米朝首脳、非核化と北朝鮮の体制保障で合意 具体性に疑問符も(ロイター)
北朝鮮が国連決議順守なら制裁緩和検討も=中国外務省(ロイター)
トランプ大統領は会見で、非核化の過程は検証されると表明。検証作業には「北朝鮮で多くの人々が関わる」と述べた。

大統領によると、金委員長は、北朝鮮がミサイル用の大規模なエンジン試験場を破壊していることも明らかにした。ただ、大統領は当面、北朝鮮に対する国際的な制裁が維持されるとの見通しを示した。
(引用ここまで)
中国外務省の耿爽報道官は定例会見で「国連安保理の決議は、北朝鮮が決議内容を尊重し、それに従って行動する場合、制裁措置は調整可能だと明記している」とし、これには制裁の停止や解除も含まれると述べた。

報道官は「中国は一貫して制裁自体が目標ではないと主張してきた。安保理の措置は、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉を支援し、朝鮮半島を巡る政治的な解決を促進すべきだ」と語った。
(引用ここまで)

 トランプ大統領は「当面、制裁緩和に踏み切るつもりはない」と発言。
 ますますもってなんのために米朝首脳会談が開かれたのかわからない状況になりつつありますが。
 まあ、「ポンペオ長官と北朝鮮高官による追加交渉」こそが大事だということになるのでしょう。

 その一方で「もっとも北朝鮮を窮地に陥れた」とされている中国からの制裁措置は、中国政府が緩和したくてしょうがないという状況。
 その理由はふたつあると思います。

 まず、ひとつ目の理由は影響力を取り戻したいということ。
 米朝首脳会談に向けて日本パッシングだなんだと韓国メディアだけは騒いでいました。パッシングされるまでもなく一歩引いた立場であったのは確かですが。
 その実、同じ期間で中国は完全に存在感ゼロだったのですよ。
 パッシングどころじゃない。
 企図してのパッシングであればまだ救いようもあるでしょうが、いくつかのシチュエーションが重なることで中国が果たせる役目がゼロになってしまった。
 これは「大国」を自認している中国にとっては辛い状況です。

 三不の誓いをムン・ジェインに負わせることで南北の宗主国になったはずだったのに、今回の北朝鮮核問題においてまったくもって影響力なし。発言力ゼロでした。
 制裁緩和であるていど輸出入ができるようになれば、ふたたび北朝鮮をコントロール下に置くこともできるのではないかという目論見があるのでしょう。

 もうひとつは「なんとしても北朝鮮が崩壊してもらっては困る」のです。
 いま北朝鮮が崩壊したら、それまでの経緯は完全に白紙となりなんだかんだで韓国主導での朝鮮半島統一が実現してしまうことでしょう。
 韓国と国境を接したくない、という一般に言われる地政学的な問題も当然ありますが。
 統一されるまでは北朝鮮が混沌の地と化すのは間違いありません。
 そんな状況になって、経済難民を国境沿いに入れたくない。おそらくずぶずぶであったであろう、北朝鮮高官の受け入れとかもしたくない。
 不安定要素を増やしたくないのでしょう。
 いま、一般に考えられているよりも中国経済は脆弱になっている感があります。
 自国の農民工ですら制御できずにいるのに、それ以下の北朝鮮難民とか勘弁してくれというのが本音ではないでしょうか。

 主としてふたつ目の理由で制裁緩和に乗り出したいのではないかなぁ……と感じています。

週刊ニューズウィーク日本版 「特集:新シルクロード構想 中国の野望」〈2015年 5/26号〉 [雑誌]
ニューズウィーク日本版編集部
CCCメディアハウス
2015/5/19