本当に死にたいと思うこともあります。この1年間、どうやって暮らしてきたのか分かりません。本当に苦しいです」。

5月30日付の中央日報に掲載された「崖っぷちに追い込まれた320万人の小商工人」という記事に対して書き込まれたコメントだ。記事は全国的に創業より廃業する小商工人が多く、その中でもソウル江南(カンナム)地域でこうした現象が深刻だという内容だった。また、アンケート調査で小商工人は最低賃金引き上げと高い賃貸料に最も苦しんでいると明らかにした。チェ・スンジェ小商工人連合会長は「政府は所得主導成長を主張しているが、小商工人は成長に達する前に枯死しそうだと感じている」と伝えた。 (中略)

経済コントロールタワーの張夏成(チャン・ハソン)政策室長は最低賃金引き上げが雇用減少に影響を及ぼしていないという結論を出した。所管部処の中小ベンチャー企業部の官僚も取材記者に「今後は分からないが、まだ最低賃金が小商工人を苦しめたわけではないと把握している」と述べた。高い賃貸料問題も政策の失敗による結果という自省はなかった。

青瓦台(チョンワデ、大統領府)政策室長と中小ベンチャー企業部長官は自宅と職場を行き来する間にも街中の庶民経済を目撃する機会がないのだろうか。報告書ばかり読み、他のものは見えないのだろうか。「2020年までに最低賃金1万ウォン(約1000円)に引き上げ」という大統領の大統領選挙公約のために現実を見ぬふりをしているのだろうか。
(引用ここまで)

 ムン・ジェイン政権の最大の問題は、左派にありがちな勘違いをまったく正そうとしていないということなのです。
 「超巨大な政府が経済も企業もコントロールしてすべてを差配すればいい」という話にこだわっているのです。
 大企業が庶民を圧迫し、搾取しているのでそこから富を取り戻せばすべて解決っていう。
 物事がそんな単純だったら世界各国の政府はこんなに経済政策に迷わなくて済むのにね。

 大企業が搾取だけして他にはなにもしないというのであれば、韓国GMの群山工場閉鎖に伴って町そのものが閑散としたり、地域の出産率が大幅に低下したりはしないでしょうね。
 地方自治体が必死になって「賃金は半分でいいので工場を作ってください」なんていうわけがない。  トリクルダウンの効果を国内に向けるために工場誘致や企業誘致をせざるを得ない。
 でも、ムン・ジェイン政権のやっていることは真逆で、京紡のように「最低賃金がそんなに高くなるんだったら、最新の紡績設備と共にベトナムに向かうしかない」って決心させるのに充分なことしかやっていないのです。
 併合時代から続いていた工場も閉鎖された、なんて話が出てました。

 だけども、雇用人数は30人未満の企業は最低賃金を払えないから税金で補填する(35人の事業所は6人の解雇を検討する)。
 中小企業は競争力が足りずに満足な給料を支払えないので、就職してくれた人には3年間だけ100万円ずつ払うとか。
 すべてが泥縄。全部が「税金で補填します」って話で、それが切れたらどうなるのかってことをまったく考えていない。

 日本から見てみればこうして企業をいじめてくれるムン・ジェイン政権というのはありがたいことこの上ないのですけどね。
 かつてムン・ジェインのことを「5年間続いてしまう鳩山政権」と書いたことがありますが、きっと2010年前後の日本というのは、韓国から見たらありがたい国だったのだろうなぁ……と感じます。