「73年も待ったが…なぜ強制徴用裁判は遅延するのか」(中央日報)
最高裁判所は2012年5月24日、日本強占期の強制徴用被害者が起こした損害賠償訴訟で初めて日本企業の賠償責任を認める判決を出した。1945年8月15日の解放から70年が過ぎるまで被害の救済をまともに受けられず生きてきた強制徴用被害者は当時、判決が出ると万歳を叫んだ。

しかしその判決に従わない日本企業が2013年下半期に相次いで最高裁に再上告したことで強制徴用裁判は今でも最高裁で審議中だ。

こうした中、朴槿恵(パク・クネ)大統領(2013年2月−2017年3月)の行政府と梁承泰(ヤン・スンテ)最高裁長(2011年9月−2017年9月)の司法府の時代に強制徴用裁判を遅延させたという証拠が、最近の金命洙(キム・ミョンス)最高裁長体制で行われた積弊調査と検察の捜査で次々と出てきている。最近公開された最高裁の文書によると、朴槿恵政権が海外公館(大使館など)に派遣する法官を増やす代わりに、最高裁が2013年末以降に強制徴用裁判の確定判決を遅らせることにしたということだ。 (中略)

このように数年間も最高裁の確定判決が出ず、強制徴用被害者と遺族の悔しさが増している。最高裁は先月27日、強制徴用再上告審事件を全員合議体(最高裁裁判官13人参加)に配当し、金昭英(キム・ソヨン)最高裁裁判官を主審とした。2013年8月ごろ再上告審が始まってからなんと5年後だ。

2012年の裁判は小部(最高裁裁判官4人参加)で判決したが、審理に相対的に時間がかかる全員合議体に配当したことで裁判がまた遅れるのではと強制徴用被害者は懸念している。これに対しパク・ジンウン最高裁広報官は「そうではない」とし「小部は期間が短く、全員合議体は裁判が長くなるのではなく、裁判官が合意すれば宣告する」と釈明した。 (中略)

しかし強制徴用裁判は日本という相手が存在するため複雑な事案だ。実際、2012年に最高裁の判決があった当時、朴槿恵政権の外交部は「韓日関係が破綻しかねない」という論理を展開した。1人あたり1億ウォン(約1000万円)を賠償する場合、少なくとも23兆ウォン、多ければ数百兆ウォンを超える天文学的な賠償義務が生じる日本企業が、経団連を通じて深い懸念を表明した。韓国裁判所の賠償命令で日本企業の韓国内財産を差し押さえるなど強制執行に出る場合、日本が投資を撤回するとして反発する動きもあった。

このため文在寅大統領が任命した金命洙最高裁裁判長体制でも2012年の判決と同じ趣旨で確定判決するのは容易でないという見方もある。金命洙体制の最高裁は強制徴用被害者の権益と韓日関係を同時に生かす難しい課題を抱えたということだ。まさに「ソロモンの判決」が必要な時だ。

このために両国専門家は韓日両国が裁判所の判決で正面衝突するのは双方にマイナスだとし、合理的な代案を悩むべきだと指摘する。特に被害者の同意も求めず請求権を放棄した韓国政府も道義的な責任を避けることができない。これを受け、専門家らは請求権問題を拙速に処理した韓国・日本政府、被告の日本企業、そして請求権資金で恩恵を受けた韓国企業が共同で基金を用意し、被害者に補償することを代案として提示している。
(引用ここまで)

 幾度か「日韓関係を完全に破滅させる時限爆弾」と表現している戦時徴用訴訟ですが。
 大法院が大法院裁判官全員での合議制を取ると発表したことで、どうやら棚上げしていた判決を進める機運が出てきた、というのは前回のエントリで語りました。
 ただ、この判決はかなり難しいものになりそうです。

 三菱重工、新日鐵住金に対して賠償命令を出す、原告勝訴となれば日韓関係は間違いなく破綻するでしょう。
 これら日本企業に対して財産の差押えなどがあれば、もはや日本からの投資はかぎりなくゼロに近づきますし、国民同士の感情もかつてない強さで衝突することになるでしょう。
 原告勝訴なら日韓関係は破滅します。
 さらに日本政府は国際司法裁判所(ICJ)に判断を委ねることを予告済みです。
 だいぶ時間がかかることになるでしょうね。

 その一方で韓国側としても原告敗訴の判決は出しづらい。
 ムン・ジェインの基本的立場は「軍事政権は違法」というもので、ひいてはその軍事政権下で結ばれた日韓基本条約すら否定する勢いです。
 そんな状況で大法院への期待はかつてないほどに高まっている状況。
 この中でかつてのような「日韓基本条約で解決済みなので原告敗訴」というような判決を出せるのか。
 正直、難しいと思います。韓国には司法の独立とか存在しませんから。
 それ以前に大法院長は地裁から大抜擢を受けたムン・ジェイン子飼いのリベラル派という人物。
 ……まあ、無理だろうなぁ。
 万一、原告敗訴の判決を出そうものなら裁判官個人が国民感情によって破滅します。
 サムスン電子副会長の逮捕状を棄却した裁判官のように。

 一方で記事の最後にある和解案のようなものを日本政府が受け入れようものなら、倒閣運動が起きかねません。
 各種世論調査で韓国への反感が高止まりしている状況下ですからね。
 内閣総辞職か、総選挙となるでしょう。

 さらに企業側もこういった形で和解を受け入れれば、株主訴訟の危険性すらある。
 ICJへの提訴といった手段を執らずに株主に損害を与えることになるのですから。
 2013年当時、日本政府のICJへの提訴について両者ともに理解を示しているという報道がありましたので、そこまでの心配は必要ないかもしれません。

 ジレンマ、トリレンマどころじゃない状況。
 記事中にある「ソロモンの審判」とやらを出せるのかどうか。
 正直、かなり楽しみにしているのですけどね。