【社説】文大統領のサムスン工場訪問が大ニュースになる韓国(朝鮮日報)
文大統領、インドでサムスン電子副会長と面会(朝鮮日報)
文大統領、李在鎔サムスン電子副会長に「韓国でもさらに多くの雇用を」(中央日報)
文在寅(ムン・ジェイン)大統領はインド訪問中の9日、現地のサムスン電子工場完工式に出席し、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長と言葉を交わした。文大統領が大統領に就任してから二人が直接会うのはこれが初めてだ。文大統領は李氏の案内で工場を見学し説明を受けた。韓国大統領府は「通常の外交日程」と説明したが、財界関係者の間からはサムスンをはじめとする大企業と政府との関係改善のきっかけになることを期待する声も上がっている。サムスンは韓国を代表するグローバル企業だ。そのような大企業の海外工場を大統領が訪れるのはごく自然なことだろう。ところが今はそれが大きなニュースになっている。韓国の政治状況がいかに異常な状況にあるかはこれだけでも十分想像がつく。

 現政権が大企業を敵対視しているのは今や公然たる事実だ。政権発足直後に国政企画委員長が「財閥は最大の既得権だ」と発言したのを皮切りに、現政権は過去のどの政権よりも厳しい反大企業的な政策を進めてきた。韓国の10大グループの中で検察や警察、国税庁、公正取引委員会などから捜査や調査を受けていないところは一つもない。公正取引委員会による規制を強化し、それによって大株主の経営権を弱体化させる法案も相次いでいる。影響で大企業は経営権の確保に危機感を抱き、未来への投資に二の足を踏んでいるのが今の実情だ。

 中でもサムスングループに対する捜査は2年近くにわたり続いているが、これには大統領府が事実上の先頭に立っている。労働組合設立妨害事件では4回にわたる家宅捜索と14人に対する逮捕状申請という記録的な事態となった。さらにはサムスン半導体工場の企業秘密公開、バイオ関連子会社の粉飾決算、子会社が保有するサムスン電子株の売却など、どれも各部処(省庁)が実績を上げるためにサムスンを標的にしたものばかりだ。韓国の輸出全体の20%以上を占める大企業が政府によってここまで食い物にされているのだ。 (中略)

政府が企業から意見を聴き、それを政策に反映させれば、企業側は投資や雇用を生み出すことでそれに応える。政府が大企業と一線を画して敵対視するような先進国などない。大企業を「積弊」ではなく「経済運営のパートナー」とする政策の見直しが今後は必要だ。文大統領のサムスン電子工場訪問がぜひともそのきっかけになることを願う。
(引用ここまで・太字引用者)
 文大統領は李氏の案内を受けながら新工場の内部を視察した。李氏はモディ首相が車から降りた際には頭を下げただけだったが、文大統領が来たときは何度も腰を曲げてあいさつした。与党・共に民主党の一部議員からは文大統領のサムスン工場完工式出席を疑問視する声も上がっているが、韓国政府のある高官は「韓国とインド双方の経済発展と雇用の改善に貢献する工場だ。その完工式に出席することに特別な政治的意味合いはない」と主張した。

 大統領府も「文大統領と李氏との面会は、現政権が掲げる所得主導成長や大企業政策の転換を意味するものではない」とくぎを刺した。
(引用ここまで)

 ムン・ジェインとサムスン電子副会長であり、実質的なオーナーであるイ・ジェヨンが会うのは、大統領就任以来では今回がはじめてだとのことで。
 まあ、去年の2月に逮捕されてから今年の2月に高裁で執行猶予つきの有罪判決が出るまで収監されていたのだから当然ではないかという気がしますけどね。
 それでも両者がはじめて会うのが国外工場の完工式であるというのは象徴的です。

 法人税増税企業機密を暴露するといった大企業を叩くことでポピュリストとして人気を獲得してきたムン・ジェインが国内で会うのは難しい。
 まあ、国外で会うのであれば……ということなのでしょう。

 ムン・ジェインが「所得主導成長」なる経済政策を続ければ続けるほど、雇用は海外に逃げていくしかない。
 インドにスマートフォン組み立て工場ができる、というのはその典型例のひとつでしょう。
 こうした組み立てのような人手のかかる、言ってみれば雇用に直接影響するような工場は海外に建設する。
 半導体のように安定した電気の供給があればいいだけで最低限度の雇用しか産まない工場は韓国に残す。

 ムン・ジェイン政権と韓国企業の思惑ががっちり噛みあったのがインド工場での出会い、といったところです。
 逆にいえばこういった機会がなければムン・ジェインとサムスン電子の総帥が会うようなことはなかったと思うとそれも面白い。
 いまの韓国で何が起きているかということを象徴するような出会いですね。

ルポ 絶望の韓国 (文春新書)
牧野愛博
文藝春秋
2017/5/19